Special Feature
加速する文教ICTビジネス 2020年に向けた課題と未来像
2017/05/24 09:00
週刊BCN 2017年05月15日vol.1677掲載
ビジネスチャンスはICT機器にあり!
教育ICTの市場は、当初の想定ほど伸びていない。自治体が消極的なことが要因の一つで、自治体と業界の温度差をいかに解消するかが課題といえる。●NEC
草の根作戦で導入を後押し
森田浩文
パートナーズプラットフォーム
事業部長代理
第2期教育振興基本計画が今年度で終わり、第3期が来年から始まる。ICT環境整備目標である20年に向けて、予算が増えることは十分に考えられる。「おそらくピークは19~20年。しかし、20年までに授業にITを活用することが求められているので、それでは遅い」(森田事業部長代理)とし、前倒しでのICT導入提案を進めている。
課題はやはり予算だ。教育に割り当てられる予算には限りがある。提案する自治体に近い規模の導入事例を紹介しながら、中期的な導入プランの提案を実施している。例えば、一人1台のタブレット端末を一度に導入するのは難しいので、「コンピュータ室の予算をタブレット端末に置き換える、1学級に1クラス分のタブレット端末を導入して、交代で使うなどの予算に合わせた提案をしている」(森田事業部長代理)という。
全国にあるNECの拠点を生かし、市議会や町議会をまわる草の根活動を16年から実施している。文教販売店と協力して情報交換を行い、各自治体の予算にあったサービス、ソリューションの開発にも力を入れている。このほか、ICT導入/活用の事例紹介、ICT機器のサポートサービスの提供、ICT支援員の資格をもつスタッフによる導入後の授業支援など、現場での不安を取り除く取り組みにも力を入れている。
●富士通
小学校から大学まで
教育用コンピュータとして文教防水タブレット端末「ARROWS Tab Q507/PE」と文教ソリューション「知恵たま」の提案に力を入れる富士通。ARROWS Tab Q507はオプションでキーボードを追加できるので、次期学習指導要領に合ったキーボード入力にも対応する。

文教ビジネス推進統括部の野沢美保シニアディレクター 小中高ビジネス推進部長(左)と、
文教ビジネス推進統括部 大学ビジネス推進部の福瀧敏典部長
知恵たまは教員と児童/生徒が利用するICTソリューションで、ICT教材の準備を容易にする機能、授業でのPC利用を簡単操作で実現する機能、授業履歴の自動蓄積、教員・児童生徒間での回答・作品共有機能などを備える
また、「教員同士でICT活用のノウハウを共有できるので、指導能力の底上げ」(文教ビジネス推進統括部 野沢美保シニアディレクター 小中高ビジネス推進部長)も可能だという。
ICTを活用することで、学習履歴などのさまざまなデータが蓄積する。こうしたデータの活用ソリューションも同社は提供している。大学向けの戦略的情報活用プラットフォーム「Unified-One 統合データベース」は、学内外に分散する情報を統合し、リアルタイムな情報活用を実現する。集められたデータはデータビューアによってさまざまな分析が可能になる。文教ビジネス推進統括部 大学ビジネス推進部の福瀧敏典部長は、「大学は縦割り組織のところが多く、なかなかデータの集約ができない」と話す。しかし、新たな教育手法や経営分析をするため、データ集約と分析の必要性は高まっている。「大学によっては学長室の直下にIR室を設け、全校のデータを集約するなど、組織自体を変える動き」(福瀧部長)もあり、ICT導入後にデータ分析のニーズが小中学校でも広まっていきそうだ。
ビジネスチャンスは無線LANにあり!
教育用コンピュータの配備が整えば、活用するためインターネット環境の構築が重要になる。無線LANだけではなく、同時アクセスができる高速な環境が必要だ。●内田洋行
文教ノウハウと技術の融合
内田洋行は3月、群馬県前橋市の全小中学校71校に校内無線LAN環境を一斉に整備したと発表した。文教に関して豊富なノウハウをもつ同社が選んだのは、三井情報の無線LANルータだ。
学校で求められる無線LAN環境というと、児童/生徒の全校一斉アクセスに耐えられる耐久性、セキュリティだ。三井情報の無線LANルータは電波状態に応じて個々のAPの電波強度を調節し、干渉を押さえるなどの処理に対応する。AP1台につき、通常時40台が接続できる。セキュリティ面では、児童/生徒の成績などの校務データを扱う有線LAN環境と児童/生徒が利用する無線LAN環境を分離した。
三好昌已
上席執行役員営業本部
営業統括グループ
ICTリサーチ&
デベロップメントディビジョン
事業部長
また、今トレンドとなっているのが、災害時の防災拠点を想定した無線LAN環境の構築だ。平常時は停止している災害用の無線LANを、発災時には簡単な操作で一斉に起動できる仕組みを採用。サーバーへのアクセス制限やフィルタリングの無効なども同時に行えるので、通常時は利用を制限されているSNSなども災害時には活用できる。
APで多台数端末を接続 安定通信を追求
無線LANアクセスポイント(AP)メーカーのフルノシステムズは、4月に無線LANの最新規格である802.11ac Wave2対応の新製品「ACERA 1110」を発表。これを狼煙(のろし)として、競合製品からの乗り換え需要の開拓を加速させたい考えだ。
鈴木智之広報室室長によれば、同社製品はもともと、「他社に先駆けて多台数端末の同時接続に対応」してきた。ただし、従来の規格では、APと端末の通信は1:1で行われ、実際はタイミングをずらしながら複数の端末が1台ずつ通信する“擬似的な同時通信”に過ぎず、パフォーマンスにも限界があった。これに対して、802.11ac Wave2から採用されたMU-MIMO(マルチユーザーマイモ)という技術は、名実ともに複数端末の同時接続を可能にし、スループットの大幅な向上が期待できる。あわせて、Wave2からは、APと端末間の空間で最適な通信経路を選択するビームフォーミング技術も標準実装され、障害物が多い環境下でも安定した通信環境を確保しやすくなる。ACERA 1110にはこうした機能を新たに盛り込み、「通信インフラを無線化するとともに、先生や生徒が情報端末をストレスなく使えるようにするのが教育現場の喫緊の課題だが、そうしたニーズに、より高いレベルで応えられるようになった」(鈴木室長)という。
さらに大きな強みとなっているのが、同社製の無線ネットワーク管理システム「UNIFAS」だ。鈴木室長は、「ほとんどの案件でAP製品とセットで納入している」と話す。オンプレミスはもちろん、クラウドでも運用可能で、地域の学校全体を統括管理することも容易だ。同社は全国に300社以上の販売パートナー(SIerなど)を抱えるが、彼らがUNIFASを使って無線LANシステムの管理サービスを提供するというパターンも多く、「AP、UNIFASを含め、ソリューションとしての維持管理のしやすさが、競合に対する大きな差異化ポイントだ」(鈴木室長)という。よりきめ細かいパートナー支援を展開し、販路拡大を推進する構えだ。
ビジネスチャンスは無料にあり!
機器が揃い、ネットワーク環境が整えば、いよいよICT教育の始まりだ。デジタル教材を始めとする教務ソリューション、教員研修などの需要が今後2~3年で拡大する。●日本マイクロソフト
教員研修による教育の質向上
ICTを活用した指導について不安を抱える教員が多いなか、教員の研修支援に力を入れているのが日本マイクロソフトだ。15年から教員を対象にした無料研修を全国で展開している。
研修では、Windows 10を搭載したタブレット端末、Office 365、電子黒板、クラウドシステムなどを使い、最新の実践事例を紹介する。デジタル教科書の利用方法だけではなく、PowerPointを使った自作教材の作成方法など、より実践的な内容になっている。当初は16年6月末までの予定だったが、好評のため期間を延長し、17年8月31日まで実施する。
小野田哲也
業務執行役員
パブリックセクター統括本部
文教本部長
工学博士
次期学習指導要領に盛り込まれた20年から始まるプログラミング教育については、「教員側にもまだ教えられる体制が整っていない」(小野田本部長)のが現状だという。日本マイクロソフトでは、すでにプログラミング教育を取り入れている英国、米国、フィンランド、ドバイなどの各国の事例を参考に、学び方、カリキュラムをまとめ、文部科学省、総務省、経済産業省とITベンダーでなるプログラミング教育の普及・推進を目指す組織「未来の学びコンソーシアム」に提案をしていく。
●NTTコミュニケーションズ
デジタル教材を集約したプラットフォーム
総務省主導の「先導的教育システム実証事業」で14年から16年の3年間で約90校、約1万人を対象にICT導入の検証を行ってきた経験をもつNTTコミュニケーションズ。この4月にさまざまなデジタル教材やコミュニケーション機能を備えるコンテンツ提供プラットフォーム「まなびポケット」の展開を開始した。

左からアプリケーション&コンテンツサービス部の服部陽一担当課長、アプリケーション&コンテンツサービス部アプリケーションサービス部門第五グループの吉原健次主査、古尾淳氏、第六グループの田村憲担当部長
「ICTを活用した教育のあり方を3年間実証してきて、ノウハウが蓄積できた。また、この期間に築いてきたコンテンツプロバイダとの実績もある。機能をなるべくシンプルにし、教員や児童/生徒に利用しやすくした」とアプリケーション&コンテンツサービス部の服部陽一担当課長は経緯を説明する。
具体的な機能として、学習コンテンツにアクセスするためのポータル画面のほか、利用者管理や校内SNSなどの基本機能を提供する。ID・パスワードを使ってログインするだけで利用できるので、PCに加え、スマートフォンやタブレット端末など、デバイスに縛られることなく利用できる。
利用シーンとしては、教員と児童/生徒が学校の教室で同時にデジタル教材を閲覧、教員が児童生徒たちの学習進捗をチェック、児童/生徒が自宅でデジタル教材を使って予習・復習、教員と児童/生徒が掲示板機能を使ってホームルームを実施するといった例を想定している。設備投資や初期費用、「まなびポケット」の月額利用料金は不要で、申し込みから1週間ほどでアカウントが発行できる。
現在は教育ソリューションを中心に揃えているが、今後、校務システムとも連携する計画で、20年に300万IDの発行を目指している。さらに、学習記録データの蓄積を進め、将来的にはAIなどを用いたビッグデータ分析により、利用者が高い学習効果を得るための情報提供など、新しい価値を提供したい考えだ。
政府は21世紀にふさわしい学校教育の実現に向けて、教育現場でのICT活用を推進している。3月31日に次期「学習指導要領」を告示。2020年を目標に小学校の英語教育の教科化、プログラミング教育必修化などが盛り込まれ、教育の現場が大きく変わろうとしている。文教ICT市場では、導入が進む教育用のPC/タブレット端末を始め、デジタル教科書や教材、校内のIT環境整備など、ITベンダーにとってビジネスチャンスは数多い。各社は現場の課題をどう捉え、商機を見出しているのだろうか。(取材・文/山下彰子)
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