x86サーバーで高性能ストレージをつくる
●コストは90%下がる 「たった1TBで1000ドル以上もするストレージが提供されている。信じられないほど高い。個人向けなら、4TBが30ドルくらいで買えるのに」。そう訴えるのは、米ネクセンタ・システムズのターカン・マナーCEOだ。
ではなぜ、エンタープライズ向けストレージは割高なのか。マナーCEOはこう答える。
「理由は、とてもシンプルだ。ハードウェアとソフトウェアをセットで販売しているからにほかならない。ハードウェアとソフトウェアを分離すれば、コストを90%カットすることも可能だ」。
エンタープライズ向けのストレージも、ベースのハードウェアは汎用品で構成される。そこから、ソフトウェアを切り離してしまえば、ハードウェアの価格が大幅に引き下げられる計算になる。ネクセンタ・システムズの「NexentaStor」は、それを実現するストレージ専用OSだ。
NexentaStorでは、ストレージ・コントローラとして、汎用的なx86サーバーが利用できる。また、記憶媒体を収容するディスクエンクロージャには、サーバーベンダーなどが提供するJBOD(Just a Bunch Of Disks:複数HDDをきょう体に収めたもの)を使用する。これらの汎用品をまとめて、「エンタープライズ・ストレージ」として利用可能にする「SDS(Software-Defined Storage)」が、すなわちNexentaStorであるということだ。ネクセンタ・システムズは、ソフトウェアだけを扱う会社だ。ストレージ専用OSを開発し、ハードウェアとソフトウェアの分離を実現したことで、エンタープライズ・ストレージ市場への参入を果たした。

米ネクセンタ・システムズのターカン・マナーCEO(中)、ネクセンタ・システムズ・ジャパンの松浦淳日本法人代表(右)、ネクセンタ・システムズのパートナーであるアセンテックの佐藤直浩代表取締役社長(左) ●ファイナルフロンティア SDS技術によって、安価にストレージ環境を構築したとしても、「パフォーマンスや信頼性は大丈夫なのか」といった不安が残るだろう。
まず、パフォーマンスについては、「NexentaStorでは、搭載可能なDRAMに制限がないほか、SSDやHDDも処理速度の速いDRAMを利用することで、高速処理を可能にしている」と、マナーCEOは主張する。
また、信頼性については、「NexentaStorは、UNIX OSであるSolarisのファイルシステム『ZFS』(現illumos)をベースにしている。ZFSには、実績があり、技術者には高信頼のファイルシステムとして評価されている」と、ネクセンタ・システムズ・ジャパンの松浦淳日本法人代表は語る。
さらに、マナーCEOはこうも続ける。
「高価なストレージでも、ハードウェアには汎用品が使用されている。同じものを違うかたちにして提供しているだけで、信頼性が変わることはない」
ちなみに、NexentaStorは、オープンソースとして提供されている。誰でも自由にダウンロードでき、SDSによるストレージ環境を構築できるようになっている。日本でも、すでに250社が導入しているという。パートナー制度にも注力しており、主力のアセンテック(佐藤直浩社長)のほか、ネットワールド、ソフトバンク コマース&サービスなど、有力ITベンダーがパートナーとして名を連ねている。これらパートナー企業のSDSに対する注目度も高いようだ。
「これまで、SDNとSDC(Software-Defined Compute)を実現する製品はあったが、SDSに有力な製品はなく、NexentaStorでようやくパズルのピースが出揃ったことになる。ネクセンタ・システムズは、まさしくファイナルフロンティアだ」とマナーCEOは語気を強める。そのフロンティア精神で、パートナーとともに日本市場を切り拓いていく考えだ。
仮想サーバーの状況に応じて
最適なストレージを割り当てる

米ティントリ
トム・エラリー
EVP 「インフラよりも、アプリケーションやサービスのほうが重要。ストレージも、アプリケーションやサービスの視点で考えるべき」と語るのは、“仮想アプリケーション向けストレージ”を提供する米ティントリのトム・エラリーEVP(エグゼクティブバイスプレジデント)である。ここでいう仮想アプリケーションとは、仮想環境上で稼働するアプリケーションを指す。
一般的なストレージは、物理サーバーに集約された要求に対してリソースを割り当てる。つまり、物理サーバー上に構築された仮想サーバーの個別要求に対して、最適なリソースを提供する仕組みにはなっていないわけだ。そのため、ある仮想サーバーの負荷が高まっていても、それに対してストレージのリソースを特別に割り当てるようなことはしない。
これに対して、ティントリのストレージ製品「Tintri VMstore」シリーズの場合、アプリケーションレベルの負荷に応じて最適なストレージリソースを提供することができる。そのため、仮想サーバー環境において、ストレージが処理のボトルネックになりにくい。つまり、Tintri VMstoreは、物理サーバーからストレージを分離させ、仮想サーバー上のアプリケーションが直接的に共用できるリソース・プールへと転換しているわけだ。「これにより、ストレージリソースの利用率が向上する」とエラリーEVPは語っている。
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