Special Feature
積極投資か、マイグレーションか メインフレーム市場のこれから
2023/06/01 09:00
週刊BCN 2023年05月29日vol.1970掲載
メインフレームを巡る状況が大きく変化している。経済産業省が「DXレポート」で“2025年の崖”として指摘したレガシーシステムの限界に加え、富士通が2030年度にメインフレーム事業からの撤退を発表するといった動きが見られる一方、米IBMはメインフレームへの投資を拡大。今後も継続的に需要が見込まれるとの見方も広がっている。メインフレーム市場はこの先どのように推移するのだろうか。
(取材・文/大河原克行 編集/日高 彰)
電子情報技術産業協会(JEITA)が四半期ごとに発表している統計情報の「サーバ出荷実績」によると、21年度(21年4月~22年3月)のメインフレームの出荷台数は前年比18%減の131台、出荷金額は2%減の297億900万円となった。台数、金額ともに前年割れの実績となっている。
しかし、IAサーバーの出荷金額が前年比7%減、UNIXサーバーが前年比18%減、PCが前年比21%減であったことに比較すると、メインフレームの2%減というマイナスは最も落ち込みが少ない。さらに、最新データである22年度第3四半期累計(22年4月~12月)の実績では、出荷台数が前年比13%増、出荷金額は6%増と前年実績を上回る水準で推移している。
同統計からもう一つ注目しておきたいのが、平均単価の推移である。出荷台数、出荷金額ともに前年割れとなった21年度実績を見ても、平均単価は2億2679万円となっており、前年から3500万円以上も上昇している。大型商談が相次いだことが裏付けられる結果ともいえる。
メーカー側の状況を見ると、IBMおよびNECはメインフレーム事業の継続を示しているものの、日立製作所は17年に自社開発・生産から撤退。富士通も、30年度にメインフレームの販売を終息し、35年度に保守も終了することを発表している。大手ベンダーの対応は二分しており、メインフレームを巡る環境は大きな転換期にあるといっていいだろう。
AIアクセラレータや耐量子暗号技術などを搭載する「z16」
そして、注目したいのは、この投資対象の中にメインフレームが含まれている点だ。言い換えれば、IBMは、次世代半導体などの技術と横並びで、メインフレームにも積極的に投資することを明言したといえる。さらに、将来のメインフレームには、Rapidusが開発・製造するCPUの採用を検討することも明らかにしている。
IBMがメインフレームに力を注ぐ背景には、メインフレームの活用方法が大きく変化してきていることが挙げられる。日本IBMの山口明夫社長は、「メインフレームの中身は、この10年で大きく変わっている。PL/IやCOBOLで書かれたレガシーアプリケーションだけが稼働しているのがメインフレームではない」と語る。
実際、IBMメインフレームでの命令実行数を見ると、従来のメインフレームで活用されていたミドルウェアの「CICS」や「IMS」「DB2」、バッチ処理などを示す指標のStandard MIPSよりも、LinuxやAI、Java、C、Pythonなどの活用を示すSpecialty MIPSが増加しており、既に後者の新たな計算負荷が3分の2近くを占めている。業務を停止することなく稼働できる信頼性や可用性はそのままに、新たなワークロードへの対応を進めているかたちだ。
IBMによると、フォーチュン100社のうち67社が、IBMメインフレームを導入。世界の銀行トップ50行のうち45行、保険トップ10社のうち8社、航空トップ5社のうち4社、グローバル小売トップ10社のうち7社、通信トップ10社のうち8社が、「IBM z」を採用している。また、GDP上位25カ国中24カ国の政府において、IBMメインフレームが公共部門で稼働しているという。
また、山口社長は「一般的に、『メインフレーム=オンプレミス』という誤った認識がある。メインフレームはオンプレミスでの利用に限定されたものではなく、クラウドでも利用される」と前置きし、次のように語る。
「メインフレームはレガシーと定義され、モダナイズされたクラウドと対比されることが多いが、この対比そのものが間違っている。メインフレームはハードウェアであり、IAサーバーやストレージと同じカテゴリーに捉えるべきである。またクラウドは、オンプレミスと対比して議論すべきである」
実際に、三菱UFJフィナンシャル・グループや日本生命、ふくおかフィナンシャルグループなどでは、IBM zをオンプレミスで使う部分と、IBM Cloudで活用する部分、IAサーバーなどが活用されている他社のクラウドサービスで利用する部分などに切り分け、それぞれの業務要件に最適化した環境を構築し、ハイブリッド/マルチクラウドでのITインフラ運用を実現している。
三菱UFJフィナンシャル・グループの亀澤宏規・社長兼グループCEOは、「メインフレームは、向いているところと向いていないところがある。金融業界では安心、安定、安全が極めて重要であり、それをオンプレミスできっちりとつくることが必要。預金、外為、融資の基盤はメインフレームでなくてはいけない。その一方で、市場系や情報系はマルチクラウドによる柔軟性が求められる。全体最適での配置を意識しており、新たな時代に合わせた可用性を実現しなくてはならないと考えている」と述べる。
富士通の現行機は18年発売。24年の次機種が最終製品に
同社のロードマップによると、24年度には次期「GSシリーズ」を発表する予定であり、これが最後のメインフレーム製品になる。また、22年9月には社内に「モダナイゼーションナレッジセンター」を設置し、メインフレームユーザーの移行を支援する体制を整えている。
富士通の時田隆仁社長は、「富士通のメインフレームは、半世紀を超える歴史のなかで、ユーザー資産の継承のため、大量高速処理、高信頼、オープンシステムとの連携など、基幹業務のあらゆる要件に応えながら発展してきた。その結果、22年連続で国内トップシェアを堅持している」としながら、「だが富士通は、IBMのようにはメインフレームに対する投資を行わず、今後、富士通のメインフレーム向けOSである『MSP』に継続的に投資するという選択も考えにくい状態になっていた。メインフレームは販売終息の方向しかない。私が決断しなくても、私の次の社長が決断することになっただろう」と語る。メインフレームの販売終息を発表して以降、ネガティブな声があがる一方で、判断に理解を示す企業もあるという。
時田社長自身、金融分野でメインフレームのシステムエンジニアとしての経験が長い。「富士通のメインフレームがなくなることに対する寂しさは人一倍ある」と語る。その一方で、「営業利益率が2%程度でいい、売上高も現状維持でいいというのであれば、メインフレーム事業を継続してもいいが、ビジネス変革と持続可能な社会の実現の両立を目指す企業になるには、この判断しかなかった」と語る。
富士通の将来に向けた回答の一つが、「Fujitsu Computing as a Service(CaaS)」である。時田社長が「次の富士通の姿を示すもの」と位置づけるCaaSは、「富岳」をはじめとした富士通が持つ高度なコンピューティング技術や、デジタルアニーラ、AIなどの高度最新技術を集約し、これらをクラウドサービス群として提供するものになる。スーパーコンピューターや量子コンピューターの技術、次世代省電力CPU「FUJITSU-MONAKA(コードネーム)」の開発なども進めており、こうした取り組みが、ポストメインフレームビジネスにつながることになる。
具体的には、▽IBMとNECを除くメインフレームベンダーが撤退の方向を打ち出しており、ユーザーは何らかのマイグレーション計画を立案せざるを得ない状況にある▽メインフレームからオープン環境へのマイグレーションの提案を依頼したものの、想定していた金額よりもはるかに高い見積もりが提示され、マイグレーションをちゅうちょしている多くのユーザー企業が見られる▽メインフレームのユーザー数が減少するに伴い、ベンダーから保守料金を大幅に値上げされ、途方に暮れるユーザーが増えると予想される―とし、何の対策も講じていないユーザー企業は、将来的にはサポート切れのメインフレームを使うか、業務システムを理解できる人材がいなくなる状況に陥る可能性があることなどを示した。
ガートナージャパンの亦賀忠明・ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストは、「時代はまさに『江戸時代(的な従来型の時代)からNew World(新たな時代)へ』と転換し始めている。ベンダーの撤退に伴い緊急避難的にマイグレーションを行うことは仕方がないが、『江戸を江戸ダッシュにするのに100億円』といった膨大な費用の提示をうのみにしないように注意しなくてはならない。メインフレームのマイグレーションは、未来に向けたコスト最適化への配慮と戦略的投資の考え方を提案に含めるように、ベンダーやシステムインテグレーターに要請することが重要である」と語る。
これから数年は、メインフレームが国内IT市場再編の震源地になるのは間違いない。
(取材・文/大河原克行 編集/日高 彰)

台数は減少するも大型商談は堅調
経済産業省は18年に発行した「DXレポート」で“2025年の崖”を示し、レガシーシステムを維持することは、その制約によるデータ活用の遅れや、技術的負債による維持費の増加などによって国際競争力の低下につながり、日本の経済にも多額の損失が発生すると警告した。課題となるレガシーシステムの中核に位置づけられたのがメインフレームである。
電子情報技術産業協会(JEITA)が四半期ごとに発表している統計情報の「サーバ出荷実績」によると、21年度(21年4月~22年3月)のメインフレームの出荷台数は前年比18%減の131台、出荷金額は2%減の297億900万円となった。台数、金額ともに前年割れの実績となっている。
しかし、IAサーバーの出荷金額が前年比7%減、UNIXサーバーが前年比18%減、PCが前年比21%減であったことに比較すると、メインフレームの2%減というマイナスは最も落ち込みが少ない。さらに、最新データである22年度第3四半期累計(22年4月~12月)の実績では、出荷台数が前年比13%増、出荷金額は6%増と前年実績を上回る水準で推移している。
同統計からもう一つ注目しておきたいのが、平均単価の推移である。出荷台数、出荷金額ともに前年割れとなった21年度実績を見ても、平均単価は2億2679万円となっており、前年から3500万円以上も上昇している。大型商談が相次いだことが裏付けられる結果ともいえる。
メーカー側の状況を見ると、IBMおよびNECはメインフレーム事業の継続を示しているものの、日立製作所は17年に自社開発・生産から撤退。富士通も、30年度にメインフレームの販売を終息し、35年度に保守も終了することを発表している。大手ベンダーの対応は二分しており、メインフレームを巡る環境は大きな転換期にあるといっていいだろう。
先端半導体の開発と並行してメインフレームへの投資を拡大するIBM
興味深いのはIBMの動きだ。同社は、メインフレームへの投資を加速している。米IBMは22年10月、ニューヨーク州のハドソン川流域の研究開発拠点に対して、今後10年間で200億ドルの投資を行うことを明らかにした。この投資対象は、“日の丸半導体企業”であるRapidusとの戦略的パートナーシップで話題を集めた2nmプロセス半導体技術のほか、25年に4000量子ビットを実現するという量子コンピューター、脳の神経細胞や神経回路網を模倣したニューロコンピューティングによるAIの進化などが含まれる。
そして、注目したいのは、この投資対象の中にメインフレームが含まれている点だ。言い換えれば、IBMは、次世代半導体などの技術と横並びで、メインフレームにも積極的に投資することを明言したといえる。さらに、将来のメインフレームには、Rapidusが開発・製造するCPUの採用を検討することも明らかにしている。
IBMがメインフレームに力を注ぐ背景には、メインフレームの活用方法が大きく変化してきていることが挙げられる。日本IBMの山口明夫社長は、「メインフレームの中身は、この10年で大きく変わっている。PL/IやCOBOLで書かれたレガシーアプリケーションだけが稼働しているのがメインフレームではない」と語る。
実際、IBMメインフレームでの命令実行数を見ると、従来のメインフレームで活用されていたミドルウェアの「CICS」や「IMS」「DB2」、バッチ処理などを示す指標のStandard MIPSよりも、LinuxやAI、Java、C、Pythonなどの活用を示すSpecialty MIPSが増加しており、既に後者の新たな計算負荷が3分の2近くを占めている。業務を停止することなく稼働できる信頼性や可用性はそのままに、新たなワークロードへの対応を進めているかたちだ。
IBMによると、フォーチュン100社のうち67社が、IBMメインフレームを導入。世界の銀行トップ50行のうち45行、保険トップ10社のうち8社、航空トップ5社のうち4社、グローバル小売トップ10社のうち7社、通信トップ10社のうち8社が、「IBM z」を採用している。また、GDP上位25カ国中24カ国の政府において、IBMメインフレームが公共部門で稼働しているという。
また、山口社長は「一般的に、『メインフレーム=オンプレミス』という誤った認識がある。メインフレームはオンプレミスでの利用に限定されたものではなく、クラウドでも利用される」と前置きし、次のように語る。
「メインフレームはレガシーと定義され、モダナイズされたクラウドと対比されることが多いが、この対比そのものが間違っている。メインフレームはハードウェアであり、IAサーバーやストレージと同じカテゴリーに捉えるべきである。またクラウドは、オンプレミスと対比して議論すべきである」
実際に、三菱UFJフィナンシャル・グループや日本生命、ふくおかフィナンシャルグループなどでは、IBM zをオンプレミスで使う部分と、IBM Cloudで活用する部分、IAサーバーなどが活用されている他社のクラウドサービスで利用する部分などに切り分け、それぞれの業務要件に最適化した環境を構築し、ハイブリッド/マルチクラウドでのITインフラ運用を実現している。
三菱UFJフィナンシャル・グループの亀澤宏規・社長兼グループCEOは、「メインフレームは、向いているところと向いていないところがある。金融業界では安心、安定、安全が極めて重要であり、それをオンプレミスできっちりとつくることが必要。預金、外為、融資の基盤はメインフレームでなくてはいけない。その一方で、市場系や情報系はマルチクラウドによる柔軟性が求められる。全体最適での配置を意識しており、新たな時代に合わせた可用性を実現しなくてはならないと考えている」と述べる。
メインフレーム事業終息の富士通はコンピュート資源のサービス提供へシフト
一方、メインフレームからの撤退を発表している富士通は、「DXの推進には、複雑化した既存基幹システムを簡素化するとともに、高度な情報利活用が必要となり、基幹システムの一貫性のあるモダナイゼーションを推進する必要がある」とし、「あらゆるデータやサービスをつなげて付加価値を創出する『Fujitsu Uvance』のHybrid ITの提案を通じて、メインフレームのクラウドシフトに取り組む」方針を示している。
同社のロードマップによると、24年度には次期「GSシリーズ」を発表する予定であり、これが最後のメインフレーム製品になる。また、22年9月には社内に「モダナイゼーションナレッジセンター」を設置し、メインフレームユーザーの移行を支援する体制を整えている。
富士通の時田隆仁社長は、「富士通のメインフレームは、半世紀を超える歴史のなかで、ユーザー資産の継承のため、大量高速処理、高信頼、オープンシステムとの連携など、基幹業務のあらゆる要件に応えながら発展してきた。その結果、22年連続で国内トップシェアを堅持している」としながら、「だが富士通は、IBMのようにはメインフレームに対する投資を行わず、今後、富士通のメインフレーム向けOSである『MSP』に継続的に投資するという選択も考えにくい状態になっていた。メインフレームは販売終息の方向しかない。私が決断しなくても、私の次の社長が決断することになっただろう」と語る。メインフレームの販売終息を発表して以降、ネガティブな声があがる一方で、判断に理解を示す企業もあるという。
時田社長自身、金融分野でメインフレームのシステムエンジニアとしての経験が長い。「富士通のメインフレームがなくなることに対する寂しさは人一倍ある」と語る。その一方で、「営業利益率が2%程度でいい、売上高も現状維持でいいというのであれば、メインフレーム事業を継続してもいいが、ビジネス変革と持続可能な社会の実現の両立を目指す企業になるには、この判断しかなかった」と語る。
富士通の将来に向けた回答の一つが、「Fujitsu Computing as a Service(CaaS)」である。時田社長が「次の富士通の姿を示すもの」と位置づけるCaaSは、「富岳」をはじめとした富士通が持つ高度なコンピューティング技術や、デジタルアニーラ、AIなどの高度最新技術を集約し、これらをクラウドサービス群として提供するものになる。スーパーコンピューターや量子コンピューターの技術、次世代省電力CPU「FUJITSU-MONAKA(コードネーム)」の開発なども進めており、こうした取り組みが、ポストメインフレームビジネスにつながることになる。
マイグレーションには戦略が求められる
ガートナージャパンは23年3月、「オンプレミスに関する展望」を発表した。その中で、メインフレームに関するいくつかの課題を指摘している。具体的には、▽IBMとNECを除くメインフレームベンダーが撤退の方向を打ち出しており、ユーザーは何らかのマイグレーション計画を立案せざるを得ない状況にある▽メインフレームからオープン環境へのマイグレーションの提案を依頼したものの、想定していた金額よりもはるかに高い見積もりが提示され、マイグレーションをちゅうちょしている多くのユーザー企業が見られる▽メインフレームのユーザー数が減少するに伴い、ベンダーから保守料金を大幅に値上げされ、途方に暮れるユーザーが増えると予想される―とし、何の対策も講じていないユーザー企業は、将来的にはサポート切れのメインフレームを使うか、業務システムを理解できる人材がいなくなる状況に陥る可能性があることなどを示した。
ガートナージャパンの亦賀忠明・ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストは、「時代はまさに『江戸時代(的な従来型の時代)からNew World(新たな時代)へ』と転換し始めている。ベンダーの撤退に伴い緊急避難的にマイグレーションを行うことは仕方がないが、『江戸を江戸ダッシュにするのに100億円』といった膨大な費用の提示をうのみにしないように注意しなくてはならない。メインフレームのマイグレーションは、未来に向けたコスト最適化への配慮と戦略的投資の考え方を提案に含めるように、ベンダーやシステムインテグレーターに要請することが重要である」と語る。
これから数年は、メインフレームが国内IT市場再編の震源地になるのは間違いない。
メインフレームを巡る状況が大きく変化している。経済産業省が「DXレポート」で“2025年の崖”として指摘したレガシーシステムの限界に加え、富士通が2030年度にメインフレーム事業からの撤退を発表するといった動きが見られる一方、米IBMはメインフレームへの投資を拡大。今後も継続的に需要が見込まれるとの見方も広がっている。メインフレーム市場はこの先どのように推移するのだろうか。
(取材・文/大河原克行 編集/日高 彰)
電子情報技術産業協会(JEITA)が四半期ごとに発表している統計情報の「サーバ出荷実績」によると、21年度(21年4月~22年3月)のメインフレームの出荷台数は前年比18%減の131台、出荷金額は2%減の297億900万円となった。台数、金額ともに前年割れの実績となっている。
しかし、IAサーバーの出荷金額が前年比7%減、UNIXサーバーが前年比18%減、PCが前年比21%減であったことに比較すると、メインフレームの2%減というマイナスは最も落ち込みが少ない。さらに、最新データである22年度第3四半期累計(22年4月~12月)の実績では、出荷台数が前年比13%増、出荷金額は6%増と前年実績を上回る水準で推移している。
同統計からもう一つ注目しておきたいのが、平均単価の推移である。出荷台数、出荷金額ともに前年割れとなった21年度実績を見ても、平均単価は2億2679万円となっており、前年から3500万円以上も上昇している。大型商談が相次いだことが裏付けられる結果ともいえる。
メーカー側の状況を見ると、IBMおよびNECはメインフレーム事業の継続を示しているものの、日立製作所は17年に自社開発・生産から撤退。富士通も、30年度にメインフレームの販売を終息し、35年度に保守も終了することを発表している。大手ベンダーの対応は二分しており、メインフレームを巡る環境は大きな転換期にあるといっていいだろう。
(取材・文/大河原克行 編集/日高 彰)

台数は減少するも大型商談は堅調
経済産業省は18年に発行した「DXレポート」で“2025年の崖”を示し、レガシーシステムを維持することは、その制約によるデータ活用の遅れや、技術的負債による維持費の増加などによって国際競争力の低下につながり、日本の経済にも多額の損失が発生すると警告した。課題となるレガシーシステムの中核に位置づけられたのがメインフレームである。
電子情報技術産業協会(JEITA)が四半期ごとに発表している統計情報の「サーバ出荷実績」によると、21年度(21年4月~22年3月)のメインフレームの出荷台数は前年比18%減の131台、出荷金額は2%減の297億900万円となった。台数、金額ともに前年割れの実績となっている。
しかし、IAサーバーの出荷金額が前年比7%減、UNIXサーバーが前年比18%減、PCが前年比21%減であったことに比較すると、メインフレームの2%減というマイナスは最も落ち込みが少ない。さらに、最新データである22年度第3四半期累計(22年4月~12月)の実績では、出荷台数が前年比13%増、出荷金額は6%増と前年実績を上回る水準で推移している。
同統計からもう一つ注目しておきたいのが、平均単価の推移である。出荷台数、出荷金額ともに前年割れとなった21年度実績を見ても、平均単価は2億2679万円となっており、前年から3500万円以上も上昇している。大型商談が相次いだことが裏付けられる結果ともいえる。
メーカー側の状況を見ると、IBMおよびNECはメインフレーム事業の継続を示しているものの、日立製作所は17年に自社開発・生産から撤退。富士通も、30年度にメインフレームの販売を終息し、35年度に保守も終了することを発表している。大手ベンダーの対応は二分しており、メインフレームを巡る環境は大きな転換期にあるといっていいだろう。
この記事の続き >>
- 先端半導体の開発と並行してメインフレームへの投資を拡大するIBM
- メインフレーム事業終息の富士通はコンピュート資源のサービス提供へシフト
- マイグレーションには戦略が求められる
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