国内PC市場の再編
国産PCメーカーの今後は?
富士通、NEC、レノボの
3社体制の行く末
国内PC市場で、再編や新たな参入の動きがみられる。
富士通のPC事業子会社だったFCCLに18年5月、レノボグループが51%を出資。富士通が44%を、日本政策投資銀行が5%をそれぞれ出資する体制で事業を再スタートした。
富士通ブランドのPCの製品ポートフォリオを維持するとともに、川崎の開発部門や、島根富士通のノートPCの生産体制も維持。富士通100%子会社であるデスクトップPCを生産する富士通アイソテックは、FCCLから生産委託し、継続的に生産を続けることになる。
富士通クライアント
コンピューティング
齋藤邦彰
社長
FCCLの齋藤邦彰社長は、「体制はこれまでと変わらない。いままでやってきたことを、これまで以上に、もっと、もっと強化できる」と力を込める。
富士通ではノンコア事業に位置づけられていたPC事業は、レノボグループでは「一丁目一番地」の最優先事業へと昇格。投資も優先される。さらに、富士通単独では、年間360万台だった生産規模が、レノボグループとして約5500万台という桁違いの規模のなかで部品を調達できるため、CPUやOSといった基幹部品などの調達コストの削減は大きなメリットとなる。
そして、特筆できるのは、独立体制としている点だ。
レノボが05年にIBMのPC事業を買収した際には、「ThinkPad」のブランドを維持しながらも、組織はレノボに統合した。NECのPC事業の場合には、ジョイントベンチャーという仕組みにおいて、組織やブランドを残しながらも、人的交流を積極的に行い、生産拠点や物流拠点、サポートなどのリソースを相互活用した一体経営を行っている。だが、今回の富士通との合弁会社は、ブランドだけでなく、開発、生産、営業、サポートなどの全てを独立した形で維持することにし、基本的には、NEC PCおよびレノボ・ジャパンとも、人材や開発、工場などのリソースを共有しない。IBMともNECとも異なるスキームを用いているのだ。齋藤社長が「これまでと変わらない」と語るのも、そうした背景がある。
だが、この体制は、20年までの時限的な措置になる可能性もはらんでいる。
20年までは国内PC市場が活況であり、それまではレノボ・ジャパン、NEC PC、FCCLという3社体制を維持することが、レノボグループとして、市場シェアを最大化するには最適解だ。Windows XPの延長サポート終了時に、各社が品薄を起こす状態になったことを考えても、多くの「弾が打てる」体制にしておいたほうが優位である。
だが、20年以降に、国内PC市場が低迷した際には、明らかに過剰体質になる。Windows XPの延長サポート終了時の状況をあてはめれば、市場は6割にまで縮小する可能性がある。単純計算で3社のうち1社が不要な計算になるというわけだ。その際、FCCLが独立した体制を維持できるかどうかは現時点ではわからない。独立運営のメリットをそれまでに証明できなければ、20年以降の再編の渦に巻き込まれることも想定しなくてはならないだろう。
シャープは東芝のPCブランドで
世界展開を加速
シャープ
戴正呉
社長
一方で、シャープは、東芝グループでPC事業を担う東芝クライアントソリューションの株式の80.1%を、シャープが40億500万円で取得して、子会社化することになる。
シャープの戴正呉社長は、「シャープの管理力とダイナブックの技術力を融合することで、1~2年で黒字化を果たし、投資回収を進める。将来的にはIPOの可能性もある」としている。
黎明期からの老舗PCメーカーでもあったシャープは、09年に発売したノートPC「Mebius PC-NJ70A」を最後にPC市場から撤退していたが、この買収によって、PC市場に再参入することになる。シャープの戴社長は、「シャープのダイナブック」としての投入を匂わせる。
ソニー時代にVAIO事業をリードした経験をもつシャープの石田佳久取締役は、「再参入のためにゼロからはじめると大変だが、東芝は、PC事業をグローバルで展開しており、規模は縮小しても、堅実なビジネスを展開している」と語る。
そして、「シャープは“AIoT”を推進しており、ソフトウェアプラットフォームやサービスだけでなく、白物家電やスマートフォン、テレビといったハードウェアを資産としてもっている。これにPCを加えることで、AIoTを通じてスマートホームの実現につなげることができる」と語る。そこに、他のPCメーカーにはないシャープらしい切り口が生まれることになる。
また、シャープにとって、同社が不得意とするオープンイノベーションに、東芝のPC事業の技術者のノウハウを活用することで、社内の意識改革も促す狙いもあるとする。
シャープは、親会社である鴻海グループのグローバルブランド戦略にとって重要な役割を担う。東芝のPC事業買収は、世界的に通用するダイナブックブランドを活用することで、鴻海グループ全体のブランド戦略を加速することになる。開発力、ブランド力、これまでの実績ということを考えれば、40億円という買収金額は、鴻海グループにとって極めて割安な買い物だったといえるだろう。
海外メーカーも攻勢
市場の動きはますます活発に
そのほか、国内PC市場ではいくつかの動きが出ている。16年に国内PC市場に参入したファーウェイは事業を本格化し、徐々に存在感を増している。プレミアム戦略を推進するなど日本の市場ニーズにあわせた展開が注目される。また、サムスンやLG電子といった韓国勢のPCも取り扱い店舗が増加。ASUSやAcerなどの台湾勢の動きも注目される。さらに、eスポーツの広がりとともに、ゲーミングPCが注目されるなかで、デル、レノボ、日本HPといった外資系PCメーカー、マウスコンピューターやドスパラといった国内PCメーカーが同市場において躍進している。そして、首都圏偏重だったアップルも、大阪、名古屋の大都市圏での積極的なマーケティング活動が功を奏し始めている。
20年までの成長フェーズに向けた動きは、ますます活発化しそうだ。