Special Feature

複合機メーカーのITソリューション事業 プリント需要減を補い、成長への原動力に

2023/06/12 09:00

週刊BCN 2023年06月12日vol.1972掲載

 主要な複合機メーカーは、プリント需要の中長期的な減少を見越して、ビジネスの主軸をITソリューションに広げる動きを加速させている。とりわけ一般オフィスでの需要の伸び悩みが危惧されており、オフィス領域に強いリコーとキヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)、富士フイルムビジネスイノベーション(富士フイルムBI)は、複合機で培った顧客基盤や販売・保守網を駆使したビジネスの拡大を急ぐ。複合機とITソリューションを連動させたり、かねてから力を入れてきたドキュメント領域を発展させたりするなど、独自の成長戦略を描いている。
(取材・文/安藤章司)
 

リコー
デジタルサービス比率を6割余りへ

 リコーは2023年度(24年3月期)から新しい3カ年中期経営戦略をスタートさせ、「OAメーカーからデジタルサービス会社に変わる」(大山晃社長)方針を継続する。複合機やプリンタ、PFUのドキュメントスキャナなどハードウェア製品を、業務システムの端末「エッジデバイス」と位置づけ、その上にドキュメントやワークフロー、業種向けアプリ、サービスを構築する独自のアーキテクチャー「RICOH Smart Integration(RSI)」を軸にデジタルサービスを展開する考えだ(図参照)。
 

 RSIの接続対象となるエッジデバイス群も、デジタルサービスの一部と見なしている。22年度の売上高全体に占めるデジタルサービスの比率が44%だったのに対して、中期経営戦略の最終年度となる25年度には6割余りに引き上げる。売り上げ目標は、25年度の全社目標の2兆3500億円のうち、デジタルサービスは1兆4800億円を見込んでいる。

 RSI上で稼働するアプリは、中堅・中小企業向けの業種・業務パッケージ「スクラムシリーズ」や、サイボウズと協業して開発した「RICOH kintone plus」、ドキュメント管理の「DocuWare」などが推進エンジン役を担う。22年度を振り返ると、とりわけスクラムシリーズが好調に推移し、シリーズ全体の売上高は前年度比34%増の1071億円となり、初の1000億円超を達成した。

 スクラムシリーズは、リコーグループ内外の優れた業務アプリやサービスを体系化しており、中小企業向けにはカスタマイズなしですぐに使える「スクラムパッケージ」を提供。中堅企業向けにはカスタマイズが可能な「スクラムアセット」として販売している。

 スクラムパッケージの22年度の売上高は、前年度比2%増の494億円と微増にとどまった一方で、販売本数は前年度比7.5%増の8万2177本と過去最高を更新。スクラムアセットの販売金額は、同84%増の577億円と大きく伸びるとともに、年度末の追い込みに相当する第4四半期(1~3月)は106%増と売り上げを倍増させている。

 22年10月に投入したRICOH kintone plusは、営業担当者の育成プログラムの効果もあり、契約数が堅調に伸びている。すでに北米市場に投入済みで、欧州市場にも順次展開していくことから欧米主要市場での売り上げも見込む。

 大山社長は「デジタルサービス分野で一流になるには、海外でも国内同様にデジタルサービスを展開する必要がある」と述べ、海外のベストプラクティスを積極的に取り込み、世界の主要市場で実績を積んでいく方針を示す。ドイツ発祥のDocuWareをはじめ、ドキュメント関連やビデオ会議などの映像関連の事業を手がける欧米企業のM&Aも積極的に取り組んでおり、これらの商材もRSIプラットフォームに乗せて、世界市場への横展開を進める。

 一方、伸び悩みが懸念される複合機やトナーなどの販売ついては、他社との協業やOEM提供先の拡大など、生産体制の強化や構造改革を進めることで市場縮小の影響を極力打ち消していく。その一環として、東芝テックと複合機の共通エンジン部分を共同開発する合弁会社を本年度第1四半期(4~6月)中に立ち上げることを発表。共通エンジン開発には数年かかる見込みで、効果は次期中計で顕在化する見通し。
この記事の続き >>
  • キヤノンMJ “攻めのIT”の領域に進出
  • 富士フイルムBI 独自商材の拡充などで事業規模を拡大

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