コロナ禍の影響でデジタルトランスフォーメーション(DX)の進捗が数年分前倒しになった、などと言われるが、その後のデルタ株の蔓延などを受け、現時点ではコロナ禍以前の社会のあり方に戻る道筋は見えていない。顧客接点やビジネストランザクションをリアルからオンラインへと移行する流れは継続されると考える必要がありそうだ。デジタルな接点の品質競争がビジネスの成果を左右する時代になったことで、改めてAPM(Application Performance Management:アプリケーション性能管理)の重要性も高まっている。
(取材・文/渡邉利和  編集/日高 彰)

難しさを増す性能監視

 APM製品の歴史は長く、さまざまな製品が市場に投入されてきたが、アプリケーションのアーキテクチャーのトレンドの影響を受けるため、同じAPMという名称で呼ばれていても、その内容は時代によって異なっている。メインフレーム時代のアプリケーションのパフォーマンス監視と、クライアント/サーバー時代とでは異なるし、さらに現在ではクラウド環境に対応し、コンテナ化されたアプリケーションや外部APIの活用を前提としたアプリケーションのパフォーマンス監視が必要とされるようになってきている。

 名称としても“APM”という呼び方自体がやや古くなっている印象で、現在では“オブザーバビリティ(可観測性)ソリューション”などと呼ぶ例が増えてきている。現在市場でメジャーな製品としては、「Dynatrace」「AppDynamics」「New Relic」「Datadog」などが挙げられるだろう。

 前述の通り、かつてのメインフレーム1台で全てが完結していた時代や、IPネットワーク上で3階層アーキテクチャーなどに基づいた分散アプリケーションを運用していた時代には、それぞれ対応するアプリケーション性能監視の手法があったが、現在はクラウドやコンテナ、外部APIといった要素を考慮する必要があるため、状況が複雑化している。

 このため、アプリケーションに性能問題などが生じた場合にもどこに原因があるのかすぐには判断できない。APMなどのツールを用いてデータを収集し、的確な分析を行うことの重要性が、これまで以上に高まっていると言うこともできる。

 コロナ禍という想定外の環境変化が2020年から世界を覆っており、およそ1年半が経過した現在においても収束のめどは立っていない。そのため、さまざまな活動をオンラインで実施する流れも変わらず、オンラインでユーザーにどのような体験価値を提供できるかが重要になっている。

 かつて「Webサイトでおおよそ7秒程度待たされるとユーザーは離脱してしまう」と言われていたが、グーグルが17年に発表した分析結果によると、こうした傾向はモバイルユーザーではさらに顕著で、表示完了までに3秒以上かかると53%のユーザーはページを離れるとされている。コロナ禍の影響でビジネスの主戦場と言えるまでに重要性を増したオンラインサービスで競合優位を確保するには、ユーザーが日々体感しているサービス品質を正しく把握し、より良いものに改善していくことが不可欠と言える。そのためのツールとしてAPMの重要性もまた高まっている形だ。