Special Feature
中部圏IT業界の今 自社製品・サービスの創造で下請けから脱却へ
2016/07/07 21:33
週刊BCN 2016年07月04日vol.1635掲載
製造業を中心として、ユーザー企業によるITへの投資意欲が高まっている。名古屋を中心とした中部圏IT業界においても、多くのITベンダーが成長している。一方で、下請けからなかなか抜けきれないSIerもいる。そんななかで、自社製品・サービスを創造し、全国展開を図ろうとする動きが相次いでいる。中部圏IT業界の今を追った。
具体的には、「自動車関連産業」「航空機産業」「ヘルスケア産業」「環境産業」を戦略産業と位置づけ、高い技術や人材をもつ中小企業が現場での経験を生かして競争力を支える「ものづくりマザー機能」で戦略産業を下支えし、国や地方自治体、産業界が連携してサポート環境を整えるという構図を描いている。今年6月には、ITやロボット(IoTを含む)などの技術による戦略産業の高度化を目的とした「ブースト機能」が新たに設けられた。中部経済産業局の中島真一郎・地域経済部次世代産業課長兼情報政策室長は、「中部圏の多くの企業がIT化に取り組み、ITの普及促進、『ものづくり圏』によるIoTの推進を図りたい」との考えを示す。同局の北川大輔・地域経済部次世代産業課情報政策室情報化推進係長は、「ITやIoTの活性化を啓発していきながら、中小企業の育成にもつなげていきたい」と話す。
中部圏では、IT活用による競争力の強化が必要と認識されているわけだが、ITベンダーの現状はどうなのか。以前は、トヨタ自動車から下請けで部品などを製造する製造業者が多いことに比例して、下請けのソフトウェア開発が多かったが、今は状況が変化しつつある。ベンダーの取り組みをみていこう。
●自動車を中心に製造業が多い中部圏のユーザー企業は、ブランド力のあるSIerや地域のソフト開発力に絶対的な信頼を寄せている。とくに、名古屋を本拠としてビジネスを手がけるベンダーとの関係は深い。それらベンダーは今、新しい領域へとビジネスの幅を広げようとしている。
民需では、中堅規模の製造業を中心にITリプレースの動きが出たことが売上増の理由で「生産管理システムが上昇傾向にある」と、伊東彰・執行役員産業システム事業部事業部長は満足げだ。今年度に入ってからも順調に推移し、「新規顧客の開拓に成功している」(伊東執行役員)という。案件の多くはオンプレミスがメインだ。
公共では、「昨年度はマイナンバーが動き出したというのがキーワードだった」(大橋卓也・執行役員公共医療システム事業部事業部長)。中部圏の地方自治体を中心に、30団体に基幹システムを提供しているノウハウを生かしてリプレースを促進。しかも、「今回のタイミングでクラウドに移行したいという要望が多かった」(大橋執行役員)とのことだ。
中部圏での経験を生かして、同社では民需と公共ともに首都圏など他地域でのビジネス拡大にも力を入れていく。
ソリューションビジネスユニット第一ソリューション事業部担当の岡山徹雄・上席執行役員は、「豊田・刈谷地区に顧客がいる。さまざまな角度から製造業と関わっていることを強みに、ソリューションを提供することができる」と自信をみせる。ソリューションビジネスでは、IoTの観点で工場からのデータを収集して可視化するアプリケーションを提供。加藤靖章・第一ソリューション事業部事業部長は、「中部圏の製造業には、名古屋に本社があることは信頼面で他地域の競合よりも有利」と判断する。
アプリケーションやセンサ、エッジコンピューティングは自社で開発・提供し、IoTプラットフォームやビッグデータ分析ではパートナーと協業してIoT関連ビジネスを拡大していく。 ページ数:1/1 キャプション: ●受託開発や技術者派遣のノウハウを生かして独自の製品・サービスを開発することに成功しているベンダーは少なくない。なかには新規ビジネスが大きく化けそうな兆しがみえ始めている。
代表取締役 元請けの受託開発にこだわってきたことに加えて高い技術力で勝負してきたウェブサーブは、就業/勤怠管理パッケージ「BIZWORK+」を提供している。7月中には、新しいサービスとして就業管理や勤怠管理に関する悩みを解決するサイトを開設することを計画している。
新しいサイトでは、まだ就業/勤怠管理システムを導入していない事例などを取り上げ、200近くの話題について解決策を掲載。システムを導入したが、業務効率化につながらないケースについても取り上げる。鈴木孝裕代表取締役は、「就業管理や勤怠管理に関して、どのように行えばいいのかという課題を抱える企業が多い。そこで、企業の総務担当者や経営者などの悩みに応え、解決策を導き出すことが重要だと判断した」としている。サイトでは収益を確保しないものの、サイトで同社製品を紹介していることから、販売につなげることも検討しているという。
元請けを徹底しているのは、「顧客の要望にしっかりと応えるため」と鈴木代表取締役はいい切る。顧客からの評判は高く、今後は高い技術力で質の高いパッケージも市場に投入していく方針だ。
社長 アプリケーション開発やネットワークサービスの提供だけでなくシステムの導入コンサルテーションやシステム設計・開発、運用までをトータルで提供しているシーライン。もともとは名古屋で唯一の独立系情報処理センターとして1964年に設立。半世紀以上に渡ってビジネスを手がけていることから、地元での信頼度は高い。しかも、名古屋市に本社を置く同業者のSIerとの関係も深い。
名古屋を中心とした中部圏を攻めるなら、まずシーラインに相談しなければ、とメーカーに思わせるほどだ。一つの例では、超高速開発ツール「Magic xpa」を提供するマジックソフトウェア・ジャパンでは、中部地区でパートナー会が活発化しており、その立役者がシーラインとなる。また、応研の業務アプリケーション「大臣エンタープライズ」の販売代理店で、大臣エンタープライズとMagic xpaを組み合わせたソリューションを考案したという経験もある。NTTコミュニケーショズとはクラウドで協業している。
「(今、流行りの)ドローンを売れないかという問い合わせがきている」と岡克宏社長は漏らす。新しいソリューションが創造できる可能性を秘めている。
社長 名古屋を本拠地とし、県内の売上比率が8割を超えるシステムサーバーは、「電力自由化」が本格化するなかで地元電力会社の差異化サービスを支援することに取り組んでいる。中部電力がサイトで消費者向けに提供しているサービス「カテエネ」のバックオフィス系を担当。急ピッチでシステムを構築した。
昨年、中部電力グループのシステム子会社と協力して、基幹系、設備管理、顧客管理などのプロジェクトに参画。技術力の高さから重要なシステムを任された形だ。フロント系のサービスではないものの、中部電力がカテエネによって他社と優位性がもてるようにするため、「ニーズに柔軟に応えて、電力自由化がスタートする前に仕上げることに重きを置いた」と鈴木秀美社長はアピールする。カテエネが開始した今も、消費者向けのサービスが追加されれば、「システム改修を迅速に行っていく」という。
プロジェクトを迅速に進めることは自社の技術者のスキルを高めることにつながり、「横展開するためのソリューション創造につながる」としている。このような取り組みを積み重ね、将来的には売上規模を現状の5倍程度にすることを目指している。
社長 大手メーカーの下請けを中心に製造業向けシステム開発が主力ビジネスの日本アドバンストリーダーズソフトウェアが、新たなビジネスに着手しようとしている。「最近では、システムを導入した企業から『運用も任せたい』という声が非常に多い。そこで、サービス化して顧客として獲得していく」と、柴田隆昌社長は下請けから脱却したビジネスを手がけられることに満足げだ。すでに数社から依頼がきている。
主力ビジネスである下請けのシステム開発はもちろん続ける。日本アドバンストリーダーズソフトウェアが、低価格で質の高いシステムを開発する技術者を揃えているからこそ、元請けは依頼してくれる。営業力は決して潤沢とはいえない。収益を確保するためには、下請けをやめることはできない。昨年度は設備から空調、搬送などを自動化し、生産管理のデータを含めて工場内効率化を図るというIoT関連の案件を請け負って、大きな収益を確保した。
製販統合管理システム「NK-PRISM」という自社製品もあることから、今後は、下請け、アウトソーシング、パッケージの三本柱でビジネスを手がけていく方針だ。 ページ数:1/1 キャプション: ●激しい競争で生き残るには、他社と一線を画した製品・サービスやビジネスモデルが必要といえる。中部圏では、規模は小さいながらもユニークな製品の開発、昔ながらの慣習を捨てて業界の枠を越えた取り組みなど、自社の強みを生かしたビジネスによって成長しているベンダーもいる。
代表取締役 「学校法人向けのシステム開発とパッケージソフト開発・販売」と銘打ってビジネスを手がけるジャスウィルは、大学職員の業務改革を実現する「TriR Campus」を提供している。中部圏を問わず全国で10大学が導入。吉田隆幸代表取締役は、「少子化とグローバル化の社会情勢の変化を大きくうけ、大学は差異化を図らなければならず、その一つとしてIT化に取り組む傾向が高まっている。職員の業務を効率化しながら学生向けサービスの充実を実現するパッケージとしてTriR Campusを開発した」としている。
TriR Campusでは、教室の一括予約や時限単位予約が可能な「施設予約」、ウェブ上で授業評価アンケートが実施できる「アンケート」、科学研究費の管理に特化した、予算編成、予算執行、決裁、支払、報告書作成が可能な「科学研究費」、卒業生/在学生と入学志願者をつなげるコミュニティをウェブ上でつくる「卒業生」という四つのシステムを用意。他社でも提供しているケースはあるが、「当社のパッケージが低価格で使い勝手がいいということで導入してくれる大学が出ている」と自信をみせる。今後も、大学の経営自体を支援するパッケージとして拡販していく。
代表取締役CEO ITサービス事業をはじめ、スポーツ関連のチームサポート事業、企業PR関連のアクティブサポート事業、企業研修など教育事業を手がけるアイガ。ITサービス事業では、SES(システムエンジニアリングサービス)を行っているが、「当社では、技術力よりも人間力に長けた人材を重視している」と坂井徹代表取締役CEOは説明する。
もちろん技術力は重要だが、技術は日々進化しているため、最新技術を追い続けるのは簡単ではない。今はオンプレミスとクラウドという二つのシステム環境があるほか、開発手法も多様化している。そのため、ユーザー企業ときちんと話し合いができて最適なシステム構築やサービスを提供できる人材が必要だ。坂井CEOは、「SEは内に閉じこもりがちであまり話さない印象をもたれている。きちんと議論ができ最適なサービスを提案できる人材を育成し、こういった印象を打破していきたい」との考えを示す。
アイガ自体の人材採用についても、技術力よりもコミュニケーション力を重視しているという。坂井CEOは、「IT業界の潮目が変わっている」と判断している。だからこそ、SE自体が変わっていくことが重要だとしている。
代表取締役 名古屋市にオフィスを構えるステップワイズは、県外での売上比率が7割という。とくに首都圏を中心にビジネスを手がけている。以前は、ソフトウェア開発が主力ビジネスだったが「今は、顧客の成長に向けたシステムを提供するコンサルティング的な役割を担っている」(長谷川誠代表取締役)という。
顧客にクラウドを利用したいという傾向が高まっていることから、構築しているシステムとクラウドの互換性を検証して提供している。顧客から要望があればカスタマイズも行う。SIerと変わらない動きととられる可能性があるが、「システム構築費などはもらわない。顧客が成長するために何をしたいのかを聞いて、結果的に最適なシステムを提案するノウハウに対して支払いしてもらっている」としている。
このビジネスモデルで顧客を増やす策として、IaaSの利用権とルータをセットにして月額3万9000円で提供するサービスを提供。ルータを設定すれば、すぐにIaaSが利用できる仕組みだ。これにより、中小企業のクラウド利用を普及させて、コンサルティングにつなげる。長谷川代表取締役は、「クラウドと何を組み合わせれば最適なのか、コラボレータになることがカギ」としている。
中部圏のとくに名古屋のユーザー企業は、高い品質を求める。価格面でもシビアだといわれている。そのような地域で成功したベンダーは、首都圏を中心に全国的に通用する可能性を秘めている。中部圏のベンダー自らが他地域への進出を積極的に行うケースや、今後は「ローカルキング」と呼ばれる一つの地域に強いベンダーとのアライアンスなどで、さらにビジネスが拡大する機運が高まっている。
「TOKAI VISON」で中部発のIT産業を目指す
トヨタ自動車など世界屈指の自動車関連産業が集積し、製造品出荷額が全国の25%を占めるといわれる「ものづくり」の中部圏。ものづくりをさらに活性化させるため、愛知県をはじめ、長野県、岐阜県、静岡県、三重県の5県および名古屋市、静岡市、浜松市の3政令市の自治体、経済界、有識者から構成される「東海産業競争力協議会」を立ち上げ、地域の産業競争力強化などに関する検討やフォローアップを行っている。また地域に根ざした「生の声」を反映していくため、中小企業の経営者からなる部会を協議会の下に置いて、中部圏の競争力を強化する策を議論している。これが「TOKAI VISON」だ。現在、「アクションプラン2016」が動いている。具体的には、「自動車関連産業」「航空機産業」「ヘルスケア産業」「環境産業」を戦略産業と位置づけ、高い技術や人材をもつ中小企業が現場での経験を生かして競争力を支える「ものづくりマザー機能」で戦略産業を下支えし、国や地方自治体、産業界が連携してサポート環境を整えるという構図を描いている。今年6月には、ITやロボット(IoTを含む)などの技術による戦略産業の高度化を目的とした「ブースト機能」が新たに設けられた。中部経済産業局の中島真一郎・地域経済部次世代産業課長兼情報政策室長は、「中部圏の多くの企業がIT化に取り組み、ITの普及促進、『ものづくり圏』によるIoTの推進を図りたい」との考えを示す。同局の北川大輔・地域経済部次世代産業課情報政策室情報化推進係長は、「ITやIoTの活性化を啓発していきながら、中小企業の育成にもつなげていきたい」と話す。

中部経済産業局の中島真一郎室長(左)と北川大輔係長
中部圏では、IT活用による競争力の強化が必要と認識されているわけだが、ITベンダーの現状はどうなのか。以前は、トヨタ自動車から下請けで部品などを製造する製造業者が多いことに比例して、下請けのソフトウェア開発が多かったが、今は状況が変化しつつある。ベンダーの取り組みをみていこう。
●自動車を中心に製造業が多い中部圏のユーザー企業は、ブランド力のあるSIerや地域のソフト開発力に絶対的な信頼を寄せている。とくに、名古屋を本拠としてビジネスを手がけるベンダーとの関係は深い。それらベンダーは今、新しい領域へとビジネスの幅を広げようとしている。
トーテックアメニティ 公共・民需ともに過去最高を記録
中部圏の有力な独立系SIerのトーテックアメニティは昨年度(16年3月期)、公共機関向け・民需向けビジネスがともに過去最高の売上高を記録した。どちらの領域でも、中部圏で名が知られているということが、成長の原動力になっている。民需では、中堅規模の製造業を中心にITリプレースの動きが出たことが売上増の理由で「生産管理システムが上昇傾向にある」と、伊東彰・執行役員産業システム事業部事業部長は満足げだ。今年度に入ってからも順調に推移し、「新規顧客の開拓に成功している」(伊東執行役員)という。案件の多くはオンプレミスがメインだ。

伊東 彰執行役員(左)と大橋卓也執行役員
公共では、「昨年度はマイナンバーが動き出したというのがキーワードだった」(大橋卓也・執行役員公共医療システム事業部事業部長)。中部圏の地方自治体を中心に、30団体に基幹システムを提供しているノウハウを生かしてリプレースを促進。しかも、「今回のタイミングでクラウドに移行したいという要望が多かった」(大橋執行役員)とのことだ。
中部圏での経験を生かして、同社では民需と公共ともに首都圏など他地域でのビジネス拡大にも力を入れていく。
萩原電気 IoTをワンストップで提供
ソリューションの提供をはじめ、センサなど電子デバイスの販売、組み込みソフトウェア開発などをビジネスとして手がける萩原電気は、製造業の大手や中堅を顧客として獲得している。さまざまなビジネスを手がけ、なおかつ製造業が顧客のメインという強みを生かして、萩原電気が将来的に大きな柱の一つになると踏んでいるのがIoTだ。ソリューションビジネスユニット第一ソリューション事業部担当の岡山徹雄・上席執行役員は、「豊田・刈谷地区に顧客がいる。さまざまな角度から製造業と関わっていることを強みに、ソリューションを提供することができる」と自信をみせる。ソリューションビジネスでは、IoTの観点で工場からのデータを収集して可視化するアプリケーションを提供。加藤靖章・第一ソリューション事業部事業部長は、「中部圏の製造業には、名古屋に本社があることは信頼面で他地域の競合よりも有利」と判断する。

岡山徹雄上席執行役員(左)と加藤靖章事業部長
アプリケーションやセンサ、エッジコンピューティングは自社で開発・提供し、IoTプラットフォームやビッグデータ分析ではパートナーと協業してIoT関連ビジネスを拡大していく。 ページ数:1/1 キャプション: ●受託開発や技術者派遣のノウハウを生かして独自の製品・サービスを開発することに成功しているベンダーは少なくない。なかには新規ビジネスが大きく化けそうな兆しがみえ始めている。
ウェブサーブ 就業/勤怠管理の悩みを解決する
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代表取締役
新しいサイトでは、まだ就業/勤怠管理システムを導入していない事例などを取り上げ、200近くの話題について解決策を掲載。システムを導入したが、業務効率化につながらないケースについても取り上げる。鈴木孝裕代表取締役は、「就業管理や勤怠管理に関して、どのように行えばいいのかという課題を抱える企業が多い。そこで、企業の総務担当者や経営者などの悩みに応え、解決策を導き出すことが重要だと判断した」としている。サイトでは収益を確保しないものの、サイトで同社製品を紹介していることから、販売につなげることも検討しているという。
元請けを徹底しているのは、「顧客の要望にしっかりと応えるため」と鈴木代表取締役はいい切る。顧客からの評判は高く、今後は高い技術力で質の高いパッケージも市場に投入していく方針だ。
シーライン 地元密着へのこだわりで信頼を勝ち取る

社長
名古屋を中心とした中部圏を攻めるなら、まずシーラインに相談しなければ、とメーカーに思わせるほどだ。一つの例では、超高速開発ツール「Magic xpa」を提供するマジックソフトウェア・ジャパンでは、中部地区でパートナー会が活発化しており、その立役者がシーラインとなる。また、応研の業務アプリケーション「大臣エンタープライズ」の販売代理店で、大臣エンタープライズとMagic xpaを組み合わせたソリューションを考案したという経験もある。NTTコミュニケーショズとはクラウドで協業している。
「(今、流行りの)ドローンを売れないかという問い合わせがきている」と岡克宏社長は漏らす。新しいソリューションが創造できる可能性を秘めている。
システムサーバー 「電力自由化」の差異化サービスを支援

社長
昨年、中部電力グループのシステム子会社と協力して、基幹系、設備管理、顧客管理などのプロジェクトに参画。技術力の高さから重要なシステムを任された形だ。フロント系のサービスではないものの、中部電力がカテエネによって他社と優位性がもてるようにするため、「ニーズに柔軟に応えて、電力自由化がスタートする前に仕上げることに重きを置いた」と鈴木秀美社長はアピールする。カテエネが開始した今も、消費者向けのサービスが追加されれば、「システム改修を迅速に行っていく」という。
プロジェクトを迅速に進めることは自社の技術者のスキルを高めることにつながり、「横展開するためのソリューション創造につながる」としている。このような取り組みを積み重ね、将来的には売上規模を現状の5倍程度にすることを目指している。
日本アドバンストリーダーズソフトウェア アウトソーシングサービスに着手

社長
主力ビジネスである下請けのシステム開発はもちろん続ける。日本アドバンストリーダーズソフトウェアが、低価格で質の高いシステムを開発する技術者を揃えているからこそ、元請けは依頼してくれる。営業力は決して潤沢とはいえない。収益を確保するためには、下請けをやめることはできない。昨年度は設備から空調、搬送などを自動化し、生産管理のデータを含めて工場内効率化を図るというIoT関連の案件を請け負って、大きな収益を確保した。
製販統合管理システム「NK-PRISM」という自社製品もあることから、今後は、下請け、アウトソーシング、パッケージの三本柱でビジネスを手がけていく方針だ。 ページ数:1/1 キャプション: ●激しい競争で生き残るには、他社と一線を画した製品・サービスやビジネスモデルが必要といえる。中部圏では、規模は小さいながらもユニークな製品の開発、昔ながらの慣習を捨てて業界の枠を越えた取り組みなど、自社の強みを生かしたビジネスによって成長しているベンダーもいる。
ジャスウィル 大学業務の改善に特化

代表取締役
TriR Campusでは、教室の一括予約や時限単位予約が可能な「施設予約」、ウェブ上で授業評価アンケートが実施できる「アンケート」、科学研究費の管理に特化した、予算編成、予算執行、決裁、支払、報告書作成が可能な「科学研究費」、卒業生/在学生と入学志願者をつなげるコミュニティをウェブ上でつくる「卒業生」という四つのシステムを用意。他社でも提供しているケースはあるが、「当社のパッケージが低価格で使い勝手がいいということで導入してくれる大学が出ている」と自信をみせる。今後も、大学の経営自体を支援するパッケージとして拡販していく。
アイガ 人間力に特化した SEを育成

代表取締役CEO
もちろん技術力は重要だが、技術は日々進化しているため、最新技術を追い続けるのは簡単ではない。今はオンプレミスとクラウドという二つのシステム環境があるほか、開発手法も多様化している。そのため、ユーザー企業ときちんと話し合いができて最適なシステム構築やサービスを提供できる人材が必要だ。坂井CEOは、「SEは内に閉じこもりがちであまり話さない印象をもたれている。きちんと議論ができ最適なサービスを提案できる人材を育成し、こういった印象を打破していきたい」との考えを示す。
アイガ自体の人材採用についても、技術力よりもコミュニケーション力を重視しているという。坂井CEOは、「IT業界の潮目が変わっている」と判断している。だからこそ、SE自体が変わっていくことが重要だとしている。
ステップワイズ コラボレータとして顧客を満足に

代表取締役
顧客にクラウドを利用したいという傾向が高まっていることから、構築しているシステムとクラウドの互換性を検証して提供している。顧客から要望があればカスタマイズも行う。SIerと変わらない動きととられる可能性があるが、「システム構築費などはもらわない。顧客が成長するために何をしたいのかを聞いて、結果的に最適なシステムを提案するノウハウに対して支払いしてもらっている」としている。
このビジネスモデルで顧客を増やす策として、IaaSの利用権とルータをセットにして月額3万9000円で提供するサービスを提供。ルータを設定すれば、すぐにIaaSが利用できる仕組みだ。これにより、中小企業のクラウド利用を普及させて、コンサルティングにつなげる。長谷川代表取締役は、「クラウドと何を組み合わせれば最適なのか、コラボレータになることがカギ」としている。
記者の眼
最先端の技術を駆使して製品・サービスの創造に取り組んだり、これまでの経験を生かして開発力の強化を図ったり、他社が真似できない取り組みによって成長路線を敷いたりと、目指す姿は各社によって異なるが、いえるのは、国や地方自治体などがTOKAI VISON アクションプラン2016で中部圏のIT化やIoTを推進しているなか、この流れに乗るかのようにベンダーも進化しつつあるということ。しかも、変わることによって業績が伸びているのも事実だ。中部圏のとくに名古屋のユーザー企業は、高い品質を求める。価格面でもシビアだといわれている。そのような地域で成功したベンダーは、首都圏を中心に全国的に通用する可能性を秘めている。中部圏のベンダー自らが他地域への進出を積極的に行うケースや、今後は「ローカルキング」と呼ばれる一つの地域に強いベンダーとのアライアンスなどで、さらにビジネスが拡大する機運が高まっている。
製造業を中心として、ユーザー企業によるITへの投資意欲が高まっている。名古屋を中心とした中部圏IT業界においても、多くのITベンダーが成長している。一方で、下請けからなかなか抜けきれないSIerもいる。そんななかで、自社製品・サービスを創造し、全国展開を図ろうとする動きが相次いでいる。中部圏IT業界の今を追った。
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