現状
IT資産管理製品・サービスはマイナンバーで売れているのか
今は“種まき”の時期
第1次ビジネスは「2015年6月」
市場が伸びており、マイナンバー制度への対応にもつながるIT資産管理製品・サービスを、SIerやディストリビュータは、どのような切り口で提案しているのだろうか。主要各社に聞いたところ、「今は“種まき”の時期」というのが共通意見だ。直近で需要が伸びてくるのは「2015年6月」とみている。
●ユーザー企業が情報収集に注力 マイナンバー制度への対応に向けて、多くのユーザー企業がITシステムの改善・刷新を検討している。その状況を捉え、ITベンダー側はマイナンバーをテーマにしたセミナーを実施。どのセミナーも募集をかけると、すぐに「満員御礼」となる傾向にあって、セミナー当日も会場は多くの参加者で賑わうケースが多かった。これは、どの製品・サービス分野にも当てはまることで、IT資産管理に関しても例外ではない。
ただ、実際のビジネスといえば、これからというところだろう。ネットワールドでクオリティソフトの製品・サービスを担当する金田知征・マーケティング本部マーケティング3部MD課係長は、「セミナーで情報を収集して、まずはできるところからということで、業務ソフトへの関心が高まっている」と漏らす。ただ、一方で「IT資産管理と、例えばサーバーも含めて社内のセキュリティを強固なものにするなど、ほかの製品と組みわせたセミナーや提案などを行うとユーザー企業からの受けがいい」としている。SkyやMOTEXの製品・サービスを担当する同課の高野春菜氏も、「ユーザー企業はマイナンバー制度全体の情報を収集しようとしているため、IT資産管理とさまざまな製品を組み合わせて何ができるのかをきちんと説明すれば、興味を示してくれる」という。

ネットワールドの金田知征係長(左)と高野春菜氏
FJMの有滝和貴担当部長(左)と稲箸明プロジェクト課長 富士通マーケティング(FJM)でインフラ関連製品・サービス「AZSERVICE」を担当する有滝和貴・商品戦略推進本部AZSERVICE推進統括部担当部長は、「何をしていいのかわからないというユーザー企業が多いため、当社ではユーザー企業の総務関連部門へのコンサルティングや社員へのeラーニングなどを行っている。これによって、IT資産管理製品・サービスの販売につなげる」という。
●新しい組み合わせが誕生 
リコージャパン
服部伸吾
室長 実際、リプレースの検討に挙がっているメイン商材は、ネットワールドの金田係長が認めるように、人事・給与・会計など業務ソフトだ。そのため、業務ソフトメーカーをはじめ、販社も含めて多くのベンダーがユーザー企業への提案に力を入れている。
実際、多くのメーカーの業務ソフトを販売するリコージャパンでは、「年度末から新年度にかけて、業務ソフトの案件が前年と比べて爆発的に伸びた」と、ITサービス総合メニュー「ITKeeper」シリーズを担当する服部伸吾・ビジネスソリューションズ本部ITサービス事業推進室室長も打ち明ける。ただ、そのなかで、これまでとは違った案件が出てきている。それは、業務ソフトとIT資産管理との組み合わせだ。業務ソフトの導入を決めたユーザー企業のほとんどが、IT資産管理製品・サービスやUTM(統合型脅威管理)などITKeeperシリーズの「マネージドITサービス」のメニューとして提供している製品・サービスを導入するという。「ユーザー企業からセキュリティ対策に関して相談をもちかけてくる」としている。

リコージャパン
杉窪倫之
リーダー この現象は、FJMでも起きている。統合業務ソフト「GLOVIA」を中心にマイナンバービジネスを担当する稲箸明・商品戦略推進本部マイナンバービジネス推進統括部プロジェクト課長は、「まずは、人事・給与・会計などでマイナンバー管理のニーズが高まるとみて組織を立ち上げたが、最近ではAZSERVICE推進統括部と連携することが多くなった」という。
リコージャパンの杉窪倫之・ビジネスソリューションズ本部ITサービス事業推進室ITサービス商品グループリーダーも「マイナンバーの配布が10月ということで9月までに、社内のIT機器をどう運用すればいいのかユーザー企業は悩んでいる」と説明する。
業務ソフトの導入ニーズの高まりや、リコージャパンが提案するような組み合わせ提供などを踏まえ、マイナンバーに関する第1次需要増の可能性は、「業務ソフトメーカーが新製品を発売する6月」(リコージャパンの服部室長)というのが濃厚だ。リコージャパンでは、この時期を見据えて組み合わせ提案の強化を図っていく。
また、大塚商会の持田啓司・セキュリティプロモーション課課長も、「情報漏えい事件などの多発やマイナンバーへの備えから、クライアントの操作ログ、サーバーへのアクセスログの収集と管理や分析の要望が多くなっているのは事実」と、マイナンバー制度への対応までIT資産管理の要望が広がっていることから、近くマイナンバー関連でIT資産管理の需要が急増すると判断している。
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