Special Feature
軸足はクラウド、AIへ コト売りへと進化するマイクロソフトのパートナープログラム
2023/09/11 09:00
週刊BCN 2023年09月11日vol.1984掲載
米Microsoft(マイクロソフト)は2022年10月、従来のパートナープログラムを「Microsoft Partner Network」(MPN)から「Microsoft Cloud Partner Program」(MCPP)へと変更し、内容を刷新するとともにクラウドシフトを推進する姿勢を鮮明にした。さらに23年7月には、名称を「Microsoft AI Cloud Partner Program」(MAICPP)に再変更し、同社製品・サービスにおけるAIへの注力を前面に押し出している。プログラムのアップデートに併せて、パートナーとしてビジネスを手掛けてきたSIerやリセラー、ISVも、自社のビジネスをアップデートする必要がある。新たなプログラムの中身と変更の意図について、日本マイクロソフトに聞いた。
(取材・文/石田仁志 編集/藤岡 堯)
プログラムのメンバーシップはピラミッド型の複数階層で構成され(図参照)、それぞれの段階に応じて「販売連携」「製品ライセンスの利用特典」「技術スキル取得支援」「インセンティブ」といったサポートが提供される。
ピラミッドを登るにつれて提供される特典も増えていくが、パートナー自身のケイパビリティも高いレベルが要求されるようになる。上の階層はカテゴリー分けされ、要件を満たすと認証を獲得でき、自社のビジネスを優位に展開可能になるという建付けだ。
MAICPPに加入する際には、「ネットワークメンバー」からスタートする。次にマイクロソフト製品ライセンスや技術サポートを必要に応じてサブスク型で安く購入でき、マイクロソフトパートナーとしてのロゴも使用できる「アクションパック」という階層が用意されている。
その上の階層が「ソリューションパートナー」である。ここからは、パートナーが自らのノウハウやスキル、専門性などの特徴を明確にできる「認定制度」となり、技術と実績がないと到達できない。MPN時代は「コンピテンシー」という名称で、製品をベースに19種類のカテゴリーに分けられていたが、MCPPへのリニューアル後は領域が集約され、「Infrastructure(Azure)」「Data & AI(Azure)」「Digital & App Innovation(Azure)」「Modern Work」「Security」「Business Applications」という六つのソリューション分野で展開されている。
ソリューションパートナー認定は、従来のコンピテンシーと取得要件も変わった。具体的には、「パフォーマンス」(顧客の純増数)と「スキル」(スキルアップとトレーニング状況、資格取得ポイント)、「カスタマーサクセス」(組織内での使用量の伸びと成功した展開数)によって評価されるスコアを、合計100点満点中70点以上獲得しなければならない。スコアは毎月更新され、年に一度の更新タイミングで70点未満の場合、認定取り消しという厳しい評価体系となっている。
そして最上位に、ソリューションパートナーの中でより高度な専門知識と実績があることを認定する「Specialization」(旧Advanced Specialization)と、最も優れたクラウドサービスプロバイダーに認定される「Azure Expert Managed Service Provider(MSP)」という二つの認定が用意されている。
日本マイクロソフト 浅野 智 執行役員常務
日本マイクロソフトの浅野智・執行役員常務パートナー事業本部長はプログラムを刷新した背景について、「クラウドシフトによって、われわれの製品やサービスもお客様がやりたい『コト』にフォーカスして提供する必要性が生じている。そこでパートナーと連携してエンドの顧客にサービスを届ける部分でも、従来のモノ売りからコト売りへの移行を進めるために、プログラム自体を見直す必要があった。認定制度も製品ごとからソリューションベースに整理し、体系と取得要件を大きく変えた」と説明する。
プログラムの刷新で、体系はシンプルになった半面、認証の取得・維持はシビアになった。その中でパートナーが得られるメリットは、主に2点が挙げられる。
「まずは自分たちがどういうケイパビリティを持っているかを顧客に簡単に説明できるようになったこと。もう一つは、AIをはじめとして技術が急速に進化する中で、変動更新制によって現在の実力を裏付けるツールとして使えるようになったこと」(浅野執行役員常務)である。
当然、パートナーに対する支援内容もアップデートされている。パートナーが顧客に最新のトレンドや商材を紹介できるようにするための教育や、ソリューション開発のための検証環境の利用範囲を広げている。浅野執行役員常務は「われわれのソリューションがどんどんアップデートされるので、それに呼応するかたちで支援内容も拡充し、パートナーが無償でテストできるような製品ライセンスも拡張している。例えば一部のソリューションパートナー認定では、Azureのクレジットも提供している」と支援状況について説明する。
実際にパートナー側の動きにも変化が生じ、特にSIerは技術を発揮しやすくなり、活動が活発になっているという。ISVもAI領域で新しいパートナーが増えてくることが予測され、今後は新しい認定制度も開始される予定だ。
そしてリセラーは、「Microsoft 365」にAI(Copilot)が搭載されるようになることで、顧客に対する説明の仕方が変わる。「われわれのパートナープログラムを有効活用すれば、その変化にきちんと耐えられる。コト売りの世界に早く足を踏み入れて、一緒に変化を楽しんでほしい」と、浅野執行役員常務はメッセージを送る。SBテクノロジー
マイクロソフトのプログラムを自社のビジネスに取り入れるパートナー側は、今回の変更をどう受け止めているのか。
SBテクノロジー(SBT)は、マイクロソフトのクラウドビジネスに国内で初めて参入し、10年連続でMicrosoft Japan Partner of the Yearを受賞する国内有数のパートナーである。
同社は23年6月にMCPP(当時)の6分野全てでソリューションパートナー認定と2領域のSpecializationを取得、そのほかにも日本マイクロソフトが国内でのAIビジネス推進のために開始した「Azure OpenAI Serviceリファレンスアーキテクチャ賛同パートナープログラム」にも参画し、Azure OpenAI Serviceを活用した社内システムを開発して全社規模で活用するとともに、ユーザー環境への導入も進めている。
SBテクノロジー 喜多村 晃 常務執行役員
喜多村晃・常務執行役員サービス統括Project Management Professionalは、「われわれはミッション、ビジョン、バリューをしっかり定めて事業をしている。組織も業種横断型に変え、全社員に製品やサービスを使ってもらいながらデザイン思考で自社サービスの開発を行っている。その中で軸となっているのが、マイクロソフトのアーキテクチャーだ」と説明する。
同社は09年から、クラウドサービスに振り切って事業を進めてきたという。その中で、Microsoft 365の販売やAzure環境の構築などで実績を重ねてきたが、その都度、企業がマイクロソフト製品を導入する際に必要となる部分をアドオンし、クラウドSIや自社ソリューションの提供で事業成長に繋げてきた。
一例が、クラウドセキュリティである。早期からマネージドサービスに注力し、Microsoft 365の運用監視サービスでは国内で圧倒的なシェアを有している。
「今後の技術トレンドを予測して組織構造と事業戦略を考えてきた。マイクロソフトが出したソリューションを基に、今後、企業側に求められる機能を予測して先行投資をしてきた。その結果、リソースも充実し、多くの認定も取得できている」と、喜多村常務執行役員は述べる。
SBテクノロジー 上原郁磨 執行役員
今回のパートナープログラムの変更に対しても、好意的な反応を示す。「今回のプログラムは、資格者数よりも実績が優先になり、より実力を示せるようになった。また、AIなどでスキルレベルの向上に速度が求められる中、ライセンスや検証環境の利用、ナレッジの共有という体制が整っているのは大きい。マイクロソフト側からも、この『レベルに達しなければいけない』と明示されるようになったので、ある意味わかりやすく、そこに追従することで営業の数字も残せるようになる」(上原郁磨・執行役員サービス統括セールス&マーケティング本部本部長兼CMO)とみている。
国内のSIビジネスでは、従来型の多重下請けモデルが長年にわたり問題視されている。現在、クラウドの普及でシステム開発のあり方が変わり、AIの民主化によってエンドユーザーからの直接の要望も増え、顧客との距離感は狭まった。そうなれば、下請けに収まっていたSIerは開発の上流に対応できないと仕事がとれなくなる。一方で、組織の規模は小さくても、技術やアイデアを持っているベンダーには活躍の機会が生まれる。閉塞感を抱えるIT企業は、最新のデジタル商材を一括して提供するマイクロソフトのパートナープログラム変更を、ビジネスを変えるよいきっかけとして前向きに捉えていくべきだろう。
(取材・文/石田仁志 編集/藤岡 堯)

4段階のピラミッド構造 上位階層でサポートも手厚く
マイクロソフトは従来、パートナーのビジネスを支援するためのプログラムをグローバルで実施してきた。国内でも多くのITサービス系企業が、プログラムを活用してビジネスを展開している。プログラムのメンバーシップはピラミッド型の複数階層で構成され(図参照)、それぞれの段階に応じて「販売連携」「製品ライセンスの利用特典」「技術スキル取得支援」「インセンティブ」といったサポートが提供される。

ピラミッドを登るにつれて提供される特典も増えていくが、パートナー自身のケイパビリティも高いレベルが要求されるようになる。上の階層はカテゴリー分けされ、要件を満たすと認証を獲得でき、自社のビジネスを優位に展開可能になるという建付けだ。
MAICPPに加入する際には、「ネットワークメンバー」からスタートする。次にマイクロソフト製品ライセンスや技術サポートを必要に応じてサブスク型で安く購入でき、マイクロソフトパートナーとしてのロゴも使用できる「アクションパック」という階層が用意されている。
その上の階層が「ソリューションパートナー」である。ここからは、パートナーが自らのノウハウやスキル、専門性などの特徴を明確にできる「認定制度」となり、技術と実績がないと到達できない。MPN時代は「コンピテンシー」という名称で、製品をベースに19種類のカテゴリーに分けられていたが、MCPPへのリニューアル後は領域が集約され、「Infrastructure(Azure)」「Data & AI(Azure)」「Digital & App Innovation(Azure)」「Modern Work」「Security」「Business Applications」という六つのソリューション分野で展開されている。
ソリューションパートナー認定は、従来のコンピテンシーと取得要件も変わった。具体的には、「パフォーマンス」(顧客の純増数)と「スキル」(スキルアップとトレーニング状況、資格取得ポイント)、「カスタマーサクセス」(組織内での使用量の伸びと成功した展開数)によって評価されるスコアを、合計100点満点中70点以上獲得しなければならない。スコアは毎月更新され、年に一度の更新タイミングで70点未満の場合、認定取り消しという厳しい評価体系となっている。
そして最上位に、ソリューションパートナーの中でより高度な専門知識と実績があることを認定する「Specialization」(旧Advanced Specialization)と、最も優れたクラウドサービスプロバイダーに認定される「Azure Expert Managed Service Provider(MSP)」という二つの認定が用意されている。
ソリューションベースに見直し 認定の取得はよりシビアに
これまでのパートナープログラムは、同社が販売してきたソフトウェア製品・サービスごとに分けられてきたが、製品ラインアップが年々増加して提供形態はクラウド化し、ユーザー側のデジタル活用ニーズも変わってきたため、それに合わせて内容を刷新したかたちとなっている。
日本マイクロソフトの浅野智・執行役員常務パートナー事業本部長はプログラムを刷新した背景について、「クラウドシフトによって、われわれの製品やサービスもお客様がやりたい『コト』にフォーカスして提供する必要性が生じている。そこでパートナーと連携してエンドの顧客にサービスを届ける部分でも、従来のモノ売りからコト売りへの移行を進めるために、プログラム自体を見直す必要があった。認定制度も製品ごとからソリューションベースに整理し、体系と取得要件を大きく変えた」と説明する。
プログラムの刷新で、体系はシンプルになった半面、認証の取得・維持はシビアになった。その中でパートナーが得られるメリットは、主に2点が挙げられる。
「まずは自分たちがどういうケイパビリティを持っているかを顧客に簡単に説明できるようになったこと。もう一つは、AIをはじめとして技術が急速に進化する中で、変動更新制によって現在の実力を裏付けるツールとして使えるようになったこと」(浅野執行役員常務)である。
当然、パートナーに対する支援内容もアップデートされている。パートナーが顧客に最新のトレンドや商材を紹介できるようにするための教育や、ソリューション開発のための検証環境の利用範囲を広げている。浅野執行役員常務は「われわれのソリューションがどんどんアップデートされるので、それに呼応するかたちで支援内容も拡充し、パートナーが無償でテストできるような製品ライセンスも拡張している。例えば一部のソリューションパートナー認定では、Azureのクレジットも提供している」と支援状況について説明する。
実際にパートナー側の動きにも変化が生じ、特にSIerは技術を発揮しやすくなり、活動が活発になっているという。ISVもAI領域で新しいパートナーが増えてくることが予測され、今後は新しい認定制度も開始される予定だ。
そしてリセラーは、「Microsoft 365」にAI(Copilot)が搭載されるようになることで、顧客に対する説明の仕方が変わる。「われわれのパートナープログラムを有効活用すれば、その変化にきちんと耐えられる。コト売りの世界に早く足を踏み入れて、一緒に変化を楽しんでほしい」と、浅野執行役員常務はメッセージを送る。
SBテクノロジー
戦略を先読みして自社の強みに
マイクロソフトのプログラムを自社のビジネスに取り入れるパートナー側は、今回の変更をどう受け止めているのか。SBテクノロジー(SBT)は、マイクロソフトのクラウドビジネスに国内で初めて参入し、10年連続でMicrosoft Japan Partner of the Yearを受賞する国内有数のパートナーである。
同社は23年6月にMCPP(当時)の6分野全てでソリューションパートナー認定と2領域のSpecializationを取得、そのほかにも日本マイクロソフトが国内でのAIビジネス推進のために開始した「Azure OpenAI Serviceリファレンスアーキテクチャ賛同パートナープログラム」にも参画し、Azure OpenAI Serviceを活用した社内システムを開発して全社規模で活用するとともに、ユーザー環境への導入も進めている。
喜多村晃・常務執行役員サービス統括Project Management Professionalは、「われわれはミッション、ビジョン、バリューをしっかり定めて事業をしている。組織も業種横断型に変え、全社員に製品やサービスを使ってもらいながらデザイン思考で自社サービスの開発を行っている。その中で軸となっているのが、マイクロソフトのアーキテクチャーだ」と説明する。
同社は09年から、クラウドサービスに振り切って事業を進めてきたという。その中で、Microsoft 365の販売やAzure環境の構築などで実績を重ねてきたが、その都度、企業がマイクロソフト製品を導入する際に必要となる部分をアドオンし、クラウドSIや自社ソリューションの提供で事業成長に繋げてきた。
一例が、クラウドセキュリティである。早期からマネージドサービスに注力し、Microsoft 365の運用監視サービスでは国内で圧倒的なシェアを有している。
「今後の技術トレンドを予測して組織構造と事業戦略を考えてきた。マイクロソフトが出したソリューションを基に、今後、企業側に求められる機能を予測して先行投資をしてきた。その結果、リソースも充実し、多くの認定も取得できている」と、喜多村常務執行役員は述べる。
今回のパートナープログラムの変更に対しても、好意的な反応を示す。「今回のプログラムは、資格者数よりも実績が優先になり、より実力を示せるようになった。また、AIなどでスキルレベルの向上に速度が求められる中、ライセンスや検証環境の利用、ナレッジの共有という体制が整っているのは大きい。マイクロソフト側からも、この『レベルに達しなければいけない』と明示されるようになったので、ある意味わかりやすく、そこに追従することで営業の数字も残せるようになる」(上原郁磨・執行役員サービス統括セールス&マーケティング本部本部長兼CMO)とみている。
国内のSIビジネスでは、従来型の多重下請けモデルが長年にわたり問題視されている。現在、クラウドの普及でシステム開発のあり方が変わり、AIの民主化によってエンドユーザーからの直接の要望も増え、顧客との距離感は狭まった。そうなれば、下請けに収まっていたSIerは開発の上流に対応できないと仕事がとれなくなる。一方で、組織の規模は小さくても、技術やアイデアを持っているベンダーには活躍の機会が生まれる。閉塞感を抱えるIT企業は、最新のデジタル商材を一括して提供するマイクロソフトのパートナープログラム変更を、ビジネスを変えるよいきっかけとして前向きに捉えていくべきだろう。
米Microsoft(マイクロソフト)は2022年10月、従来のパートナープログラムを「Microsoft Partner Network」(MPN)から「Microsoft Cloud Partner Program」(MCPP)へと変更し、内容を刷新するとともにクラウドシフトを推進する姿勢を鮮明にした。さらに23年7月には、名称を「Microsoft AI Cloud Partner Program」(MAICPP)に再変更し、同社製品・サービスにおけるAIへの注力を前面に押し出している。プログラムのアップデートに併せて、パートナーとしてビジネスを手掛けてきたSIerやリセラー、ISVも、自社のビジネスをアップデートする必要がある。新たなプログラムの中身と変更の意図について、日本マイクロソフトに聞いた。
(取材・文/石田仁志 編集/藤岡 堯)
プログラムのメンバーシップはピラミッド型の複数階層で構成され(図参照)、それぞれの段階に応じて「販売連携」「製品ライセンスの利用特典」「技術スキル取得支援」「インセンティブ」といったサポートが提供される。
ピラミッドを登るにつれて提供される特典も増えていくが、パートナー自身のケイパビリティも高いレベルが要求されるようになる。上の階層はカテゴリー分けされ、要件を満たすと認証を獲得でき、自社のビジネスを優位に展開可能になるという建付けだ。
MAICPPに加入する際には、「ネットワークメンバー」からスタートする。次にマイクロソフト製品ライセンスや技術サポートを必要に応じてサブスク型で安く購入でき、マイクロソフトパートナーとしてのロゴも使用できる「アクションパック」という階層が用意されている。
その上の階層が「ソリューションパートナー」である。ここからは、パートナーが自らのノウハウやスキル、専門性などの特徴を明確にできる「認定制度」となり、技術と実績がないと到達できない。MPN時代は「コンピテンシー」という名称で、製品をベースに19種類のカテゴリーに分けられていたが、MCPPへのリニューアル後は領域が集約され、「Infrastructure(Azure)」「Data & AI(Azure)」「Digital & App Innovation(Azure)」「Modern Work」「Security」「Business Applications」という六つのソリューション分野で展開されている。
ソリューションパートナー認定は、従来のコンピテンシーと取得要件も変わった。具体的には、「パフォーマンス」(顧客の純増数)と「スキル」(スキルアップとトレーニング状況、資格取得ポイント)、「カスタマーサクセス」(組織内での使用量の伸びと成功した展開数)によって評価されるスコアを、合計100点満点中70点以上獲得しなければならない。スコアは毎月更新され、年に一度の更新タイミングで70点未満の場合、認定取り消しという厳しい評価体系となっている。
そして最上位に、ソリューションパートナーの中でより高度な専門知識と実績があることを認定する「Specialization」(旧Advanced Specialization)と、最も優れたクラウドサービスプロバイダーに認定される「Azure Expert Managed Service Provider(MSP)」という二つの認定が用意されている。
(取材・文/石田仁志 編集/藤岡 堯)

4段階のピラミッド構造 上位階層でサポートも手厚く
マイクロソフトは従来、パートナーのビジネスを支援するためのプログラムをグローバルで実施してきた。国内でも多くのITサービス系企業が、プログラムを活用してビジネスを展開している。プログラムのメンバーシップはピラミッド型の複数階層で構成され(図参照)、それぞれの段階に応じて「販売連携」「製品ライセンスの利用特典」「技術スキル取得支援」「インセンティブ」といったサポートが提供される。

ピラミッドを登るにつれて提供される特典も増えていくが、パートナー自身のケイパビリティも高いレベルが要求されるようになる。上の階層はカテゴリー分けされ、要件を満たすと認証を獲得でき、自社のビジネスを優位に展開可能になるという建付けだ。
MAICPPに加入する際には、「ネットワークメンバー」からスタートする。次にマイクロソフト製品ライセンスや技術サポートを必要に応じてサブスク型で安く購入でき、マイクロソフトパートナーとしてのロゴも使用できる「アクションパック」という階層が用意されている。
その上の階層が「ソリューションパートナー」である。ここからは、パートナーが自らのノウハウやスキル、専門性などの特徴を明確にできる「認定制度」となり、技術と実績がないと到達できない。MPN時代は「コンピテンシー」という名称で、製品をベースに19種類のカテゴリーに分けられていたが、MCPPへのリニューアル後は領域が集約され、「Infrastructure(Azure)」「Data & AI(Azure)」「Digital & App Innovation(Azure)」「Modern Work」「Security」「Business Applications」という六つのソリューション分野で展開されている。
ソリューションパートナー認定は、従来のコンピテンシーと取得要件も変わった。具体的には、「パフォーマンス」(顧客の純増数)と「スキル」(スキルアップとトレーニング状況、資格取得ポイント)、「カスタマーサクセス」(組織内での使用量の伸びと成功した展開数)によって評価されるスコアを、合計100点満点中70点以上獲得しなければならない。スコアは毎月更新され、年に一度の更新タイミングで70点未満の場合、認定取り消しという厳しい評価体系となっている。
そして最上位に、ソリューションパートナーの中でより高度な専門知識と実績があることを認定する「Specialization」(旧Advanced Specialization)と、最も優れたクラウドサービスプロバイダーに認定される「Azure Expert Managed Service Provider(MSP)」という二つの認定が用意されている。
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- ソリューションベースに見直し 認定の取得はよりシビアに
- SBテクノロジー 戦略を先読みして自社の強みに
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