Special Feature
成長を遂げる 国産セキュリティベンダー ニーズに応える開発環境とサポートで価値提供
2022/10/03 09:00
週刊BCN 2022年10月03日vol.1940掲載
国内のセキュリティ市場は、外資ベンダーが強さを発揮しており、国産ベンダーは苦戦するケースが目立っている。だが、この厳しい市場環境においても成長を遂げる国産ベンダーは存在する。彼らは、高品質な製品を提供するとともに、国内の環境やユーザーの要望に迅速に対応する開発体制や充実したサポートなど国産ベンダーだからこそ提供できる価値を示すことで、顧客から信頼を勝ち得ている。
(取材・文/岩田晃久)
デジタルアーツ
ウェブセキュリティ製品「i-FILTER」とメールセキュリティ製品「m-FILTER」を主力商材としているデジタルアーツの業績は好調に推移している。テレワークの拡大に伴い、企業での利用が進んだことに加え、「GIGAスクール構想」などにより公共分野での案件も大幅に増加。2022年3月期の連結売上高は前年度比32.6%増の90億5100万円で過去最高となった。
i-FILTERは、URLフィルタリングをはじめ情報漏えいリスクのあるWebサービスの利用の制御や脅威サイトへのアクセスブロック、独自の高速Webキャッシュといった機能を提供。企業のセキュリティポリシーに合わせた柔軟な設定も可能だとしている。
新型コロナ禍で企業の働き方が変化したことや、GIGAスクール構想や自治体のクラウド化により、Webセキュリティ強化を図る組織が多く、利用が拡大した。i-FILTERを担当する同社マーケティング部の内山智・プロダクトマネージャーは「当社は国産のセキュリティベンダーとして長い歴史があり、国内企業の文化を理解した製品を提供している。お客様から安心して製品を利用できるという声が多い」と胸を張る。
デジタルアーツ 内山 智 プロダクトマネージャー
一方のm-FILTERは、メールフィルタリングやアーカイブ、誤送信対策、添付ファイルの無害化といった総合的なメールセキュリティ機能を搭載している。m-FILTERを担当するマーケティング部の萩野谷耕太郎・プロダクトマネージャーは「PPAP(添付ファイルのZip暗号化送信)の廃止などメールセキュリティを強化する企業が増えているのに加えて、Emotet(エモテット)の脅威が再び増していることで、m-FILTERの需要は高まっている」と説明する。出口対策はi-FILTER、入り口対策をm-FILTERといった形で両製品を利用する企業が多いのも特徴としている。
デジタルアーツ 萩野谷耕太郎 プロダクトマネージャー
同社の強みとしては、国内企業の環境や要望に合わせた製品開発を行っている点がある。オンプレミス版、クラウド版の双方を用意していることに加え、随時、機能拡張を実施している。直近では、両製品のオプションとして、アンチウイルス・サンドボックス機能「Anti-Virus & Sandbox」やSIEM製品「Splunk」との連携機能を追加した。これらオプション機能は、リリース直後から利用するユーザーが多いという。そのほかにも、学校向けにi-FILTERのGIGAスクール版の提供なども行っている。
UIの改善やサポートサービスの充実にも注力しており、内山プロダクトマネージャーは「UIには、お客様から日々、さまざまな要望が寄せられることから、迅速に対応し改良を重ねている」と話す。
同社は、多くのパートナーを有しており、全国をカバーする販売網を構築。パートナーごとに、必要な製品情報などをまとめた動画を提供するなど支援の強化も図っている。
5月に開催した「パートナーミーティング2022」で、同社の道具登志夫社長は、幅広いセキュリティソリューションを提供する「総合セキュリティベンダー」に成長させていく考えを示した。今後は、製品の拡充や機能強化を図り、顧客獲得を進め、25年3月期に連結売上高130億円を目指すとしている。
FFRIセキュリティ
2010年代の国内の法人向けエンドポイントセキュリティ市場は、トレンドマイクロ(本社は日本だが、創業は米国)、米Symantec(現Broadcom)、米McAfee(現Trellix)といった企業が高いシェアを獲得、そこに露Kaspersky、スロバキアのESET、フィンランドのF-Secure(現WithSecure)などが追随し、外資ベンダーが圧倒的に強い市場となった。近年、新興ベンダーとして急成長を遂げているのも、米Cybereasonや米CrowdStrikeといった外資ベンダーとなっている。この市場の中で、存在感を示している国産ベンダーがエンドポイントセキュリティ製品「FFRI yarai」(yarai)を提供するFFRIセキュリティ(FFRI)だ。
同社は09年にyaraiを発売した。当時のアンチウイルス製品はシグネチャベースが大半であったが、yaraiは、独自エンジンによる検知と防御を提供。シグネチャに頼らない次世代EPP(EndPoint Protection)製品として認知度が拡大し、企業や公共での採用が大幅に進んだ。
現在のエンドポイントセキュリティ市場では、ほとんどのベンダーが次世代型EPPとEDR(Endpoint Detection and Response)をラインアップするなど競争が激化している。FFRIは、NECやSky、NTTアドバンステクノロジなどと協力し、地方自治体へ向けた営業活動をしたり、OEM提供による中小企業の開拓といった取り組みを実施したりして顧客獲得を進めている。
FFRIセキュリティ 鵜飼裕司 社長
そのほかにも「FFRIセキュリティ マネージド・サービス」を用意し、ベンダーによる運用監視サービスを提供することで他のベンダーとの差別化を図っている。同社の鵜飼裕司社長は「セキュリティ人材が不足している中堅中小企業での利用が進んでいる。パートナーからも手離れのいいサービスだという声が多い」と手ごたえを語る。今後も、パートナーの拡充などに取り組み、新規顧客獲得を目指す。
同社は、23年3月期~26年3月期の中期経営計画で「サイバーセキュリティで安全保障を支える」との目標を示している。鵜飼社長は、国家の関与が疑われるサイバー攻撃による情報窃取や通信・重要インフラへの妨害、製品・サービスの製造・流通の際に不正なプログラムやファームウェアの組み込み・改ざんが行われるサプライチェーンリスクの増加といったリスクを挙げ「サイバー領域における安全保障は取り組まなければならない重要なテーマだ」と力を込める。
安全保障を実現するための課題については、日本のセキュリティ産業が海外技術・製品に依存しており、その結果、「自国のセキュリティ問題を自国で解決できない」「データが集まらず研究開発が進まない」といった問題を抱えていることだとした。
この課題を解決するため、同社は20年3月に「横須賀ナショナルセキュリティR&Dセンター」を開設。同センターでは、セキュリティコア技術の開発やサイバー攻撃の研究などに取り組んでいるほか、研究開発戦略専門調査会(NISC)など政府機関との連携にも注力しているとした。今後はエンジニアの採用を強化するなどして組織体制の強化を図る。鵜飼社長は「研究開発を進め、技術や情報を提供することで日本のセキュリティを支え、安全保障の実現に寄与したい」と意気込む。セキュアスカイ・テクノロジー
ビジネスにおいてWebアプリケーションの利用が当たり前となり、年々、新たなWebアプリケーションが誕生している。一方で、Webアプリケーションはぜい弱性が多いことが課題とされており、そのぜい弱性を突いたサイバー攻撃は後を絶たない。
Webアプリケーションのセキュリティ対策として、一般的に用いられるのがWebアプリケーションファイアウォール(WAF)である。だが、WAFはオンプレミスが主流であり、シグネチャの設定が難しいなど運用負荷の高い製品とされてきた。実際、オンプレミスのWAFを導入したものの、シグネチャの設定ができておらず、サイバー攻撃の被害に遭ったケースも少なくない。
このような課題を解決するのがクラウド型WAFである。クラウド型WAFの最大のメリットはユーザーがシグニチャの設定を行うことなく、最新の状態のWAFを自動で利用できることだ。実際、オンプレミスのWAFから切り替えるユーザーも急増しており、市場も年々、拡大している。
セキュアスカイ・テクノロジー(SST)は、クラウド型WAF「Scutum(スキュータム)」を09年から提供している。アイ・ティ・アール(ITR)やデロイトトーマツミック経済研究所といった調査会社の発表では、長年、クラウド型WAF市場でトップシェア(売上高)を獲得しており、市場をけん引してきた存在だ。
Scutumは発売当初から、導入が容易なことや安価なことが支持され利用は拡大してきた。近年は、クラウド型WAFの専業ベンダーの増加やパブリッククラウドベンダー、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)ベンダーがオプションで提供するなど、市場環境は変化しているが、好調に顧客獲得が進んでるという。
その要因について、同社の大木元代表取締役は「防御性能の高さを評価してくれる企業が多い」と述べる。Scutumでは、シグネチャに加えて、データ解析手法の一種で複数の因果関係を推論できる「ベイジアンネットワーク」を基にしたAI技術を活用しており、検知率の向上とともに、誤検知を大幅に減らすことができるとしている。外資ベンダーの製品と比較した際、管理画面が分かりやすいことや、国内で運用している点なども支持されているという。
企業のマルチクラウド化が進んでいることもScutumの売上増につながっている。各パブリッククラウドもWAFを提供しているが、各クラウド環境で異なるWAFを導入すると、当然、ルール設定が違うこともあり運用負荷が大きくなる。Scutumは環境を問わず導入でき統一したセキュリティルールを実装できるため、マルチクラウド環境の企業での導入が増加傾向にあるとしている。
9月には、政府運営のwebサイトにDDoS攻撃が行われサービスが停止する事態が起きた。SSTではScutumのオプションとしてDDoS対策を提供しており、事件後は、同オプションの利用を検討するユーザーが増加した。
セキュアスカイ・テクノロジー 大木 元 代表取締役
Scutumの売り上げの7割は間接販売だ。SIerやクラウドマネージドサービス事業者が中心で、それらパートナーに向けた勉強会を定期的に実施している。「以前は、WAFをイチから説明するケースも多々あったが、近年は、WAFの認知度も高まったこともあり他社のサービスと何が違うのかを聞かれるケースが増えた」(大木代表取締役)といい、パートナーのクラウド型WAFへの関心は高まっている。
大木代表取締役は「お客様から自社の製品以外のセキュリティ相談を受けるケースが増えているため、現在は、簡易的なコンサルティングも行っている。そうしたこともあり、今後は他のセキュリティベンダーとのアライアンスの強化などを図り、自社でWebに関わるセキュリティ対策を包括的に提案できる体制を構築したい」と語る。
(取材・文/岩田晃久)

デジタルアーツ
22年3月期は過去最高の売上高
ウェブセキュリティ製品「i-FILTER」とメールセキュリティ製品「m-FILTER」を主力商材としているデジタルアーツの業績は好調に推移している。テレワークの拡大に伴い、企業での利用が進んだことに加え、「GIGAスクール構想」などにより公共分野での案件も大幅に増加。2022年3月期の連結売上高は前年度比32.6%増の90億5100万円で過去最高となった。i-FILTERは、URLフィルタリングをはじめ情報漏えいリスクのあるWebサービスの利用の制御や脅威サイトへのアクセスブロック、独自の高速Webキャッシュといった機能を提供。企業のセキュリティポリシーに合わせた柔軟な設定も可能だとしている。
新型コロナ禍で企業の働き方が変化したことや、GIGAスクール構想や自治体のクラウド化により、Webセキュリティ強化を図る組織が多く、利用が拡大した。i-FILTERを担当する同社マーケティング部の内山智・プロダクトマネージャーは「当社は国産のセキュリティベンダーとして長い歴史があり、国内企業の文化を理解した製品を提供している。お客様から安心して製品を利用できるという声が多い」と胸を張る。
一方のm-FILTERは、メールフィルタリングやアーカイブ、誤送信対策、添付ファイルの無害化といった総合的なメールセキュリティ機能を搭載している。m-FILTERを担当するマーケティング部の萩野谷耕太郎・プロダクトマネージャーは「PPAP(添付ファイルのZip暗号化送信)の廃止などメールセキュリティを強化する企業が増えているのに加えて、Emotet(エモテット)の脅威が再び増していることで、m-FILTERの需要は高まっている」と説明する。出口対策はi-FILTER、入り口対策をm-FILTERといった形で両製品を利用する企業が多いのも特徴としている。
同社の強みとしては、国内企業の環境や要望に合わせた製品開発を行っている点がある。オンプレミス版、クラウド版の双方を用意していることに加え、随時、機能拡張を実施している。直近では、両製品のオプションとして、アンチウイルス・サンドボックス機能「Anti-Virus & Sandbox」やSIEM製品「Splunk」との連携機能を追加した。これらオプション機能は、リリース直後から利用するユーザーが多いという。そのほかにも、学校向けにi-FILTERのGIGAスクール版の提供なども行っている。
UIの改善やサポートサービスの充実にも注力しており、内山プロダクトマネージャーは「UIには、お客様から日々、さまざまな要望が寄せられることから、迅速に対応し改良を重ねている」と話す。
同社は、多くのパートナーを有しており、全国をカバーする販売網を構築。パートナーごとに、必要な製品情報などをまとめた動画を提供するなど支援の強化も図っている。
5月に開催した「パートナーミーティング2022」で、同社の道具登志夫社長は、幅広いセキュリティソリューションを提供する「総合セキュリティベンダー」に成長させていく考えを示した。今後は、製品の拡充や機能強化を図り、顧客獲得を進め、25年3月期に連結売上高130億円を目指すとしている。
FFRIセキュリティ
安全保障への取り組み強化
2010年代の国内の法人向けエンドポイントセキュリティ市場は、トレンドマイクロ(本社は日本だが、創業は米国)、米Symantec(現Broadcom)、米McAfee(現Trellix)といった企業が高いシェアを獲得、そこに露Kaspersky、スロバキアのESET、フィンランドのF-Secure(現WithSecure)などが追随し、外資ベンダーが圧倒的に強い市場となった。近年、新興ベンダーとして急成長を遂げているのも、米Cybereasonや米CrowdStrikeといった外資ベンダーとなっている。この市場の中で、存在感を示している国産ベンダーがエンドポイントセキュリティ製品「FFRI yarai」(yarai)を提供するFFRIセキュリティ(FFRI)だ。同社は09年にyaraiを発売した。当時のアンチウイルス製品はシグネチャベースが大半であったが、yaraiは、独自エンジンによる検知と防御を提供。シグネチャに頼らない次世代EPP(EndPoint Protection)製品として認知度が拡大し、企業や公共での採用が大幅に進んだ。
現在のエンドポイントセキュリティ市場では、ほとんどのベンダーが次世代型EPPとEDR(Endpoint Detection and Response)をラインアップするなど競争が激化している。FFRIは、NECやSky、NTTアドバンステクノロジなどと協力し、地方自治体へ向けた営業活動をしたり、OEM提供による中小企業の開拓といった取り組みを実施したりして顧客獲得を進めている。
そのほかにも「FFRIセキュリティ マネージド・サービス」を用意し、ベンダーによる運用監視サービスを提供することで他のベンダーとの差別化を図っている。同社の鵜飼裕司社長は「セキュリティ人材が不足している中堅中小企業での利用が進んでいる。パートナーからも手離れのいいサービスだという声が多い」と手ごたえを語る。今後も、パートナーの拡充などに取り組み、新規顧客獲得を目指す。
同社は、23年3月期~26年3月期の中期経営計画で「サイバーセキュリティで安全保障を支える」との目標を示している。鵜飼社長は、国家の関与が疑われるサイバー攻撃による情報窃取や通信・重要インフラへの妨害、製品・サービスの製造・流通の際に不正なプログラムやファームウェアの組み込み・改ざんが行われるサプライチェーンリスクの増加といったリスクを挙げ「サイバー領域における安全保障は取り組まなければならない重要なテーマだ」と力を込める。
安全保障を実現するための課題については、日本のセキュリティ産業が海外技術・製品に依存しており、その結果、「自国のセキュリティ問題を自国で解決できない」「データが集まらず研究開発が進まない」といった問題を抱えていることだとした。
この課題を解決するため、同社は20年3月に「横須賀ナショナルセキュリティR&Dセンター」を開設。同センターでは、セキュリティコア技術の開発やサイバー攻撃の研究などに取り組んでいるほか、研究開発戦略専門調査会(NISC)など政府機関との連携にも注力しているとした。今後はエンジニアの採用を強化するなどして組織体制の強化を図る。鵜飼社長は「研究開発を進め、技術や情報を提供することで日本のセキュリティを支え、安全保障の実現に寄与したい」と意気込む。
セキュアスカイ・テクノロジー
クラウド型WAF市場をけん引
ビジネスにおいてWebアプリケーションの利用が当たり前となり、年々、新たなWebアプリケーションが誕生している。一方で、Webアプリケーションはぜい弱性が多いことが課題とされており、そのぜい弱性を突いたサイバー攻撃は後を絶たない。Webアプリケーションのセキュリティ対策として、一般的に用いられるのがWebアプリケーションファイアウォール(WAF)である。だが、WAFはオンプレミスが主流であり、シグネチャの設定が難しいなど運用負荷の高い製品とされてきた。実際、オンプレミスのWAFを導入したものの、シグネチャの設定ができておらず、サイバー攻撃の被害に遭ったケースも少なくない。
このような課題を解決するのがクラウド型WAFである。クラウド型WAFの最大のメリットはユーザーがシグニチャの設定を行うことなく、最新の状態のWAFを自動で利用できることだ。実際、オンプレミスのWAFから切り替えるユーザーも急増しており、市場も年々、拡大している。
セキュアスカイ・テクノロジー(SST)は、クラウド型WAF「Scutum(スキュータム)」を09年から提供している。アイ・ティ・アール(ITR)やデロイトトーマツミック経済研究所といった調査会社の発表では、長年、クラウド型WAF市場でトップシェア(売上高)を獲得しており、市場をけん引してきた存在だ。
Scutumは発売当初から、導入が容易なことや安価なことが支持され利用は拡大してきた。近年は、クラウド型WAFの専業ベンダーの増加やパブリッククラウドベンダー、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)ベンダーがオプションで提供するなど、市場環境は変化しているが、好調に顧客獲得が進んでるという。
その要因について、同社の大木元代表取締役は「防御性能の高さを評価してくれる企業が多い」と述べる。Scutumでは、シグネチャに加えて、データ解析手法の一種で複数の因果関係を推論できる「ベイジアンネットワーク」を基にしたAI技術を活用しており、検知率の向上とともに、誤検知を大幅に減らすことができるとしている。外資ベンダーの製品と比較した際、管理画面が分かりやすいことや、国内で運用している点なども支持されているという。
企業のマルチクラウド化が進んでいることもScutumの売上増につながっている。各パブリッククラウドもWAFを提供しているが、各クラウド環境で異なるWAFを導入すると、当然、ルール設定が違うこともあり運用負荷が大きくなる。Scutumは環境を問わず導入でき統一したセキュリティルールを実装できるため、マルチクラウド環境の企業での導入が増加傾向にあるとしている。
9月には、政府運営のwebサイトにDDoS攻撃が行われサービスが停止する事態が起きた。SSTではScutumのオプションとしてDDoS対策を提供しており、事件後は、同オプションの利用を検討するユーザーが増加した。
Scutumの売り上げの7割は間接販売だ。SIerやクラウドマネージドサービス事業者が中心で、それらパートナーに向けた勉強会を定期的に実施している。「以前は、WAFをイチから説明するケースも多々あったが、近年は、WAFの認知度も高まったこともあり他社のサービスと何が違うのかを聞かれるケースが増えた」(大木代表取締役)といい、パートナーのクラウド型WAFへの関心は高まっている。
大木代表取締役は「お客様から自社の製品以外のセキュリティ相談を受けるケースが増えているため、現在は、簡易的なコンサルティングも行っている。そうしたこともあり、今後は他のセキュリティベンダーとのアライアンスの強化などを図り、自社でWebに関わるセキュリティ対策を包括的に提案できる体制を構築したい」と語る。
国内のセキュリティ市場は、外資ベンダーが強さを発揮しており、国産ベンダーは苦戦するケースが目立っている。だが、この厳しい市場環境においても成長を遂げる国産ベンダーは存在する。彼らは、高品質な製品を提供するとともに、国内の環境やユーザーの要望に迅速に対応する開発体制や充実したサポートなど国産ベンダーだからこそ提供できる価値を示すことで、顧客から信頼を勝ち得ている。
(取材・文/岩田晃久)
デジタルアーツ
ウェブセキュリティ製品「i-FILTER」とメールセキュリティ製品「m-FILTER」を主力商材としているデジタルアーツの業績は好調に推移している。テレワークの拡大に伴い、企業での利用が進んだことに加え、「GIGAスクール構想」などにより公共分野での案件も大幅に増加。2022年3月期の連結売上高は前年度比32.6%増の90億5100万円で過去最高となった。
i-FILTERは、URLフィルタリングをはじめ情報漏えいリスクのあるWebサービスの利用の制御や脅威サイトへのアクセスブロック、独自の高速Webキャッシュといった機能を提供。企業のセキュリティポリシーに合わせた柔軟な設定も可能だとしている。
新型コロナ禍で企業の働き方が変化したことや、GIGAスクール構想や自治体のクラウド化により、Webセキュリティ強化を図る組織が多く、利用が拡大した。i-FILTERを担当する同社マーケティング部の内山智・プロダクトマネージャーは「当社は国産のセキュリティベンダーとして長い歴史があり、国内企業の文化を理解した製品を提供している。お客様から安心して製品を利用できるという声が多い」と胸を張る。
デジタルアーツ 内山 智 プロダクトマネージャー
一方のm-FILTERは、メールフィルタリングやアーカイブ、誤送信対策、添付ファイルの無害化といった総合的なメールセキュリティ機能を搭載している。m-FILTERを担当するマーケティング部の萩野谷耕太郎・プロダクトマネージャーは「PPAP(添付ファイルのZip暗号化送信)の廃止などメールセキュリティを強化する企業が増えているのに加えて、Emotet(エモテット)の脅威が再び増していることで、m-FILTERの需要は高まっている」と説明する。出口対策はi-FILTER、入り口対策をm-FILTERといった形で両製品を利用する企業が多いのも特徴としている。
デジタルアーツ 萩野谷耕太郎 プロダクトマネージャー
同社の強みとしては、国内企業の環境や要望に合わせた製品開発を行っている点がある。オンプレミス版、クラウド版の双方を用意していることに加え、随時、機能拡張を実施している。直近では、両製品のオプションとして、アンチウイルス・サンドボックス機能「Anti-Virus & Sandbox」やSIEM製品「Splunk」との連携機能を追加した。これらオプション機能は、リリース直後から利用するユーザーが多いという。そのほかにも、学校向けにi-FILTERのGIGAスクール版の提供なども行っている。
UIの改善やサポートサービスの充実にも注力しており、内山プロダクトマネージャーは「UIには、お客様から日々、さまざまな要望が寄せられることから、迅速に対応し改良を重ねている」と話す。
同社は、多くのパートナーを有しており、全国をカバーする販売網を構築。パートナーごとに、必要な製品情報などをまとめた動画を提供するなど支援の強化も図っている。
5月に開催した「パートナーミーティング2022」で、同社の道具登志夫社長は、幅広いセキュリティソリューションを提供する「総合セキュリティベンダー」に成長させていく考えを示した。今後は、製品の拡充や機能強化を図り、顧客獲得を進め、25年3月期に連結売上高130億円を目指すとしている。
(取材・文/岩田晃久)

デジタルアーツ
22年3月期は過去最高の売上高
ウェブセキュリティ製品「i-FILTER」とメールセキュリティ製品「m-FILTER」を主力商材としているデジタルアーツの業績は好調に推移している。テレワークの拡大に伴い、企業での利用が進んだことに加え、「GIGAスクール構想」などにより公共分野での案件も大幅に増加。2022年3月期の連結売上高は前年度比32.6%増の90億5100万円で過去最高となった。i-FILTERは、URLフィルタリングをはじめ情報漏えいリスクのあるWebサービスの利用の制御や脅威サイトへのアクセスブロック、独自の高速Webキャッシュといった機能を提供。企業のセキュリティポリシーに合わせた柔軟な設定も可能だとしている。
新型コロナ禍で企業の働き方が変化したことや、GIGAスクール構想や自治体のクラウド化により、Webセキュリティ強化を図る組織が多く、利用が拡大した。i-FILTERを担当する同社マーケティング部の内山智・プロダクトマネージャーは「当社は国産のセキュリティベンダーとして長い歴史があり、国内企業の文化を理解した製品を提供している。お客様から安心して製品を利用できるという声が多い」と胸を張る。
一方のm-FILTERは、メールフィルタリングやアーカイブ、誤送信対策、添付ファイルの無害化といった総合的なメールセキュリティ機能を搭載している。m-FILTERを担当するマーケティング部の萩野谷耕太郎・プロダクトマネージャーは「PPAP(添付ファイルのZip暗号化送信)の廃止などメールセキュリティを強化する企業が増えているのに加えて、Emotet(エモテット)の脅威が再び増していることで、m-FILTERの需要は高まっている」と説明する。出口対策はi-FILTER、入り口対策をm-FILTERといった形で両製品を利用する企業が多いのも特徴としている。
同社の強みとしては、国内企業の環境や要望に合わせた製品開発を行っている点がある。オンプレミス版、クラウド版の双方を用意していることに加え、随時、機能拡張を実施している。直近では、両製品のオプションとして、アンチウイルス・サンドボックス機能「Anti-Virus & Sandbox」やSIEM製品「Splunk」との連携機能を追加した。これらオプション機能は、リリース直後から利用するユーザーが多いという。そのほかにも、学校向けにi-FILTERのGIGAスクール版の提供なども行っている。
UIの改善やサポートサービスの充実にも注力しており、内山プロダクトマネージャーは「UIには、お客様から日々、さまざまな要望が寄せられることから、迅速に対応し改良を重ねている」と話す。
同社は、多くのパートナーを有しており、全国をカバーする販売網を構築。パートナーごとに、必要な製品情報などをまとめた動画を提供するなど支援の強化も図っている。
5月に開催した「パートナーミーティング2022」で、同社の道具登志夫社長は、幅広いセキュリティソリューションを提供する「総合セキュリティベンダー」に成長させていく考えを示した。今後は、製品の拡充や機能強化を図り、顧客獲得を進め、25年3月期に連結売上高130億円を目指すとしている。
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