
日本情報技術取引所(JIET)
横田 靖
理事 北海道支部支部長 日本情報技術取引所(JIET)の会員企業にも、三次請けや四次請けのSIerが多い。そのため、JIETの横田靖・理事 北海道支部支部長も、「脱下請けはともかく、せめて二次請けが望ましい」と語る。ただ、JIETの会員企業は、客先常駐やSES(System Engineering Service)が多く、自社に開発案件をもち帰る請負は難しい状況にあるという。ニアショア開発にも注力したいところだが、「仕事はたくさんあるが、人手が足りない。ニアショア開発に取り組みたいが、エンジニア不足で受けられない」(横田理事)のが、実情とのことである。
●ITJVでニアショアを担う 脱下請けを目指すとしても、小規模なSIerでは営業担当を置くことが少ないため、現実的には難しい。HICTAでは、建設業のジョイントベンチャーのように、IT産業においても複数の企業が集まった「ITジョイントベンチャー(ITJV)」を組み、ニアショア開発を担うことを目指している。
「札幌は大企業が少ない。それぞれの企業でニアショアを担うには規模の問題がでてくる。脱下請けで上流を目指すには、パワーが必要。そのため、ノウハウをもった集団として、建設業のように横の連携でもって対応できるようにすることを考えている。エンジニア不足という問題もあるので、ぜひ機能させたい」と、HICTAの菅野副会長の期待は大きい。ITJVを札幌に根づかせ、首都圏のさまざまなニアショア案件をこなせるようにすることで、「迷ったら札幌」という有力な選択肢となることを目指し、ニアショア開発を極めていく考えだ。また、札幌は企業の集積率が高い。そこで、印刷業などITと親和性の高い産業とのジョイントベンチャーについても構想している。

北海道情報システム産業協会(HISA)
中村真規
会長 一方、HISAの中村会長は、ITJVに否定的だ。「札幌のSIerは企業規模が小さいので、5年ほどITJVに取り組んでみたがうまくいかなかった。問題は責任者がいないこと。一般的なJVでは、大手企業の下に中小規模の企業がぶら下がることになるが、小さい企業同士ではそれができない。すると、失敗の責任や利益の分配などの切り分けが難しい。なあなあではできない。責任のなすりあいになってしまう。結局、うまくいかなかった」と語る。
JIETの横田理事も同様で、「ITJVは難しい。どこが責任を取るのかなどの取り決めができない」と語る。結局、元請けのSIerがいて、下請けのSIerがいるという昔ながらの構図が機能するというわけだ。
●人材確保とU・Iターン動向 札幌は都市がコンパクトにまとまっていて住みやすく、働きやすい環境にあるが、全国的な傾向と同様、慢性的なエンジニア不足の状況にある。開発案件は多く、札幌のIT産業は今後も成長する見込みだが、エンジニア不足が障害となる可能性は大きい。そのため、札幌のSIerは、道内の大学出身者の確保や、U・Iターンを望むエンジニアへのアピールに注力している。
「札幌は働きやすい。通期時間が30~40分という人がほとんど。賃金が低いと感じるかもしれないが、生活費が安いので、実質賃金は首都圏と変わらない」と、HICTAの松田氏。そのためにも、技術的な仕事を増やすなど、前述のITJVのように、地域を挙げて取り組んでいく考えだ。
そうしたなかで、最近ではUターンの傾向も変わってきているという。「以前のUターン希望者は50代が多かったが、今は親の介護などにより、40代のUターン希望者が増えている」(松田氏)という。こうした変化を、業界としてキャッチアップしていくことに努めている。
HISAは、Uターンフェアの実施を今年の11月19日に実施する予定で、人材確保に本腰を入れている。「エンジニア不足はどのSIerも同様で、人材紹介企業に多くの投資をして、人材を募集している。それを各社でやるのではなく、HISAとして取り組んでいく。IT業界は、人集めに苦労している。Uターンフェアなどを実施することで、優秀な人材を確保したい」と中村会長は考えている。
ITコーディネータはこうみる(2)

北海道ITコーディネータ協議会
田坂和大 副会長 「北海道のIT産業は伸びているのに若者がこない。以前は、よくそう言われていた。ただ、最近は変わってきている」と、北海道ITコーディネータ協議会の田坂和大・副会長は、潮目の変化を感じている。各産業に依存するのではなく、IT産業として北海道で自立していることと、北海道の住みやすさから、IターンとUターンを含め、若者の就職先として、IT産業が選ばれるようになりつつあるという。
また、人材育成のための投資も行われるようになってきている。「IT人材の質にこだわった育成事業も、道内で始まっている。SIerは顧客から依頼されたものをつくるのが仕事だが、もっと付加価値を提供できなければならない。そのためには顧客の業務を理解し、顧客が求める以上のものを提案することが求められる」と田坂副会長は考えている。
最近では、AI(人工知能)やIoTといった新たなトレンドも、北海道のIT業界で話題になっている。「こうした新たな動きが、新たなシステム構築のきっかけとなり、IT業界の活性化につながる」ことから、田坂副会長は、こうしたトレンドが若者をIT業界に引き込むきっかけになればと期待している。
北海道でネットショップや通販事業を営む企業の多くが、10万人以上の顧客データをもっているという。ビッグデータである。こうしたところでは、AIが活用され始めている。
そのため、ITコーディネータにはデータ活用の相談が多くなってきているという。「農業や建設業も同様で、AIなどに向けたデータ活用が注目され始めている」と田坂副会長。新たなトレンドによって札幌のIT産業は引き続き伸びていくと展望している。
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