アイフライテック 張武旭総経理
「日本の市場はとても重要」
アイフライテックは2016年、日本市場に参入し、得意の音声技術を武器に教育分野でビジネスを展開している。アイフライテックの海外市場の開拓を統括する張武旭総経理に、今後の戦略などを聞いた。
張武旭総経理
――なぜアイフライテックは音声技術に着目しているのですか。
張総経理 将来、人々が機械とコミュニケーションをとり、産業を発展させていくためには、音声が一番便利だと考えているからだ。われわれの会社の董事長は、中国科学技術大学(合肥市)で音声技術を研究しており、この領域には高い関心を持っている。われわれは99年に創業して以来、一貫して同じ方向に向かっている。この方針は今後も変わることはないだろう。
――社内の研究開発の体制を教えてください。
張総経理 現在、社員1万2000人のうち、約30%が技術者で、日夜、研究開発を進めている。さらに、中国国内だけでなく、海外の大学や企業とも協業し、技術を磨いている。昔は中国の技術は米国に負けていたが、だんだんレベルアップし、今のわれわれの技術は世界で最高レベルになったと思っている。
――どのような業界に焦点を当ててビジネスを展開していますか。
張総経理 われわれが特に注力しているのは、教育と医療、法律の分野だ。この三つの分野は、社会を発展させるために非常に重要で、AIがとてもいい影響を与えることができる。今後はこれらだけでなく、人と機械がコミュニケーションをとる必要がある分野にどんどん事業を広げていく方針だ。われわれの技術を搭載した端末は、全世界で約17億台になっており、これからもっと増えていくだろう。
――日本の市場についてはどのように考えていますか。
張総経理 日本には16年に進出し、サインウェーブと協力して音声技術を活用した教育コンテンツを提供している。日本は世界でも優れた教育を行っている国で、改革も進んでおり、われわれとしては日本の市場はとても重要だと思っている。ただ、日本を含めて海外市場への進出はまだ始めたばかりで、グローバルの売り上げは全体の1%にもいっていない。これからしっかりと海外市場でビジネスを展開し、グローバルの売上比率を30%ぐらいまで引き上げたいと考えている。
中国のAIはどこまで発展するのか
世界で増す存在感
中国の人工知能は、年々、世界で存在感を増している。2018年7月に中国の清華大学が発表した「中国AI発展報告」によると、世界で中国の論文数が占める割合は、1997年の4.26%から17年は27.68%に拡大。この期間の論文数は米国を上回って世界一だ。中国国内では、AI関連企業が続々と誕生し、開発競争を繰り広げている。
中国上海市の深蘭科技(ディープブルーテクノロジー)は、AIの研究開発を加速させている。AIを活用した自動販売機やロボットを開発し、中国国外への展開にも注力。日本では、小売業向けをきっかけに事業を拡大する考えで、ディープブルーの陳海波CEOは「日本で成功する自信はある」と話した。
ディープブルーの陳CEO
ディープブルーは14年に上海市に設立した。静脈認証で買い物ができる無人コンビニ「テイク・ゴー」を中国で実用化したほか、自動運転で掃除や警備をするロボットなど、幅広い領域でAIを活用した製品を生み出している。現在、米国やオーストラリアに研究センターを構えており、AIを専門とする技術者数は100人以上という。
世界市場では現在、インターネットを通じて17カ国で製品を販売している。最近は欧州進出を強めており、自動運転やスマート製造、データセキュリティーなどで協力することを目的とした実験室をルクセンブルクの国家機関と開設。欧州企業との協業も拡大している。9月13日には、これらの取り組みを披露する式典を上海市の本社で開き、挨拶した陳CEOは「中国と欧州の協力を強化し、AIの領域で新しい局面を切り開いていく」と力を込めた。
静脈認証で買い物ができる無人コンビニ「テイク・ゴー」
日本との関係では、イオンの子会社で施設管理などを手掛けるイオンディライトと、上海市で合弁会社を設立することを今年3月に発表した。BCNの取材に応じた陳CEOは「イオンなどのパートナーと協力し、日本に550万台あるといわれている自動販売機のうち半分を、静脈認証で利用できる当社の製品に切り替えていきたい」と説明した。自動販売機で足場を固めた後は、小売り施設や空港などを対象に、自動運転掃除ロボットの導入拡大などを目指すとした。
自動運転技術活用した警備ロボット
さらに陳CEOは「日本の市場は世界でも大きく、われわれにとっては非常に大事だ」とし、日本での合弁会社の設立について、イオンと相談していることも紹介した。また「われわれは、技術の面で世界をリードしている。そして製品価格が安いのも特徴だ」と自社の強みを強調し、「日本の市場でほかの企業と競争しても、われわれに優位性があると考えている」と述べた。
一方、拡博智能は、マイクロソフト出身者が16年に上海市に設立した企業だ。中国国内外から人材を集め、従業員数は約80人となり、このうち約15%が博士という。
拡博智能の陳麗苹COO
拡博智能は、風力発電施設の点検ソリューションのほか、リテール向けソリューションを展開している。二つの分野に焦点を当てた理由について、創業者の一人、陳麗苹COOは「企業からのニーズがあり、人の役に立てると判断したからだ」と説明する。
風力発電施設の点検ソリューションは、ドローンに搭載したカメラが1~3ミリの傷の写真を撮影し、データをクラウド上で分析して修繕に生かす仕組み。人間が点検をした場合、5人1組で6時間かかっていたが、ソリューションならば15分で完了する。全自動のため危険性がない点も特徴だ。
リテール向けソリューションは、商品棚の写真を撮影するだけで、画像認識技術によって陳列状況の変化を把握し、売れ行きが分析できる。識別率は95%といい、陳COOは「全商品をデジタル化し、オンラインの体験をオフラインに展開することが可能だ」と自信をみせる。
拡博智能は、将来の影響力を期待される企業として、中国工信部の50強リストに入るなど、中国国内で注目が高まっている。風力発電の関係で最近、欧州に進出し、日本のリテール業界にも興味を示している。
陳COOは「AIは人に代わるものではなく、人のサポートをするものであるべきだ」と主張し、「ITで社会に貢献することを目指し、これからも開発を進めていきたい」と意気込んでいる。