Special Feature
実ビジネス化が進むSDN クラウド普及が後押し
2018/01/31 09:00
週刊BCN 2018年01月22日vol.1711掲載
新たなSDN戦略
クラウドに組み込んで提供クラウドサービスを提供するデータセンターや、通信事業者を対象に導入が進んでいるSDN。ここにきて新しいSDNの提供方法が生まれた。プライベートクラウドに組み込んで提供するF5ネットワークスジャパンと、オンデマンドサービスとして提供するColtテクノロジーサービスの取り組みについて紹介しよう。
クラウド市場の拡大が、SDN/SD-WANの普及を後押ししていると述べだが、クラウドの導入に対し、ネットワークの移行はネットワークの再構築、機器の交換が必要になり、なかなか大掛かりで抵抗がある。しかし、クラウドのポテンシャルを引き出すためにはネットワークの自動化を実現するSDNが必要不可欠だ。そのため、SDNベンダーはクラウドベンダーやクラウドに強いインテグレータと提携し、クラウドに絡めた提案、販売を行っている。
F5ネットワークスジャパン
ギド・フォスメア
執行役員
セールスエンジニアリング本部
本部長
パブリッククラウドもプライベートクラウドも、ストレージ、コンピュート、そしてネットワークで構成されている点は同様だ。その上で、「自前でもつプライベートクラウドは、ネットワークをどれだけ自動化、最適化し、アプリケーションをどれだけ速くデリバリできるかが重要になる」とギド本部長は説明する。
アプリケーションごとにどのネットワークに通すかを、人が設定、管理していてはスピード感が失われてしまう。そこで同社のオーケストレータを使って、通すアプリケーションの用途や特定のインシデントにあわせてハードウェアのパフォーマンスを自動で柔軟に変更させている。オペレータがスイッチを直接設定するのではなく、コントローラーが自動で設定することでアプリケーションのデリバリを高速化しているわけだ。SDNを組み込むことで、プライベートクラウドに自動化した環境を実現した。
オンデマンドサービスで提供
SDNの市場で、ユニークな取り組みをしているのがColtテクノロジーサービスだ。Coltは、グローバルで広域イーサネット接続サービスを提供しており、グローバルで800拠点を超えるデータセンターと、2万4500件を超える商業ビルを、自前で保有している光ファイバー設備を用いて接続している。国内のSDNベンダーと違い、専用ファイバーを使い拠点をつなげているため、国内では東京、大阪、名古屋の3地区のみのカバーとなるが、価格面や管理面で特徴を出すことで差異化を図っている。
そのColtが昨年10月にリリースしたのが、必要な時に必要な時間だけ提供するSDNのオンデマンドサービスだ。これまでのネットワークは、データを送っていない時もネットワークがつながっている。さらに、負荷が集中する短時間のために広い帯域を用意していることが多い。このコストをSDNのオンデマンドサービスで最適化できるという。
豊富な料金プランを用意し、従来通りの契約期間に応じた固定料金のほか、1時間単位の従量制料金プランも用意。加えて利用帯域も自由かつ即時に増減速できる。導入も、企業ユーザーがポータルサイトから接続するオフィスやデータセンターと帯域(最大1Gbps)を指定することで、数分程度で広帯域接続を開始できるようにした。
Coltテクノロジーサービス
星野真人
執行役員
アジア オペレーション&
テクノロジー本部長
とはいえ、ネットワーク管理者が常時ネットワークのオン・オフを管理するのは無理がある。そのため、当初はオンデマンドサービスリリース後に実装する予定だったスケジューラーを前倒しで調整し、リリースのタイミングで実装した。これにより、ネットワークのオン・オフを自動で管理することができる。
販路は、直販のほか、パートナー販売、キャリア販売で提供している。今後もさらにパートナーを増やしていく。星野本部長は「エンドユーザーだけではなく、データセンターをもっているSIer様のインフラとしてもSDNのオンデマンドサービスを検討してほしい」とメッセージを送った。
SD-WANの時代が始まる
遠く離れた拠点と拠点をつなぐWAN。欧米などでは独自ケーブルで拠点間を結んでいるため、ネットワークが固定的だ。どこかの回線が詰まった時、迂回できずにパフォーマンスが落ちてしまうという課題がある。それをソフトウェアで管理し、安定した通信を実現したのがSD-WANだ。こうした柔軟性とコストメリットがあり、欧米ではSD-WANが広まっている。一方、国内市場はどうだろうか。NTT東日本・NTT西日本の「フレッツ」網、3G/LTEなどのモバイル網といった回線サービスを組み合わせてWANを構築・運用している。他国のサービスと比べて品質が高く、欧米のような課題が少ない。つまり、欧米と同じアプローチ、同じ機能をもった製品ではなかなか顧客ニーズに合致しにくい。しかし今、SD-WANが注目を集めている。それはSD-WANの安定性ではなく、柔軟さのニーズが高まっているからだ。
SaaS利用が増加
リバーベッドテクノロジー
草薙 伸
技術本部長
これを実現するのがパブリッククラウドへの接続を自動化するSD-WANソリューションの「SteelConnect」だ。拠点側にSD-WAN用のゲートウェイアプライアンスを設置し、IaaS上で動作する仮想アプライアンスとの間でIPsec VPNを構築する。設定や管理はウェブ上のコントローラー「SteelConnect Manager」で行い、各拠点とグローバルのリージョンとのネットワーク接続を迅速に行なえるのが大きな特徴だ。現在、AWSとAzureの両方に対応している。
「これまでネットワークは導入の際に機器一つひとつに設定をする必要があったが、全体のデザインを先にしてしまえば、後はITの知識がないスタッフでも簡単につなぐことができる。ネットワーク機器のコモディティ化だ」と草薙本部長は話す。
日本市場に合った機能と価格
国内ベンダーの動きをみていこう。NTTPCコミュニケーションズは中堅・中小企業向けのクラウド型ネットワークサービス「Master'sONE CloudWAN」を提供している。初期費用は無料で、月額利用料は1万7000円から。ユーザーはウェブのコントロールパネルを使って開通、運用、保守までを一貫して行える。
NTTPCコミュニケーションズ
三澤響
サービスクリエーション本部
第二サービスクリエーション部長
Master'sONE CloudWANは、Office 365などのSaaSのトラフィックだけをインターネットに逃がすインターネットブレークアウト、アプリケーションごとの通信量の可視化・制御といった、SD-WANサービスで一般的な機能を搭載する。
さらに独自機能として、コントロールパネルから、ネットワークの設定変更や状態確認だけではなく、エッジ装置の追加手配を行える機能も盛り込んだ。エッジ装置は都内であれば2営業日ほどで届き、キッティングが不要で、ネットワークに接続すればすぐにVPNを構築できる。エンジニアの人手不足が深刻化している日本にマッチした機能だといえる。
ルータに見える化機能を搭載
国産ならではの使いやすさ、という点で定評があるのがヤマハだ。中堅・中小企業向けにネットワーク事業を展開する同社では、店舗などの多拠点を抱える中小企業が多い。多くのエンジニアを抱えることができない中小企業のニーズに応えて開発したのが「LANマップ機能」だ。これはSDN、SD-WANに取り組む前にルータに実装させた機能だが、ルータに接続しているデバイスを可視化することができる。また、VLAN一括設定、端末検索などの操作ができる。どのポートにどのデバイスがつながっているか一目で把握でき、ループなどのトラブルをエンジニアが迅速に発見できる。
多拠点をもつ企業向けに昨年開発したのが複数のルータを一元管理できる「Yamaha Network Organizer(YNO)」。YNOの画面上で個々の拠点のネットワーク機器が操作できる。YNOのダッシュボード画面に表示されるステータス一覧では、管理対象の機器に関するWAN回線やトンネルの接続状態の異常を一目で把握できる。アラーム一覧では、発生した異常の詳細を一覧表示できる。
ヤマハのYNOの最大メリットは、すでにルータがLANの見える化機能をもっているので、旧来のヤマハのネットワークも一元管理できる点だ。コントローラーの導入とともにスイッチをすべて交換することがないので、導入のハードルは低くなる。
クラウドの市場はまだまだ拡大している。ますますクラウドを利用したいというニーズは高まっていく。さらに、クラウドエンジニア、サーバーエンジニア、アプリケーションエンジニアなどもネットワークを使ってビジネスを始めようとしている。その時、ソフトウェアで管理できるネットワークのニーズはますます高まるだろう。

(左から)ヤマハ 瀬尾達也 楽器・音響事業本部 音響事業統括部 SN事業推進部 ネットワーク戦略グループ
リーダー
ヤマハ 小島務 楽器・音響事業本部 音響事業統括部 SN事業推進部 ネットワークグループ主事
ソフトウェアでさまざまなネットワーク機器を統合管理する手法「SDN(ソフトウェア・デファインド・ネットワーキング)」が再び注目を集めている。数年前にこの技術が生まれ、データセンター(DC)運営会社、通信キャリア、エンタープライズ(大手企業)を中心にじわじわと浸透した。それが2017年から再び注目を集め、さらにはSDNより広域のネットワークに適用するSD-WAN(ソフトウェア・ディファインド・WAN)をリリースするベンダーが増えた。今、SDN/SD-WAN市場を後押ししているのがクラウドだ。(取材・文/山下彰子)
続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。
(登録無料:所要時間1分程度)
新規会員登録はこちら(登録無料) ログイン会員特典
- 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
- メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
- イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。 - 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!…etc…
