ハイパーコンバージドインフラ(HCI)市場の開拓者、リーダーとしての地位を盤石なものにしたニュータニックス(Nutanix)は、近年HCI製品の販売から、複数のITインフラの統合的な管理運用を可能とする基盤の提供へとビジネス領域を拡大している。この方針を推進するため、今年2月には製品ポートフォリオの再編も行った。ニュータニックス・ジャパンおよび米本社CEOへの取材を通じて、同社が今注力する戦略を明らかにする。
(取材・文/日高 彰)
ニュータニックスは2月16日、それまで10以上にわたっていた製品ポートフォリオを、五つの製品群に集約した。
ポートフォリオ再編後に新たに提供が開始された製品は、HCI(一般的にはハイパーコンバージドインフラの略だが、同社では近年“ハイブリッドクラウドインフラ”を指すとしている)を実現する「クラウドインフラストラクチャー」、複数のクラウドを一元管理する「クラウドマネージャー」、そしてストレージ機能の「ユニファイドストレージ」、データベースの管理を自動化する「データベースサービス」、仮想デスクトップを提供する「エンドユーザーコンピューティング」である。
前の2製品がITインフラ自体の構築・管理を目的としているのに対し、後の3製品はデータ管理や仮想デスクトップなど、ユーザーが具体的に求める機能を提供する、ソリューション色の強いものとなっているのが特徴だ。
同社はHCI製品の販売にとどまらず、オンプレミスからパブリッククラウドまで統一した管理・運用が行えるプラットフォームの提供にビジネス領域を拡大し、さらに、前述のようなソリューション製品の提案に力を入れており、その戦略に沿ったポートフォリオ集約となる。
ニュータニックス・ジャパンの調査(下グラフ参照)によると、国内の回答企業のうち実に86%が、過去1年の間に少なくとも一つのアプリケーションを別のインフラへ移動した経験があるという。その理由としては、容量に関する懸念や、SoE(System of Engagement)の構築、つまりデータ連携や分析を目的としたものが、特にグローバルに比べて日本企業では高かったという。「アプリケーションの可搬性」は近年のITインフラに求められることの多い要件となっているが、実際にユーザー企業がアプリケーションの移動を迫られる場面も多いことがうかがえる。複数の環境を統合管理したいというニーズは今後さらに高まると予想される。
同社ではパートナープログラムの強化のほか、各国のIaaS事業者との連携などを通じて、HCIそのものよりも、クラウドの運用やデータの管理にまつわる課題を解決できるソリューションとしての訴求を強化していく方針だ。
米本社CEO
「サブスク型で大きく成長する」
創業者のディラージ・パンディ氏の後を継いで、元米ヴイエムウェア幹部のラジブ・ラマスワミ氏が米ニュータニックスの新CEOに就任して約1年が経過した。ラマスワミCEOは本紙のインタビューに答え、柔軟性が高くシンプルであることが同社製品の差別化要素になっており、サブスクリプション型への転換の成功によって事業を安定成長させる基盤を確立できたと説明した。
米ニュータニックス ラジブ・ラマスワミ プレジデント兼CEO
――新たな活躍の場としてニュータニックスを選んだ理由は何か。
前職のヴイエムウェアに入社する前から当社創業者のパンディ氏のことは知っており、ニュータニックスのプラットフォームが非常に優れていること、顧客からの評価が高いことはよく認識していた。ただ、ニュータニックスはHCIで地位を確立した企業だが、ハイブリッド/マルチクラウドのプラットフォームとして成長させることで、数百億ドル規模のビジネスへとさらに拡大できる機会がある。そこで自分のスキルが貢献できると考えた。
――入社の時点で、さらなる成長に向けての課題は何だと考えていたのか。
第一に、当社は当時ビジネスモデルの大きな移行期にあった。それまでソフトウェアカンパニーだったものが、サブスクリプション型の会社に移行しようという大事な時期を迎えていた。二つめは、HCIのリーダー格の企業であった当社を、ハイブリッド/マルチクラウドのためのプラットフォームを提供する、新たなリーダーに変えていくという課題だ。第三の課題はパートナーシップだ。創業以来当初の10年ほどは、ほぼ単独で市場に攻勢をかけていたが、戦略的なパートナーシップを拡大し、パートナーと市場を攻めていくという方向転換が必要だった。四番めは財務モデルの確立だ。会社が何をし、どうなっていくのかを成長および収益性という観点から、投資家たちに明確な形で伝えられる財務モデルを作る必要があった。
――企業のITインフラが抱えている最も大きな課題は何か。
適切なアプリケーションを適切なクラウドで実行するための意思決定が課題となっている。今や世界中のあらゆる企業がデジタル化を進めており、企業はよりアジャイルで、クラウド化したITインフラをますます求めるようになっている。リモートワークの従業員がより効率的に働くにはどうすればいいかという観点も重要になっている。そのような背景から、各企業はどのような形でパブリッククラウドを活用しようかを考えている。
しかしクラウドというのは「目的地」ではなく、一つの運用モデルであるということを当社は申し上げたい。企業は、自社のデータセンター、拠点のエッジ、複数のパブリッククラウドなど、いろいろな場所でさまざまなアプリケーションを実行しているが、これらの環境をいかにスマートな形で活用するかが、大きな関心事となっている。
――単にHCI製品を提供するだけではなく、ハイブリッド/マルチクラウドのプラットフォームを提供するということだが、同じような戦略は多くの大手IT企業が掲げている。ニュータニックスの強みは何か。
差別化要素を四つ挙げたい。まず、なんといってもデータの管理に長けていることだ。構造化/非構造化データ、ブロック/ファイル/オブジェクトストレージのいずれにも対応可能で、複数クラウドの横断的な管理もできる。次に、製品が非常にシンプルなことだ。エンタープライズソフトウェアというものは、とかく非常に複雑なものになりがちだが、ニュータニックスの場合は長時間の教育や大勢の人を動員することなく、ワンクリックで何でもできるような使い勝手を提供することにフォーカスしている。
第三に、大きな柔軟性と豊かな選択肢を提供しているという点だ。お客様はインフラとしてどんなハードウェアを使うか、どのパブリッククラウドを使うか、自由に選ぶことができる。ハイパーバイザーも同様だ。そして、サブスクリプションも完全なポータビリティを確保しており、例えばオンプレミスからパブリッククラウドへも、異なるハードウェアに乗り換えるときにも、どこへでも持って行くことができる。ライセンス販売型からサブスクリプション型になり、必要な期間だけ契約できるので、お客様がそこに長期的に閉じ込められるという、いわゆるロックインは起こらない。
最後にぜひ強調したいのは、顧客満足、顧客体験にフォーカスしていることだ。ニュータニックスが従来から大きく成長し、2万社以上のユーザーを持ち、また1四半期ごとに17%の顧客数の成長を見ている中でも、NPS(ネットプロモータースコア)は実に90以上を維持している。これは業界で類を見ない高水準だ。
――かつてニュータニックスはアプライアンス製品を販売していたが、その後サードパーティーのハードウェアと組み合わせるソフトウェア製品にシフトした。デルやHPEといった、HCI市場ではライバルとなる企業とも組んでいるが、彼らとのビジネスは好調か。
デルはもちろん、HCIの分野で強力な競争相手である「VxRail」という製品を持っている。ただ、デルのサーバーのユーザーでもニュータニックスを使いたいというケースは多々あり、デルも自社のプラットフォーム上でニュータニックスのソフトウェアをサポートすることについては喜んでやってくれている。なので、彼らとのパートナーシップは理にかなったものだと言える。
HPEは、私たちのパートナーシップを一緒に成長させてくれた。確かに彼らも独自のソフトウェアを用意しているが、その一方で当社はHCIの分野で非常に競争力のある製品を提供しており、HPEも当社と組みたいという意向を持ってくれている。直近1年間でも彼らとのパートナーシップはさらに拡大することができた。
――さらなる成長に向けた販売戦略は。
一つは、新しいお客様を獲得すると同時に、既存のお客様に対してアップセルとなる提案を行っていくこと。もう一つは、サブスクリプションを契約されたお客様に、いかに製品を実際に使用していただくか、そして当初の契約期間が満了するときに、いかに契約を更新していただくかだ。あらゆるサブスクリプション型の企業は、これら二つのエンジンを同時に回して走らなければならないが、きちんと状況に適応して、効果的に活動する営業体制を構築することができた。これには、適切な情報システムを持って、営業部隊が正しい顧客情報をいつも入手できるようにすることも含まれる。お客様の成功を担保し、お客様が当社の製品を実際に消費していただけるサイクルを確立できた。サブスクリプションの契約更新がどんどん押し寄せてくる時期に差し掛かろうとしており、まさにこれから成果が大きく実ると考えている。