SAP
インメモリDBによるITシンプル化は、
SAPにしか成し得ない

SAPジャパン
新井智
プラットフォーム事業本部
ビジネス開発部 部長 「インメモリDBによる企業ITのシンプル化が正しい方向だと理解しても、有力データベース・ベンダーは、自らのインストール・ベースを失うのを恐れて、間違いなくSAPと同じソリューションは提供しようとしない。だからこそ、HANA Platformは唯一無二の価値を提供できる」
SAPジャパンの新井智・プラットフォーム事業本部ビジネス開発部部長はこう言い放つ。企業の既存データベース環境は、各種の業務用データベース・サーバーにはじまり、データ・ウェアハウス/データマート、データ分析用サーバーなどが乱立し、極めて複雑化しているという。また、データの複製も各所に分散し、どのデータ/分析結果が正しいかも突き止められない状態にあると、新井部長は指摘する。
こうした複雑性を「HANA Platform」で解消していくのが、SAPの戦略だ。
「HANAならば、クエリに応じて必要なビューをメモリ上で構成し、瞬時に結果を返すことができる。ゆえに、インデックスも、集計デーブルも、中間テーブルも、キューブも不要になり、データの容量を最適化できる。実際、SAP社内の業務アプリケーションのデータベースをHANAに切り替えただけで、データ容量を7.1TBから1TB以下へと圧縮することができた」(新井部長)。
HANA Platformには現在、カスタム・アプリケーションの開発効率を高めるために、テキスト検索や予測分析ライブラリ(PAL)、地図情報分析、ビジネスルールエンジン、分析用の「R」言語/Hadoop対応のインターフェースなどが組み込まれている(図A)。
また、このプラットフォームでは、SAPが2010年5月に買収したデータ・ウェアハウス製品「Sybase IQ」をはじめ、Hadoop、IBM、オラクル、マイクロソフトなどの主要データベースに対するアクセス機能や、それらデータベースのデータをHANAに取り組む機能も備えている。つまり、これらの機能を通じて、あらゆるデータベース・アプリケーションとデータベースをHANAベースのプラットフォームに段階的に集約し、企業ITのシンプル化を成し遂げていくというわけだ。
オラクル
重要なのはデータベースとしての完成度

日本オラクル
佐藤 裕之
データベース事業統括
製品戦略統括本部
プロダクトマーケティング本部
Cloud & Big Data推進部部長 インメモリDBに対するオラクルの考え方は、単純明快だ。
日本オラクルの佐藤裕之・データベース事業統括 製品戦略統括本部プロダクトマーケティング本部Cloud & Big Data推進部部長は言う。
「主要なインメモリDBには性能面の格差はほとんどない。差異化のポイントはデータベースとしての完成度にほかならない」。
Oracle Database 12cのインメモリ機能は、こうした考え方に沿って実装されている。そのため、インメモリのデータベースに対しても、Oracle Databaseのクラスタ機能(Real Application Cluster:RAC)やバックアップ/災害時復旧(DR)、暗号化の機能などがすべて利用でき、データベースをインメモリ化しても、既存のアプリケーションに変更を加える必要はないという。さらに、メモリ上のデータベースの運用管理にも、Oracle Databaseの標準的な運用管理ツール「Oracle Enterprise Manager」が利用でき、同ツールを通じて、メモリ構造の状況をグラフィカルに表示し、どの辺りにアクセスが集中しているかといった情報を可視化することができる。
「Oracle Databaseの扱いに慣れたエンジニアなら、オラクルのインメモリDBを拍子抜けするほど簡単に利用できる。それは、インメモリのスイッチを“ON”にするだけといったイメージだ」(佐藤部長)。
また、前項でも触れたようにOracle Database 12cのインメモリ機能では、データベースのメモリへの展開時に、一つのデータフォーマットから、カラム型とロー型の二つのデータフォーマットを動的につくる仕組みが実装されているが、これも既存のOracle Databaseユーザーがスムーズにインメモリ機能を使うための工夫だ(図B)。さらに、メモリ上に展開すべきオブジェクトを推奨し、インメモリ機能の最適利用を支援する「インメモリ・アドバイザー(In-Memory Advisor)」と呼ばれるツールも提供している。
なお、オラクルでは、Oracle Databaseの高速化に照準を絞った垂直統合型システムとして、「Oracle Exadata」を提供している。Oracle Exadataは、ディスクI/OをOracle Database用に最適化し、高い処理性能を発揮する仕組みであることから、インメモリDBの技術とExadataとの関係性が多少見えにくい側面もある。これについて、佐藤部長は次のように考えている。
「カラム型のインメモリDBによって、分析性能を極限まで高めることはできるし、1万人が一度に分析クエリを投げるような環境では、多重度の高いクエリを高速にさばけるインメモリDBの利用が適している。とはいえ、メモリに乗り切らない大規模データのなかでの分析は、ディスクI/Oの高速化も重要だ。理想は、インメモリDBとExadataのコンビネーションによって、あらゆるワークロードを最適化する仕組みをつくることにほかならない」。
[次のページ]