ウェアラブル編
ゴルファー自身では気づかないスイングのクセを的確に分析
セイコーエプソンが開発した、ヒトやモノに装着することでスポーツなどの運動情報を簡単に解析できる無線モーション計測システム「M-Tracer」。このシステムを生かして、セイコーエプソンとエプソン販売はゴルフスイング解析システムの「M-Tracer For Golf」を発売。好調な売れ行きをみせている。ジャイロセンサと加速度センサの機能によって、多くのユーザーにメリットをもたらすよう、高精度・高安定な慣性計測ユニット(IMU)と運動データの解析や3D可視化を行うソフトウェアの技術を融合させることによって実現した。M-Tracerは、ゴルフ以外のスポーツでも利用が可能なほか、自然災害などに備えるシステムとしても活用でき、大きなビジネスチャンスをつかむ可能性を秘めている。(取材・文/佐相彰彦)
●ゴルフに悩む40代に人気 M-Tracer For Golfは、自社開発のIMUをゴルフクラブのグリップにアタッチメントを使って装着してスイングすることで、「スイング」「インパクト」「スピード」「シャフト回転」「テンポ」などの解析に必要となる詳細なデータを、正確に計測することができるシステム。計測したデータは、専用のソフトウェアをインストールしたスマートフォンやタブレット端末に、ブルートゥースで転送でき、グラフや画像による表示で現状のスイングを正しく知ることができる。もちろん、パソコンでの閲覧も可能だ。

ゴルフスイング解析システム「M-Tracer For Golf」
「M-Tracer For Golf」の装着イメージ 平均スコアが100前後、もしくはそれ以上のゴルファーがスコアアップを目指すための解析システムとして、2014年4月の発売から販売は好調に推移。エプソン販売の西岡茂樹・販売推進本部SP MD部部長は、「当初は、1年間の販売台数を2万台に設定していたが、予想を上回る結果」と自信をみせる。高橋俊介・SP MD部企画エキスパートは、「スイングに悩む40代以上のゴルフ愛好者に、精度の高さを評価していただき購入が相次いだ」としている。

「スイング診断」ではスイングの総合的な診断やチャートごとの解説なども行う
スイングを総合的に解析 販路は家電量販店に加えて、ゴルフ関連用品を専門に扱う量販店を活用。デジタル機器を扱うケースが少ないゴルフ量販店は、当初、売れるかどうか疑問を抱いていたという。ところが、「にっぱち」と称して景気が悪い月といわれる8月に、販売が急成長したことから、「今では認めてもらっている」(高橋エキスパート)とのことだ。
9月には、ユーザー一人ひとりに適した練習法をアドバイスする「スイング診断」というサービスの提供を開始した。このサービスは、ユーザーのスイングを1万8000通り以上に分類したデータのなかから、タイプや傾向を踏まえて具体的な解説を交えながら診断。細かいチャートで分析するほか、最も必要な練習方法を写真や動画を含めてわかりやすく解説する。西岡部長は、「ユーザーから『もっと上達するにはどうしたらいいのか』という声が多く、その要望に応えた」としている。

(左から)エプソン販売の西岡茂樹部長と高橋俊介エキスパート、セイコーエプソンの小平健也主事
パター版アプリの提供も開始 ●ゴルフ以外でも採用が相次ぐ 2014年4月の発売から、順調に成長しているM-Tracer For Golfだが、エプソン販売の西岡部長は、「ゴルフ以外のスポーツでも採用が進みつつある」という。例えば、野球ではミズノにOEM提供し、バットの素振り関連の製品・サービスが出ている。テニス関連では、ダンロップとパートナーシップを組もうとしている。セイコーエプソンの小平健也・ウェアラブル機器事業部S戦略・営業部主事は、「(当社が強みの)ジャイロセンサと加速度センサがカギを握る。この二つの機能を生かせば、スポーツ以外でも製品・サービスを創造することができる」と語る。
実際、津波の災害対策などで実験的に採用されたケースがあるという。「今後は、販売パートナーとソリューションをつくって、新たな領域に入り込んでいきたい」との考えを示す。M-Tracer For Golfが予想以上の売れ行きだったことから、エプソンは、M-Tracer関連ビジネスをさらに大きく成長させることを目指していく。