Special Issue

<メルコ特集>Win98で勢いづく事業戦略

1998/07/27 14:11

 

編集部

牧 誠社長インタビュー

予想以上に大きいWin98効果

 ウィンドウズ98の登場は低迷する日本産業に大きなインパクトを与える--市場に与える影響力はどれだけのものかと半信半疑で国内発売の時を迎えたウィンドウズ98だが、発売後のインパクトは予想をはるかに上回った。ウィンドウズ98が今後のパソコンビジネスに与える影響について、周辺機器メーカーの立場からメルコの牧誠社長は次のように語る。
 

 

-----ウィンドウズ98の影響はいかがですか。

 牧 6月の第3週あたりから売り上げが向上し始め、7月に入ってこの傾向はさらに顕著になりました。ボーナス商戦が終わりかけてからの伸びですので、これはウィンドウズ98効果としか考えられません。インパクトはやはり大きかったようです。ウィンドウズ98による効果を過大視しない風潮が一般的でしたので、我々としてもやや油断した面があります。

-----牧社長はウィンドウズ98への期待を述べていましたが。

 牧 経営者として当然期待しますが、現場サイドではそれほどの期待感はなかったというのが今回の特徴です。しかし、いざふたを開けて見ると、世の中が思っていた以上にウィンドウズ98の影響は大きかった。インパクトそのものはウィンドウズ95登場時の方が上かも知れませんが、当時とはパソコンユーザーの数が違います。産業界に与える影響は間違いなく今回が上です。

-----ウィンドウズ95登場から3年足らずという間隔についてはいかがですか。

 牧 タイミングとしては悪くないと思います。周辺機器メーカーの立場から言わせてもらうと、シリコンサイクルに合わせて欲しいというのが正直なところで、その意味では今回のタイミングは悪くない。ただ、タイミング云々よりさらに大切なことは、あまり大きな波を作らないで欲しいということです。

-----どういうことでしょうか。

 牧 発売時のお祭り騒ぎがマーケットに与えるカンフル剤的な効果は否定しません。しかし、パソコンがすでに産業・社会を支えるインフラ的な存在になりつつあることを考えると、あまり大きな需要の波は望ましくありません。オモチャ的な商品ならばそれでも構わないかも知れませんが、今や必須のビジネスツールとして社会基盤の一角を形成しているパソコンは、安定した供給が必要です。

-----波は不要ですか。

 牧 需要を活性化するような小さな波は毎年あっても良いのです。しかし、パソコンの社会的役割が変わってきた以上、あまりに大きな波は社会全体にも影響を与えます。電力や通信などにつぐ社会インフラとしてパソコンが成長した以上、これを安定して供給するのは業界の責務です。

-----ウィンドウズ98の登場によって最も影響を受ける周辺機器は何ですか。

 牧 ストレージのなかでもとくにハードディスクが伸びています。次がメモリです。また分母は小さいが伸び率の面では液晶ディスプレイ(LCD)とCPUアクセラレータが断然です。

-----ハードディスクが伸びた要因は。

 牧 ウィンドウズ98環境の格納場所として大きな伸びを見せています。従来のHD容量でウィンドウズ98環境へ移行するには不安がありますので、大容量ディスクの追加需要が活発化しています。現在の主力は4GBタイプです。インターネットなどによる画像取り込みが今後さらに一般化するので、ディスク容量は今後も増加し続けることになると思います。

-----増設メモリの主力は64MBですか。

 牧 すでにメモリ全出荷の60%が64MBタイプとなり、128MBも30%を超えています。ウィンドウズ95でもメモリを64MB追加すればパフォーマンスはかなり向上します。これはヘビーユーザーの間では常識ですが、一般ユーザーは意外に知らなかった。ウィンドウズ98の登場を機にメモリの増設効果が一般にも広く知られるようになったので、メモリは今後さらに期待できます。パフォーマンスを上げる最も簡単な方法がメモリ増設であることをもっと強調すべきだと考えています。

 

●急成長の筆頭はLCD、マルチスクリーン追い風に

-----液晶ディスプレイはウィンドウズ98には直接の関係はないような気がしますが。

 牧 ところが大いに関係があるのです。最大の要因はウィンドウズ98のマルチスクリーンです。複数のディスプレイによるマルチスクリーンがなくても、画面を切り換えれば目的を達することはできます。

 しかし、アクションを起こして画面を切り換えるのと、すでに表示されている画面にチラッと視線を走らせるのとでは使い易さがまるで違います。この複数ディスプレイユースでは、スペース的にもCRTでは実現困難です。

-----ウィンドウズ98によって液晶ディスプレイ市場が一気に本格化するとお考えですか。

 牧 LCDがCRTを追い越すのは3年先かも知れない。LCDの本格普及はCRT価格の何倍になった時かという議論がありますが、CRTを代替する前にCRTとLCDの併用期間があります。ウィンドウズ98のマルチスクリーンはこれを促進するはずです。

 CRTかLCDかという二者択一ではなく、LCDでしかカバーできない機能を提供、それをユーザーが認知してくれてはじめてLCDは本格的に普及します。新しい提案ということで、当社のディスプレイビジネスはLCDだけを追求します。

-----LCD普及の大きなポイントである価格についてはいかがですか。

 牧 需要が大きくなれば価格の下がり方も当然速くなります。LCDは1度に取れるパネルの数によって価格が決まりますが、需要が上がることによってメーカーも大型パネルへの設備投資を活発化し、コストが急速に下がることが予想されます。

-----パネル大型化には莫大な設備投資が必要だと聞きますが。

 牧 LCDの主力用途であるノートパソコンを考えて見ても、全構成部材の中でLCDがコスト的に最大比重を占めます。つまりパソコン業界から引き出せる金額が最も大きい分野なので、設備投資の見返りは大きいのです。そしてこの設備投資はDRAMほど多額ではありません。

 

●下期は10%増見込む、使い方提案の姿勢を貫く

-----6月に発売した14インチTFT液晶ディスプレイの10万円を切る価格が現在の限界ですか。

 牧 液晶パネルメーカーの協力姿勢もあって10万円を切る価格が実現できたのですが、今後の技術革新によってコストダウンの余地は充分にあります。LCDはノートPC用が中心で、モニタ用途に生産されているわけではないので、まだ無駄があるようです。6月の新製品については、今後のコストダウン分を仕切価格に反映させることを予定しています。

-----その一方で、大型化も進んでいますが。

 牧 LCDモニタについては15インチが最終的な着地点であるように思います。メモリはどんどん大容量化しますが、人間が見るモニタの大型化には自ずと限界があります。またLCDの解像度についても、XGAないしはSXGAで充分でしょう。

-----LCDモニタ市場の予測を。

 牧 モニタ需要の100%がCRTからLCDに置き替わることはありませんが、追加や置き替えを含めて、数年後には世界で年間1億枚の市場になると見ています。この市場形成にウィンドウズ98の果たす役割は大きいように思います。

-----LCD新製品の販売予測は月間5000台と控えめですが。

 牧 LCDモニタは立ち上がったばかりの市場なのでまだ良く見えない部分が多いのです。現在はまだビジネスとしては小さいのですが、3年後に国内の月間需要が5万台として、その30%のシェアを確保して1万5000台。卸価格を5万円と計算して月額7億5000万円。年間100億円近いビジネスになると見ています。

-----メモリビジネスとLCDビジネスとに違いはありますか。

 牧 技術的には微細化と大型化という反対の方向を辿っていますが、ビジネスとしては非常に似通っています。つまり、今後どこからどのような価格でどんな商品が出てくるかの予測の速さと正確度が、成功への最大のポイントとなるでしょう。

-----今年度の業績見通しを。

 牧 上半期については昨年とほぼ横這い、下半期は10%増と見ており、通期で5%のアップを見込んでいます。下期のアップはウィンドウズ98効果によるところが大きく、とくに14・TFT液晶には大きな期待をしています。

-----メルコの方向性についてはいかがですか。

 牧 パソコンの使い方の提案という基本姿勢は一貫しています。新しい価値の提案、デジタルインターフェイスの提供が当社の役割と考えています。メモリ、ストレージに次ぐ第3の柱としてLCDに注力するのもこの基本姿勢によるものです。

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