マイクロソフト
利用者目線でインメモリ機能を強化する

日本マイクロソフト
北川 剛
サーバープラットフォーム
ビジネス本部
クラウドアプリケーション
ビジネス部
エグゼクティブ
プロダクトマネージャー SQL Serverにおけるインメモリ機能の取り組みは、実は早い。「SQL Server 2008 R2」でExcelの裏側で動作するクライアントサイドの多次元インメモリDB(開発コード名:「Gemini」)をサポート。この技術をサーバーサイドへと拡張し、カラム型ストアの「xVelocity」を開発し、「SQL Server 2012」に搭載した。その後、OLTPのデータをリアルタイムに分析したいというニーズに呼応するかたちで、「Hekaton」を開発し、SQL Server 2014に実装したという。「SQL Serverでのインメモリ機能の開発は、常にユーザーの要望が起点になっている」と、日本マイクロソフトの北川剛・サーバープラットフォームビジネス本部クラウドアプリケーションビジネス部エグゼクティブプロダクトマネージャーは、改めて訴える。
同社が、SQL Server 2012のインメモリ機能の大きな特色として掲げるのは、導入と活用のハードルの低さだ。「例えば、Hekatonにしても、xVelocityにしても、SQL Server(のEnterprise Edition)の標準機能。導入に追加コストはかからない」と、北川マネージャーは説明する。さらにインメモリDBの活用に不慣れなエンジニアに向けて、「どのテーブルをメモリに展開すると性能向上につながるか」など、「インメモリDB利用を前提にしたデータベース設計の最適化」に向けたアドバイスを(データベースの稼働利益をもとに)提供する「AMR(Analysis, Migrate and Report)」ツールも提供している。
ちなみに、Hekatonでは、インメモリという特性のほかに、SQLベースのプロシージャ(ビジネスロジック)言語「Transact-SQL」のネイティブ・コンパイラを備えている。同コンパイラによって、インテルのマルチコア・プロセッサに最適化されたバイナリコードが生成される。この機能とインメモリの相乗効果により、最大100倍のOLTP性能の向上を実現するというのが、Hekatonのコンセプトだ。また、Hekatonがサポートするメモリサイズは現時点で256GBとなっているが、次期バージョンのSQL Server 2016では、12TBのメモリをサポートする予定という。
さらに、マイクソフトは、インメモリとローカル・ディスク(SSD/HDD)、そしてクラウドに、アクセス頻度に応じてデータを適切に配置し、情報ライスサイクル管理のスキームをかたちづくるというコンセプトを打ち出している。クラウド上でインメモリDBを展開する手もあるが、現状のMicrosoft Azureの仮想マシンの最大メモリサイズは(最高グレードのA9)でも112GBにすぎず、HekatonのようなインメモリDBの機能をフルに生かすほどの容量ではない。米国では、400GBメモリをサポートして仮想マシンも提供されているが、それでも、HPのハイエンドサーバーでは、サーバーに12TBのメモリが積める。そう考えれば、インメモリでハイスピードを求めたければ、オンプレミス構築のほうが、理にかなっているようだ。
IBM
コスパと手軽さで強敵を相次ぎ撃破

日本IBM
平野真弓
アナリティクス事業本部
第一テクニカル・セールス
Certified ITスペシャリスト 「DB2のBLUアクセラレーションは強敵の牙城を切り崩している」。日本IBMアナリティクス事業本部第一テクニカル・セールスでCertified ITスペシャリストの任にある平野真弓氏は、「DB2 10.5 BLUアクセラレーション」の好調さを、こう表現する。
BLUアクラレーション(以下、BLU)は、分析処理の高速化に照準を絞ったインメモリのカラム型ストア。その好調さの大きな理由として、平野氏がまず掲げるのが、コスト・パフォーマンスのよさと、テーブルを作成してデータを投入するだけで分析用のデータマート環境がつくれる手軽さだ。
また、BLUでは、独自のデータ圧縮技術よって、データを数分の1に圧縮することができ、「カラムオーガナイズ表」と呼ばれるテクノロジーによって、必要なカラムのみにアクセスする機能も備える。加えて、「データ・スキッピング」の機能によって、不要なデータへのアクセスを排除し、マルチコア・プロセッサによる並列スキャンや「SIMD(Single Instruction Multiple Data)」による複数処理の一括実行も可能だ。これにより、1TB規模のデータに対する分析処理を数秒で終わらせることができるという(図D)。
こうした機能による分析処理の高速性や、ハードウェア・リソースの使用効率の高さ、そして使いやすさが、ビジネス現場におけるデータ分析ニーズに合致し、これまで、DB2が入り込めていなかった“強敵”の牙城――つまりは、Oracle Databaseの牙城を切り崩しているというわけだ。また、コスト・パフォーマンスの戦いで、SQL Serverに競り勝つケースも出始めているという。
「技術の発展で、ビジネス現場でのデータ分析がいよいよ本格化しようとしている。その機にピタリをはまる製品がBLU。今後も攻勢をかけていきたい」(平野氏)。
ちなみに、IBMはBLUの技術を使ったクラウドサービス「dashDB」もSoftLayer上で提供している。BLUが最低8コア・プロセッサ/64GBメモリでの使用が推奨されていることや、ネットワーク遅延の問題を勘案すると、dashDBでオンプレミスのBLUと同等の性能を発揮させるには、相応のコストがかかることが予想される。実際、dashDBの利用を検討していたユーザーが、結局、オンプレミスのBLUの導入に動くケースもあるようだ。だが、今後を考えれば、dashDBの行方にも注目したいところだ。