流通各社の動向
新たな顧客開拓や提案につなげる
シンプルで低価格なChromebookは、従来のノートPCやタブレット端末などに比べて利幅が小さく、付加価値もつけにくい商材だ。しかし、Chromebookを取り扱う各社は、自社のビジネスをユーザー企業の内部へ広げる風穴として、話題性の高いこの端末を上手に活用している。本格的な市場の立ち上がりに先立って、いまChromebookを取り扱う意味を各社に聞いた。
ソフトバンクモバイル
Google Apps未導入企業からも引き合い多数

中塚博康
統括部長 Chromebookの国内発売当初から認定リセラーとして端末およびCMCの販売を行っているソフトバンクモバイル(旧ソフトバンクテレコム)。同社はGoogle Appsのリセラーとして世界有数の販売実績を有しており、当初は既存のGoogle Appsユーザーに対する追加提案としてChromebookを取り扱うシナリオを想定していた。ところが、同社の中塚博康・法人営業・事業推進本部データ・クラウド事業推進統括部統括部長によると、「ふたを開けてみると実際にはGoogle Apps未導入の企業からの問い合わせのほうが比率としてはかなり高かった」と言い、むしろ端末への問い合わせを契機として、クラウドサービスや、インターネット回線などをあわせて提案できるメリットが大きいようだ。
デル
シンクライアントのエントリ製品として展開

飯塚祐一
マネージャー Chromebookメーカーの1社でもあるデルは、2012年にシンクライアント/VDI(仮想デスクトップインフラ)ベンダーのWyse Technologyを買収するなど、近年クラウド端末事業を強化している。飯塚祐一・エンドユーザーコンピューティング統括本部ビジネスディベロップメントマネージャーは「セキュリティやワークスタイル変革などの必要性から、業務環境をクラウドサービスやVDI上へ移行するニーズが高まっているが、要求に応じてWyseとChromebookを最適なかたちで組み合わせて提供できるのは当社ならでは」と説明。クラウド/VDI環境用のエントリ端末としてChromebookを展開しつつ、高度な機能やカスタマイズが必要な場合はWyseシンクライアントを提案している。
アシスト
ブラウザで使えるVDI製品を拡販

青木裕明
主任 Chromebook導入にあたっては、クラウドサービス化できないWindowsアプリケーションに対応するため、アプリケーション仮想化ソリューションがあわせて導入されることも多い。アシストの青木裕明・システムソフトウェア事業部仮想化推進室営業部主任は、「Chromebookの導入をきっかけにWindows環境を仮想化、リモート化することで、結果的に場所に縛られない業務や教育のスタイルを実現できる」と話し、レガシーアプリケーションに対応するためのコストが副次的なメリットも生むことを強調。同社が取り扱う仮想化ソリューション「Ericom AccessNow」はウェブブラウザ経由の利用でも高い通信パフォーマンスが得られるので、Chromebookにも最適なVDI製品として拡販を図る。
シネックスインフォテック
米国での実績を日本に生かす

神田秀樹
アシスタントマネージャー シネックスインフォテックは、今年から新たに認定ディストリビュータに加わり、CMCの取り扱いを開始した。同社の親会社である米シネックスグループでは、米国の文教市場を中心に年間100万台のChromebookを取り扱った実績を有する。神田秀樹・プロダクトマネジメント部門ITプロダクト本部ソフトウェア部Google課アシスタントマネージャーは「現在のIT教育では、春になると教職員が何十台の端末に新学年用の教材を手動でインストールするなど非生産的な作業が多々発生している」と指摘。米国で得た多数の知見から国内にも適用可能な部分を抽出し、メーカーやリセラー各社と連携してChromebook市場を盛り上げていく考えだ。
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