■先駆者の視点
アビームコンサルティング 執行役員 プリンシパル
プロセス&テクノロジービジネスユニットFMCセクター長
矢野智一氏に聞く
SAPのERPビジネスで豊富な実績をもつアビームコンサルティングは、RPAテクノロジーズが提供するRPAソリューション「BizRobo!」をベースに、SAPのERPに関わるユーザーの業務を自動化するロボット「ERP Automation Robot For SAP ERP」を開発し、2017年6月にリリースした。市場に先駆けて、ERPとRPAを組み合わせた提案をサービスメニューに加えた同社は、「ERPA」の可能性についてどうみているのか。矢野智一・執行役員プリンシパル プロセス&テクノロジービジネスユニットFMCセクター長に聞いた。
RPAはERPのポテンシャルをさらに引き出す
――率直に、RPAはERPのビジネスにどんな影響を与えるでしょうか。
矢野 まず、ERPの本質というのは、実はRPAと組み合わせても組み合わせなくても、あまり変わらないのです。ERPの歴史を紐解くと、リアルタイムかつワンファクト・ワンプレースの情報の価値などがキーワードになるわけです。データを握っているのがERPというのは変わらなくて、RPAはあくまでもそのデータをどう動かすかを司るものです。データのインプットやアウトプットなど、人間がやっていた業務を置き換えるものです。
そのうえで、ERPビジネスとの関係を考えてみましょう。RPAを使うとアドオンがゼロになる、追加開発がゼロになるみたいな話は、最近よく聞くようになりました。しかし、実際はそんなことはありません。もともと基幹システムの上流の仕組みとのインターフェース機能が整備されていたり、取引先とのデータ連携をEDIでやっていますみたいな仕組みがあって、システム化対応して自動化されている部分は、わざわざRPA化する意味はないわけです。パッケージのもともとの機能でカバーできない業務があったとして、本来、システム化して対応すべきものはアドオン開発しますし、システム化対応するのは合理的ではない部分もありますので、そういったところは人力で対応してきたわけです。RPAが置き換えられるのは、あくまでも後者の方です。結果として、RPAの導入によってERPのアドオンが減るというケースはあまりないのではというのが私の考えです。
――とはいっても、矢野さんがおっしゃったように、RPAでERPのアドオン開発を減らすことができるという謳い文句はよく耳にするようになりました。そうしたメッセージは、的外れだということでしょうか。
矢野 考えられるのは、ERPの導入時、業務プロセスをつくっていくときに、本来はERPへのアドオンで実現すべきではないものを、お客さんから言われたので仕方なくつくりました、みたいなケースですね。もっと大きな選択肢でいうと、入力系の工数、コストを落としたい、単純作業から解放したいという話なら、RPAの前にシェアドサービスセンターを立ち上げましょうとか、BPOをやりましょうという手段もあるわけです。ERPでシステム対応すべきものと単純な事務の効率化というのは、分けて考えるべきものですが、そこを一緒にして個別最適してしまったようなケースは、RPAが最適解ということもあり得るでしょう。
その意味では、とくに欧米の会社は、インドのBPOが流行っていて、彼らの発想では入力系の単純作業はそっちに送ってしまえという流れがあるんですね。しかし日本企業にとっては、日本語対応ができるBPOセンターはインドにあまりないので、手つかずで残っていました。そこにRPAの波が来て、盛り上がったというところはあると思います。当社も、シェアドサービスをやりたいという相談をいただくことも多いのですが、その代わりにRPAでやれるところまでやってみようという案件も出始めてきています。
――そうすると、RPAとERPの組み合わせで生まれる価値というのは、あくまでも周辺業務の効率化に限られるということになるのでしょうか。
矢野 現状、RPAを入れるきっかけになっているのは、現行業務が10あるとして、そのうち4が単純作業で、そこから解放してあげたいというモチベーションです。それがもう少し先に進んでいくと、「本当はこういうデータまで入力できればもっとデータ活用の範囲が広がるのに」というようなニーズが出てきて、それをRPAがカバーできるんじゃないかと思っています。ビジネスのデジタル化という意味では、ERPで活用するデータを飛躍的に増やすという観点で、RPAとの組み合わせのポテンシャルがあるのでないでしょうか。
例えば、データをグローバルで一元管理して生かしていこうとした場合、拠点間、事業間で、マスターやコードが違って、横ぐしを通してデータを分析するのを諦めてしまうことも多いです。マスターやコードを統一化する作業は、RPAが生きるところです。また、新規の取引先を増やしていくときに、自社にとっては新しい取引先だったとしても、グループ会社まで含めるとすでに取引がある得意先だったりする場合もありますが、そのチェックや登録の自動化などにもRPAは役立ちます。こうしたRPAの使い方とERPを組み合わせれば、データを一元管理する範囲を広げ、ERPの本来のメリットをより存分に活用できるようになるのではないかと思います。
アビームが提供する
ERP向けロボット
アビームコンサルティングが昨年6月にリリースした、SAPのERP向けRPAに関わる業務を自動化するロボット「ERP Automation Robot For SAP ERP」。同社はもとあもと、コンサルファームとして培ってきた業務改革ノウハウとRPAツールを組み合わせた「RPA業務改革サービス」を提供しているが、RPAテクノロジーズの「BizRobo!」とERPの周辺業務向けノウハウを融合させたものだ。
これにより、会計領域、SCM領域の業務をまずは自動化する。具体的な対応業務は以下のとおり。
会計領域……【決算処理】会社・部門からの決算情報収集、未転記伝票の自動チェック、未払・未入金の自動チェック、各種計数の異常値チェック(前年同期比等)など。 【一般会計】会計仕訳の一括アップロード、個別伝票入力など。【固定資産】棚卸しの実施、結果のアップロード、償却シミュレーションデータの自動ダウンロードと配布など。【マスタ管理】各種マスタの登録・チェック、為替レートのアップロードなど。
SCM領域……【生産管理】生産実績の一括アップロード、資材所要量計画(MRP)実行結果の確認やエラーデータの収集、担当者へのアナウンスなど。【受注管理】受注登録や登録結果確認、受注担当への受注結果連絡など 。【発注管理】発注書発行やPDF化、仕入先情報の取得・メール送信など。 【マスタ管理】各種マスタの登録・チェックなど。
RPAソリューションベンダーからみたERP
●「相性よし、相乗効果で成長の可能性あり」
RPAソリューション「BizRobo!」シリーズを提供するRPAテクノロジーズ。すでに400社弱で導入実績があるという。同社も導入支援サービスを手がけるが、基本的にはコンサルファームやSIerなどのパートナーが導入をメインで担当しており、そうしたパートナーは約50社という規模だ。笠井直人・最高執行責任者(COO)は、「大手企業はほぼ本番で使い始めていて、中堅企業がPoCをしている段階」と説明する。RPAをどんな業務にどのように使えば効果が出るかは、企業ごとに千差万別。そのため、PoCを行うケースは多いという。
本番稼働を始めた大企業などを中心に、次のフェーズでは、RPAにより稼働するデジタル・レイバー(労働者)のスケーリングと高度化が起こっていくというのが、同社の見方。笠井COOは、「そうなると、業種、業務ごとの専門的なノウハウをRPAソリューションに盛り込んでいく必要が出てくるため、特定の業種、業務のノウハウに強みをもつパートナーと協力してパッケージ化したソリューションを開発し、ラインアップ増やしていく」と話す。アビームとの連携による「ERP Automation Robot For SAP ERP」も、そうした施策に近い性質のものだという。「RPAが注目され始めた頃は、とくに間接部門での活用に注目が集まり、SAPのERPをRPAで触れるのかという問い合わせが非常に多かった」と笠井COOは振り返る。アビーム側は、「全社的に働き方改革を進めるようなケースで、きちんとガバナンスを効かせて管理していくという使い方にBizRobo!は適していた」と評価する。
そんなRPAテクノロジーズからみて、RPAとERPとの組み合わせにはどんなポテンシャルがあるのだろうか。笠井COOは、「無理な個別カスタマイズをRPAで代替できる部分はあると思う。少なからず、ERP導入のハードルが下がる部分はあるのでは」と、相乗効果による市場の成長の可能性はあるとの見方を示した。
TOPIC
中堅中小企業向け基幹業務ソフトでも
RPAとの組み合わせで自動化を追求
基幹系業務システムまわりの業務自動化にRPAを活用しようという動きは、中堅・大企業向けのERPの世界だけの話ではない。中堅・中小企業向け基幹業務ソフトベンダー大手のピー・シー・エー(PCA)は、RPAツールを活用し、PCAの業務ソフトへのデータ登録作業などをロボットに代行させて自動化するサービスを検討中だ。
例えば、「注文書などを複合機でスキャンして電子化し、ロボットが処理して販売管理ソフトに送り、受注伝票や売上伝票に取り込む」、「ECサイトの売り上げデータをロボットが取得し、仕訳データの入力業務を代行する」といったケースでの活用を想定している。