中国のビッグデータ産業が勢いを増している。産業規模は右肩上がりを続けており、2020年までに1兆元(約17兆円)に達するとみている。中国政府は、ビッグデータを経済発展の原動力に位置づけており、今後も大規模な投資が続く見通し。膨大な量を誇る中国のデータには、日系企業も熱視線を送っている。(取材・文/齋藤秀平)
「最貧省」が急成長
「最近、この辺りは高い建物の建設が活発になっています」。5月末に貴州省の省都・貴陽市を訪れた記者に対し、地元の大学に通う大学生が教えてくれた。大学生が指をさす方向では、高層ビルの建設が進み、自然豊かな風景が広がる周囲とは一線を画していた。
高層ビルの建設が進む貴陽市内
貴州省は、中国南西の内陸部に位置する。交通の便は悪く、これまで企業の立地は盛んではなかった。中国国内のなかで経済発展は遅れており、1人あたりの域内総生産が、直轄市と自治区を含む国内31省のなかで最下位になったこともある。
一般的に「最も貧しい省の一つで、中国で最も貧困人口が多い地域」(在重慶日本国総領事館のHP)と認識されているが、最近は国内でトップクラスのスピードで発展している。中国政府の経済データによると、貴州省の17年の域内総生産は、前年比110.2%の成長を遂げた。中国共産党中央直属のニュースサイト中国網日本語版によると、中国の国内総生産の成長率6.9%を上回ったのは22省あり、そのなかで二ケタ成長を遂げたのは、貴州省とチベット自治区の2地域だけという。
貴州省の発展を後押ししているのは、中国政府が力を入れるビッグデータ産業だ。中国政府は14年、貴陽市と安順市にまたがる「貴安新区」を国家級新区に指定。積極的に企業誘致を進めた。
その結果、阿里巴巴集団(アリババグループ)や騰訊控股(テンセント)、百度(バイドゥ)など国内IT企業のほか、マイクロソフトやクアルコムなどの国外企業の呼び込みも実現。貴安新区内では、企業が入居する高層ビルや関連施設の建設ラッシュが続くようになった。
年平均20%以上の成長
最貧省の一つだった貴州省は、今やビッグデータ産業の中心地の一つに変貌している。現地メディアの報道によると、貴州省には現在、ビッグデータ関連の企業数は約9000社にのぼり、ビッグデータの産業規模は1100億元に達している。
とくに、データセンター(DC)は大きな注目を集めている。貴州省は、年間の平均気温が15度前後で、「涼都」と呼ばれる涼しい気候が特徴。さらに、安定した地質条件や電力条件が追い風になり、DCの立地が相次いでいる。
中国移動通信(チャイナモバイル)、中国電信(チャイナテレコム)、中国聯通(チャイナユニコム)の国内大手通信事業者がDCを建設。最近では、米アップルが約10億ドルを投資して建設する大型データセンターの起工式が5月に行われた。
人民網日本語版によると、企業だけでなく、省レベルでも大規模な投資が予定されている。貴州省科学技術庁と貴安新区管理委員会は、1億1000万元を投じ、生命科学のデータセンターなどを建設する方針だ。
貴州省は、将来的に30億元規模とする基金を設立し、これからもビッグデータ産業の振興に力を入れる考え。計画では、20年までにビッグデータを中心としたデジタル関係を年平均20%以上成長させ、域内総生産の30%をデジタル関係で占めることを目標に掲げている。
中国政府が強力に支援
中国情報通信研究院が18年4月に発表したビッグデータ白書によると、中国国内のビッグデータの産業規模は、17年で前年比130.6%の4700億元になった。中国政府は、20年の目標値として1兆100億元を掲げており、現状の2倍以上に成長させることを狙っている。
目標達成に向けて、中国政府は各地のビッグデータ産業を強力に支援している。貴州省の場合、資金の援助などを行い企業の進出を促している。14年に四川省成都市から貴州省貴陽市に本社を移した貨車幇(トラックアライアンス)は、数億米ドルの支援を受けた代表的な企業だ。
貨車幇が提供するトラック版の無料配車サービスのプラットフォーム画面
同社は、アリババと共同開発したプラットフォーム上でトラック版の無料配車サービスを手掛け、中国国内で520万人のトラック運転手が会員になっている。上場した場合の評価額が10億ドル以上になると予想されるユニコーン企業として注目されている。
同社の担当者は「貴州省に来た時の社員数は100人未満だったが、現在は6000人を超えた」と説明。さらに、中国国内で500キロ以上を走る大型トラックの90%をカバーできるようになったことも挙げ、「何か問題があった場合は、政府が一緒になって解決してくれる。移転後のサポートが充実しており、貴州省は起業家にとって温かい場所だ」と話す。
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