自治体向けデジタルトランスフォーメーション(DX)支援ビジネスが本格化してきた。2021年10月には、DXの基盤となる「ガバメント・クラウド」の対象が決まり、モデルケースとして先行事業に取り組む市町村も発表された。国の自治体DX推進計画では、22年度には行政手続きのオンライン化、25年度には情報システムの標準化・共通化の実現を掲げている。一方、市町村レベルの基礎自治体を中心にDXへの動きは鈍く、目標達成への見通しは明るいとは言えない。ただ、その遅れはITベンダーにとっては大きなチャンスだ。各社は支援専業の子会社を立ち上げたり、ソリューションのパッケージ化を図ったりするなど、商機とにらみ取り組みを加速している。
(取材・文/藤岡 尭)

 総務省が20年12月に発表した自治体DX推進計画は、自治体DXの実現に向け、手続きのオンライン化やシステムの標準化・共通化、AI・RPAの利用促進、テレワークの推進など六つの重点取組事項が盛り込まれている。オンライン化やシステムの標準・共通化に関しては、国が策定する仕様に沿う形となるが、各自治体の業務実態に即した形でのシステム移行が必要となり、全庁的に業務や既存システムの変更を行うなど負担も少なくない。AI・RPAの利用、テレワーク推進についても、総務省はガイドブックや手引きによって、導入の進め方を示しているものの、ノウハウが乏しい自治体が単独で推進するには限界がある。

 民間研究機関のデジタルトランスフォーメーション研究所が21年末に公表した調査結果によると、回答した全国280の自治体のうち、8割がDXに未着手の状況で、特に基礎自治体はその傾向が強く出ているという。同研究所では先行する自治体と遅れている自治体の差は、トップのコミットメントにあると指摘。加えて「技術に精通した人材」と「業務に精通した人材」の融合によるDX推進、国や他の自治体と共同で構築可能な施策を指す「非競争領域」における標準化・共通化などは、先進自治体でも広がっておらず、自治体単独ではなく、民間企業などからの支援が必要な可能性があるともまとめている。

NEC
官公庁向けメニューを体系化

 自治体DX市場の立ち上がりを前に、ITベンダーは積極的に手を打ち始めた。NECは1月19日、行政のデジタル化支援に向け、クラウド環境への移行に関するソリューションメニューを「官公庁向けDXソリューション」として体系化し、提供を開始した。四つのソリューション群と連携するセキュリティソリューションで構成され、自治体の目的やセキュリティ要件などに合わせ、短期間でのクラウド移行・運用、アプリケーション開発などを支援する。これまでの行政におけるクラウド構築事例や運用ノウハウなどを、オファリング化して提供する方針だ。
 

 第1弾として、既存システムをクラウド環境へ移行するための「クラウドインテグレーションソリューション」、ネットワークやプラットフォームを提供する「プラットフォームソリューション」、クラウド移行を支援する「セキュリティソリューション」を提供。今後、アジャイル開発やシステム開発の内製化を支援する「アプリケーション開発ソリューション」や、職員の新しいワークスタイルの実現に向けた「業務改革・ビジネス変革ソリューション」のメニューを順次追加していく。

 自社提案で活用するだけでなく、他のSIerにも外販する。説明会でNECの中俣力執行役員常務は「イチから(システムを)つくるのではなく、すでにあるものをうまく使って試していただきたい。そういうビジネスのボリュームを増やしたい」と説明した。
 
NEC 中俣 力 常務

 オファリングメニュー以外にも、業務標準化に対応したクラウドサービスやハイブリッドクラウドを実現するための基盤、ハイブリッドクラウド上でのデータ連携を円滑化させるAPI連携用のプラットフォームなども投入していくとした。またNECのグループ会社であるKMD(デンマーク)が現地でのサービス展開で得た知見を日本国内で活用していく姿勢も強調した。デンマークでは官民で共通的に利用する基礎データとの連携の仕組みが整備されており、KMDは連携機能を担うプラットフォームを構築した実績がある。

 25年度の売上目標では2000億円を掲げる。現時点での行政向けデジタルサービスと同規模だが、徐々にハードウェア領域の減少が見込まれており、サービス面の伸長で相殺していく。さらに行政に隣接する医療や教育などの分野の拡大も追い風としたい考えだ。