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<大塚商会特集> 大塚裕司社長に聞く今年の基本戦略 お客様とともに飛躍する 前編

2008/02/04 19:56

週刊BCN 2008年02月04日vol.1221掲載

 「おしごと2.0 Anywhere! いつでも、どこでも、快適おしごと」――。大塚商会が「お客様目線」でソリューションを展開する意味を込めて打ち出した、2008年に開催する実践ソリューションフェアのメインテーマである。08年2月から東京・品川など全国各地で開催する「実践ソリューションフェア2008」やIT業界の景況感、このコンセプトにもとづく同社の基本戦略などについて、大塚裕司社長に聞いた。

■IT産業には明るい材料が多い

 経済界全体のことは読みにくいのですが、天気にたとえれば「花曇り、時々晴れ」といったところでしょうか。ただ、ことIT業界に関しては明るい材料が結構あると考えています。

 ――今年は、大幅株安など波乱含みの幕開けとなりました。今年の景気動向は、どのような傾向になると分析していますか。

 例えば、マイクロソフトの次期サーバーOS「Windows Server 2008」が今春、市場に投入される。有線、無線を含めて通信環境の広帯域化も大きく進展しそうですから、サーバーとクライアントPCを「つなぐ」環境は大きく変化します。

 昨年1月に販売を開始したマイクロソフトの新クライアントOS「Windows Vista」は、「Windows Server 2008」と対で使用して、はじめて本来の実力を発揮する。こうした環境が整うのが今年です。企業のシステムを快適に使うインフラが整うといっても過言ではないでしょう。

 「西暦2000年問題(Y2K)」の際には、“特需”が発生しました。この時にシステムを変更した企業では、2巡目の更新期に入っています。IT業界の提案次第では、その(Y2Kの)規模より大きくできると思っています。

 内部統制関連では、今年は“実需”に結びつく動きが出てくるでしょう。昨年は、内部統制の仕組み作りを支援するコンサルティングは好調でした。こうして、できあがった仕組みに沿って、内部統制関連の新規IT投資が始まるでしょう。特に、製造業では、子会社や取引先に対して、内部統制対応を求める動きが顕著ですので、かなり奥行きの深い需要があると見ています。

■ユビキタス社会が本格到来

 ――これに加え、WiMAX(高速無線ネットワークの新規格)など、ネットワーク環境を進展させる動きがさまざまあります。

 言葉だけ挙げても、NGN(次世代ネットワーク網)、IPv6、WiMAX、スマートフォン、10ギガビット・イーサネット――など、にぎやかです。

 ――今年のコンセプト「おしごと2.0 Anywhere! いつでも、どこでも、快適おしごと」は、ネットワーク動向などを見込んで提唱したのですね。

 そうです。「コンピュータと通信の融合」時代が到来すると言われて久しいですが、今年はそれがいよいよ本格化すると思っています。外出先でスケジュールや顧客データの確認などが簡単にできるようになります。本格的に「ユビキタス社会」が到来するといってもいいでしょう。

 実は昨年、残業の仕組みを改め実時間支給制に変更しました。モバイル環境を生かして、外出先から報告することで、無理に帰社しなくていいことにしました。その結果、早期帰宅という目標は着実に実現しつつあります。今回の「Anywhere(いつでも)」というコンセプトは、当社の実体験にもとづいたものなんです。

■最先端ITで最善の解決策を提案

 ――社内向けには、今年のスローガンをどう打ち出しましたか。

 「お客様の目線で信頼に応え、お客様と共に飛躍する」としました。現在、当社は73万社のお客様と取引していますが、最先端のITを駆使して、お客様の求める最善の解決策を提案しますので、すべてのお客様とともに飛躍しましょう、という思いを込めています。「いつもお客様の目線でITを考えています」と言い続けて、ミッションステートメントも公表してきましたが、まだ道半ばです。それでも最近は、それなりの形になったため、「新たな飛躍期」に入ったという気持ちも込めてあります。

■ストックビジネスをさらに強化

 ――今年、事業的にはどこに力を入れていきますか。

 すべてです。当社の場合、決算時には「SI関連商品」「受託ソフトウェア等」「サプライ」「保守等」というセグメントで実績値を公表しています。重点戦略事業としては「MRO(maintenance, repair and operations)」「SMILEシリーズ(ソフト)」「ODS21(Otsuka Document Solutions21 for open knowledge office)」「OSM(Otsuka Security Management)」を掲げています。

 また、会社案内では、「システムインテグレーション事業」「サービス&サポート事業」という大きな領域分けをしている。最近は、ストックビジネスを強化しようと社内で檄を飛ばしています。

 ――ストックビジネスとは、具体的にどんな事業領域ですか。

 サービス&サポートなど、定期的に収益をもたらす事業です。サプライ用品、コピーのカウンター料金、ASPサービス、サーバーのメンテナンス――などで、「たのめーる」と「たよれーる」の事業領域になります。安定収入が見込めることは魅力です。

 ――社員数は、微増程度で推移しているにもかかわらず、売上高を着実に伸ばしているのは、このストックビジネスが好影響をもたらしているためですか。

 スポット的なインストールや修理業務などを除いたストックビジネスという観点でみますと、00年度に全体の売上高が3000億円に到達した時点で26%程度を占めていました。一昨年度に同4000億円に達した時には、37%を占めるにまで高まっていました。

 実は、このストックビジネスは、安定収入が見込める反面、お客様の信頼を損ねれば、一気に失います。信頼され、頼りにされ続けること、このことは肝に銘じて今後とも体制作りに取り組んでいきます。

大塚商会=http://www.otsuka-shokai.co.jp/

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