──2024年の手応えは。
「オラクルってクラウドをやってるんでしたっけ」と言われた時代から、変わってきたと感じる。IaaS、PaaS、SaaSを合わせ、着実に大型顧客を獲得し、しっかりカットオーバーできた。ミッションクリティカルシステムを動かすならオラクル、クラウドERPと言えばオラクル、という地位はだいぶ確立されている。
三澤智光
取締役執行役社長
ただ、「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)のケーパビリティーはとても広く、ミッションクリティカルだけでなく、あらゆるエリアで利用できる。この点の認知度はまだ低い。米国ではUber Technologies(ウーバー)など、旧来の領域以外の顧客も増えており、幅広く使えるイメージへと変えなければならない。クラウドネイティブSaaSの真の価値も伝える必要がある。
──基幹系システムのモダナイゼーション需要をどうみるか。
まだまだこれからだ。今回のモダナイゼーションのニーズは、三つの課題を解決するチャンスである。一つは(古いバージョンのまま据え置く)「塩漬けシステム」。世界情勢や地政学リスクを考えれば、いつ何時、何をされてもおかしくない。二つめは、塩漬けによってカスタマイズが進むことでもたらされる技術的負債だ。その結果として、莫大な更改コストが定期的に発生している。クラウドリフトで、そのコストはほとんどなくなるだろう。
三つめは運用コストだ。複雑なシステムの上にカスタマイズもあれば、整合性を保って運用するには人手もコストもかかる。これもSaaSにすれば、ほぼなくなる。更改と運用のコストが大幅に減れば、これまでと違ったIT投資が可能になるはずだ。
OCIの広いケーパビリティーを示す
──AIやソブリン領域の展望は。
AIの取り組みは、生成AI開発向けインフラ、AIPaaS、自社SaaSへの実装という三つに分けられ、特にAIPaaSで、特定領域にこだわるパートナーと付き合いたい。例えば、野村総合研究所とは金融向けソブリンAIプラットフォームを考えており、RKKCSとは生成AIで地方自治体の業務を効率化する仕組みを検討している。
ソブリンは国内で厳密な定義が定められていないが、データソブリンティーが完全に担保される仕組みはもう必須になる。現在は、国内で24時間365日、クラウドのサポートとオペレーションを行えるセンターを整備中だ。ニーズが出た瞬間に応えられる受け皿を用意したい。
──25年の意気込みを。
重点施策として掲げる「日本のためのクラウドを提供」「お客様のためのAIを推進」はまだ道半ばだ。いい仕事をしているという実感はあるが、達成感はない。25年10月に日本オラクルは創業40周年を迎える。引き続き、重点施策の言葉に集約されるような成果をお客様に提供したい。