米Microsoft(マイクロソフト)の生成AI機能「Copilot」の利用拡大に向け、ITベンダーが新たなビジネスの立ち上げを進めている。直近では「Copilot for Microsoft 365」向けの導入支援サービスが続々と登場し、「Copilot for Security」向けのサービスを提供する動きも。企業の間でAI活用が盛り上がる中、市場で選ばれるためには差別化が欠かせず、各ベンダーは強みを生かした戦略で商機の獲得を目指している。
(取材・文/齋藤秀平、大畑直悠、岩田晃久、安藤章司)
大塚商会
先行導入で培ったノウハウを提供
大塚商会は、2023年11月から「Copilot for Microsoft 365 まるごと支援サービス」の提供を始めた。同年8月から自社内300人規模に早期導入したことで得たノウハウを生かし、導入前のセミナー、ワークショップの開催や検証、運用開始後の活用アドバイザリーなどを一貫してサポートしている。発表当初に掲げた6月末までに120社の導入を目指す計画は既に達成した。
MM本部クラウド基盤プロモーション部マイクロソフトソリューション1課の高口渉氏は「Copilot for Microsoft 365は、適切なプロンプトの入力が必要になるなど、使いこなすまでにそれなりの時間がかかる。導入前後のどのフェーズであっても、早く成果を出すために支援できるのは当社の強みだ」と訴える。プロンプトの入力については、電話で相談を受けるサービスの展開を検討しており、顧客が活用に関する支援をより手軽に受けられるようにする。
高口氏は「(Copilot for Microsoft 365の導入は)顧客が抱える課題を深掘りするいい機会になる」と話し、「Share Point」や「One drive」へのデータの集約やアクセス権限の設定を通して、「Microsoft 365」の利用環境の整備にもつながっているとみている。
また「課題をヒアリングする中で、Copilot for Microsoft 365よりも適したソリューションがある場合は多くあり、当社が取り扱う商材の中から最適なものを提案することもできる」と語り、ビジネスの広がりに期待を寄せる。
具体的には、用途に応じて生成AIを搭載した会話型インターフェースをカスタマイズできる「Microsoft Copilot Studio」や、RPAを用いた自動化の提案につながる場合が多いという。「Excel」を用いてデータを分析する場合、Copilot for Microsoft 365では分析対象にできるセルの容量が限定されることから、データ分析に特化したAIを提供する米dotData(ドットデータ)のソリューションを提案するケースも生まれていると紹介する。
富士ソフト
豊富な知見と総合力でサポート
富士ソフトは4月19日、Copilot for Microsoft 365の導入検討から利活用を支援するサービスの提供を始めた。「Microsoft 365」の導入で培った豊富な知見と、関連の部隊が一体となった総合力によって、「生成AI時代の情報基盤の構築」を見据えて顧客を後押ししている。
現状、最も引き合いが多いのは計画フェーズで、同社が東京・秋葉原に設置している体験型情報拠点「Microsoft Base Akihabara」を使いながらワークショップを実施し、実際にCopilotに触れてもらった上で導入計画の策定などを支援している。一部の部門などが利用できる売り切り型の「導入スタートパック」を検証導入フェーズで用意しているほか、大規模導入向けの「エンタープライズ導入支援サービス」を本番導入フェーズのメニューに設け、幅広い規模に対応できるようにしているのも特徴だ。
マイクロソフトは、4月にMicrosoft Copilot for Securityを市場に投入した。それを受けてラックは6月5日、「Microsoft Copilot for Security導入・活用支援サービス」の提供を開始すると発表した。同社は、23年12月からアーリーアクセスプログラムに参加しており、いち早くMicrosoft Copilot for Securityを社内で運用。そこで得た経験と自社の豊富なセキュリティーの知見を組み合わせたサービスを提供することで、Microsoft Copilot for Securityによるセキュリティー運用の効率化を促進していく考えだ。
ラック 土井秀記 グループ長
同サービスは、二つの段階で支援する。まず、Microsoft Copilot for Securityの利用を検討する企業に対して、POC(概念実証)を実施する。事業統括部エンジニアリングサービス企画部の土井秀記・エンジニアリングサービスデザイングループ長は「Microsoft Copilot for Securityを導入することで、お客様のセキュリティー運用がどれだけ自動化されて、業務効率化が図れるのかという部分をメインにPOCを行う」と説明する。導入を決めた企業には、Microsoft Copilot for Securityと、利用している社内のソリューションを連携させ、生成された回答をセキュリティー運用で活用できるように支援する。土井グループ長は「お客様ごとにさまざま使い方がある。運用を開始した後、さらに自動化を進めたいなどのニーズも出てくると思うので、柔軟に対応していきたい」と話す。Microsoft Copilot for Securityは頻繁に機能強化されるため、機能の検証を行い情報提供するといった取り組みも行う。
顧客層は、「Microsoft 365 E5」やマイクロソフトのセキュリティー製品を利用する企業を想定する。これらの製品は、詳細なセキュリティーログが出てくるため、土井グループ長は、Microsoft Copilot for Securityを効果的に活用できるとみる。
ラックは、マイクロソフト製品をメインに社内のセキュリティー環境を構築していることから、自社のセキュリティー運用での活用と、将来的なサービス提供を目指してアーリーアクセスプログラムに参加。社内活用では、運用業務の工数削減などの効果が得られたという。また、3月には、三井住友トラスト・グループのIT企業であるTrust Baseと実証実験を開始。Trust Baseの業務データを用いてMicrosoft Copilot for Securityの回答精度や速度、安定性の検証などに取り組んでいる。
土井グループ長は「Microsoft Copilot for Securityは提供されて間もないため、導入して自社で使いこなせるのか、費用対効果に見合うのかと迷われているお客様は多い。同サービスを通じてノウハウを提供しながらお客様を支えていきたい」と抱負を述べる。
SCSKと日本ビジネスシステムズ
継続支援で進化する機能を最大限活用 スムーズな導入・定着の支援も
Copilot for Microsoft 365向けの導入支援サービスは、ほかのベンダーも手掛けている。そのうちSCSKは、導入から活用、定着化までユーザー企業に伴走しながら支援するサービスを4月に開始した。利用シナリオやユースケースを提供し、導入した後の作業時間の削減具合の測定などを行って改善につなげている。日々進化する機能を業務に最大限活用できるよう継続的に支援するサービスにしているのが特徴だ。
一方、日本ビジネスシステムズは、23年11月にCopilot for Microsoft 365の利用を促進するサービス「Copilot NAVI」を始めた。同サービスでは、利用環境の整備やプロンプトのサンプル、推奨活用シーンを提供することでスムーズに導入、定着するよう支援している。3月には自社でCopilot for Microsoft 365を導入。約2500人の社員が実際に活用する中で得られた知見をユーザー企業に還元することで、活用レベルの向上に役立ててもらっている。
米Microsoft(マイクロソフト)の生成AI機能「Copilot」の利用拡大に向け、ITベンダーが新たなビジネスの立ち上げを進めている。直近では「Copilot for Microsoft 365」向けの導入支援サービスが続々と登場し、「Copilot for Security」向けのサービスを提供する動きも。企業の間でAI活用が盛り上がる中、市場で選ばれるためには差別化が欠かせず、各ベンダーは強みを生かした戦略で商機の獲得を目指している。
(取材・文/齋藤秀平、大畑直悠、岩田晃久、安藤章司)
大塚商会
先行導入で培ったノウハウを提供
大塚商会は、2023年11月から「Copilot for Microsoft 365 まるごと支援サービス」の提供を始めた。同年8月から自社内300人規模に早期導入したことで得たノウハウを生かし、導入前のセミナー、ワークショップの開催や検証、運用開始後の活用アドバイザリーなどを一貫してサポートしている。発表当初に掲げた6月末までに120社の導入を目指す計画は既に達成した。
MM本部クラウド基盤プロモーション部マイクロソフトソリューション1課の高口渉氏は「Copilot for Microsoft 365は、適切なプロンプトの入力が必要になるなど、使いこなすまでにそれなりの時間がかかる。導入前後のどのフェーズであっても、早く成果を出すために支援できるのは当社の強みだ」と訴える。プロンプトの入力については、電話で相談を受けるサービスの展開を検討しており、顧客が活用に関する支援をより手軽に受けられるようにする。
高口氏は「(Copilot for Microsoft 365の導入は)顧客が抱える課題を深掘りするいい機会になる」と話し、「Share Point」や「One drive」へのデータの集約やアクセス権限の設定を通して、「Microsoft 365」の利用環境の整備にもつながっているとみている。
また「課題をヒアリングする中で、Copilot for Microsoft 365よりも適したソリューションがある場合は多くあり、当社が取り扱う商材の中から最適なものを提案することもできる」と語り、ビジネスの広がりに期待を寄せる。
具体的には、用途に応じて生成AIを搭載した会話型インターフェースをカスタマイズできる「Microsoft Copilot Studio」や、RPAを用いた自動化の提案につながる場合が多いという。「Excel」を用いてデータを分析する場合、Copilot for Microsoft 365では分析対象にできるセルの容量が限定されることから、データ分析に特化したAIを提供する米dotData(ドットデータ)のソリューションを提案するケースも生まれていると紹介する。