識者の眼
年率10%の成長市場に

IDC Japan
グループマネージャー
眞鍋敬氏 デジタルマーケティング・ソリューションの市場動向に関するレポートは、まだまだ少ない。市場が黎明期にあって、信頼性のあるデータが取りづらいことも大きな要因だろうが、それ以上に、デジタルマーケティング・ソリューションが包括するテクノロジーの範囲が広く、デジタルマーケティングの市場そのものをどう定義するかについてコンセンサスが形成されていないことが影響しているのではないか。そんななか、調査会社のIDC Japanは、今年3月、デジタルマーケティング・ソリューションを体系化して、「データ活用型マーケティングテクノロジーマップ」(下図参照)として発表したほか、国内市場の推移予測についてもレポートした(下グラフ参照)。2014年の市場規模は806.4億円、年率10%の成長が見込まれ、19年には1300.9億円の市場に成長するとのことで、ITベンダーにとっては決して無視できない市場といえよう。
しかし、レポートをまとめた眞鍋敬・ソフトウェア&セキュリティグループマネージャーも、「SIerにとっては参入のハードルが決して低くはない市場だ」と指摘する。テクノロジーマップを構成する要素は多岐にわたり、それぞれが複雑に絡み合う。ソリューションベンダーは、それぞれの思想に基づいて製品を開発し、その強みをアピールするが、ユーザーも自分たちに必要な機能が何なのかがわからず、比較検討がしづらいのだという。「結果として、ユーザーの製品選択は非常に難しくなっている。今までITを売ってきた人にはマーケティングの業務フローはわからないし、業務のステークホルダーに関する知識もないため、そこで適切な提案ができない」。
結局、SIerがこれからデジタルマーケティング市場に参入して成功するためには、マーケティング業務に精通した人材を集めて、コンサルや広告代理店に負けないチームをつくるか、ユーザーとして特定の製品をとにかく使い倒して、売るためのノウハウを身につけるか、いずれかの方法しかない。将来的に、CRMやSFA、その他基幹系のシステムとデジタルマーケティング・ソリューションの連携ニーズは間違いなく高まると、眞鍋グループマネージャーはみている。そうなれば、SIerにとっては、掛け値なしに大きな成長が期待できる市場が出現することになる。現状では、開発を伴わないポイントソリューションの案件が中心だとしても、先行投資をして、市場が花開くまで我慢できる体力があるSIerにとっては、大きな先行者利益が期待できるはずだ。