機能面の特色
「安いPC」ではないChromebook
これから新たに情報端末を導入しようとする文教市場に対して、すでにPCが普及している一般企業では、Chromebookに「業務端末のコスト削減」という役割を期待することが多い。しかし、PCからの単純なリプレースではメリットを引き出すことができないことに注意が必要だ。
●価格はノートPCと大差なし トータルコストの削減を訴求 Chromebookが登場した当初、最も注目を集めたのは価格の安さだ。家電量販店に足を運べば、安い機種なら1台3万円程度、CPUやメモリ容量を強化した機種でも4万円前後で購入することができ、確かにWindowsを搭載する従来のノートPCよりも低価格だ。
しかし、マイクロソフトがロースペック端末向けにWindowsを無償でライセンスする施策を開始したこともあり、WindowsノートPCでも同価格帯の製品は出てきている。また、企業などで情報端末を数十台以上まとめて導入する場合、一般的に1台あたりの価格は店頭よりも安い。とくに企業では、業務端末の調達コスト削減を目的としてChromebookの見積もりを取ってみたものの、WindowsノートPCとの間に期待したほどの価格差がないことから、「大幅に安くなるわけではないのにブラウザしか使えないのか」と判断して導入を見送るといったケースもあるようだ。

ASUS JAPAN
小林杏里
アカウント
マネージャー ASUS JAPANの小林杏里・コーポレート事業部営業1課アカウントマネージャーは「“安いノートPC”と認識されてしまうと、Chromebookの魅力は伝わらない。導入から管理・運用に至るまでトータルのコストと手間を削減できる新しい情報端末であることをしっかり伝えていく」と述べ、管理・運用に必要な作業を減らせること、セキュリティ対策ソフトやMDMソリューションの導入が不要なこと、レジストリの肥大化などで環境が“汚れる”ことがなく軽快な動作が維持されることなど、業務端末のライフサイクル全体に関わるさまざまなコストを削減できる点を訴求していく考えだ。
●組織での導入時は管理コンソールが前提 企業でのChromebook導入で前提となるのは、グーグルが提供する端末管理ソリューション「Chrome管理コンソール(Chrome Management Console、以下CMC)」の利用だ。これは有償のクラウドサービスで、管理するChromebook1台あたり2万1000円(税別・企業向け価格)の永続ライセンスとして販売される。CMCを購入せずに端末単体で業務に使用することも不可能ではないが、Chromebook本体でアクセス可能な管理項目は一部に限られており、前述の通りChromebook導入で得られるメリットの大部分は管理コストの削減にあることを考えれば、組織導入においてCMC抜きの利用は現実的でない。
Windows環境でいえばActive Directoryおよびそれと連携動作するIT資産管理ツールに相当するものだが、クラウド型ソリューションなので、端末は組織のLANに接続されている必要はない(ポリシー設定により組織のLAN以外への接続を禁止することもできる)。
また、UIは標準的なウェブサービスの設定画面としてデザインされており、用語も平易なので、操作のハードルも低い。当然ながら、インターネットとIT機器に関する一般的な知識は必要となるが、Active Directoryのようにシステム管理のための専門的な知識が求められる場面は比較的少なくなっている。
なお、CMCのライセンスは、Chromebookを取り扱うディストリビュータおよびリセラーのなかでもとくにグーグルが認定した数社だけを経由しての販売となっている(左下図参照)。ただし今年に入って、新たにCMCの取り扱いを開始したパートナー企業もあり、グーグルとしても販路は徐々に広げていく意向とみられる。
これまでGoogle Appsの販売を行っていた電算システムも、今年1月からCMCのリセラーに加わり、ChromebookとCMCのワンストップ提供を開始した。

電算システム
相村崇
次長 同社の相村崇・システムエンジニアリング事業部企画マーケティング部次長は、「一般企業の業務端末以外にも、例えば施設の利用客にサービスとして貸し出す端末など、B2B2C向けにChromebookはマッチすると考えている。また、広域チェーン店の各店舗に設置したキオスク端末を本部で一括管理するといった提案も可能になった」と話し、端末にCMCを組み合わせるだけで用途が一気に広がるのがChromebookの特徴としている。
また、電算システムのChromebook担当部署では、顧客とのWord/Excel文書のやりとりも含めてすべての業務をChromebookとGoogle Apps上で行い、「脱Office」のワークスタイルも実現しているという。
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