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<セキュリティソリューション特集>変貌するセキュリティ市場 モバイル端末の法人利用やクラウドが拡大

2011/02/03 19:56

週刊BCN 2011年01月31日vol.1368掲載

 個人情報や機密情報の漏えい事故・事件の多発――。企業では、貴重な情報を保護するセキュリティ対策の必要性に関する意識が高まっている。しかし、ワークスタイルが変わってきており、このところ法人向けセキュリティに関するニーズも大きく変化している。例えば会社のデスクトップパソコンで情報をみるか、外出先でスマートフォンを使って情報をみるかでは、当然違うかたちのセキュリティ対策が必要となる。セキュリティベンダー各社は、市場環境が変貌するなかで、新しいビジネスの創造に取り組んでいる。

 2011年、法人向けセキュリティ市場に大きな影響を与えるとみられるのが、iPadやスマートフォンなど、モバイル端末の法人利用の普及だ。

 急成長をみせているモバイル端末は、パソコンの充実した機能と携帯電話の持ち運びやすさをもち合わせ、コンシューマ市場だけでなく、ビジネスの世界でも業務の効率化を図ることができるツールとして注目を浴びている。

 調査会社IDC Japanによると、2010年第3四半期の国内スマートフォン出荷台数(個人・法人ともに)は、前年同期比3倍以上の成長を記録し、155万台となった。2010年のモバイル端末市場全体は、スマートフォンの急拡大にけん引され、出荷台数が約1840万台に拡大。IDC Japanは、2014年の出荷台数は3889万台まで拡大するとみており、2010年の2倍以上の市場規模を見込んでいる。

モバイル端末のリスクを懸念

 モバイル端末の普及は、とくに法人分野ではセキュリティベンダーにとって大きなビジネスチャンスを生みそうだ。法人がモバイル端末を利用する場合は、コンシューマの利用と異なり、モバイル端末を使って社外秘の機密情報を見たり、顧客などの個人情報を扱ったりするので、個人利用よりも数段しっかりしたセキュリティ対策が欠かせないからである。モバイル端末のセキュリティは、マルウェアによるウイルス感染だけでなく、端末の紛失や盗難の際の情報漏えいを防ぐなど、幅広いニーズに対応する必要がある。

 セキュリティサービスの検査などを行うラックが運営する「スマートフォンセキュリティ研究所」の加藤智巳上級研究員は、スマートフォンをはじめとするモバイル端末の法人展開にあたって最も大きな課題となっているのは、セキュリティ上のリスクだと断言している。加藤研究員は、「スマートフォンは、パソコンと携帯電話のメリットをあわせもつが、それを使う際のリスクも大きい」と語る。

 モバイル端末は便利な一方、リスクが高いため、導入を躊躇する企業が多いという。


クラウド関連 セキュリティも商材に

 こうした事情を背景に、セキュリティベンダーやキャリアは、モバイル端末向けセキュリティの事業化を推進している。セキュリティ製品の展開にあたって、重要なキーワードとなるのが、セキュリティベンダーと端末メーカー/キャリアとの強い連携だ。キャリアがセキュリティベンダーとの協業で法人需要に最適したスマートフォン向けセキュリティサービスを開発し、キャリアのブランドで展開するという事例が、今後増えていきそうである。

 モバイル端末の普及に加え、企業においてのクラウド利用の拡大が、セキュリティ市場の伸びにつながる商材として期待されている。モバイル端末向けセキュリティとクラウド関連セキュリティの展開を柱に、セキュリティベンダーが事業拡大に向けた取り組みを加速化。IDC Japanは、2014年には、セキュリティソフト市場が2252億円に、セキュリティアプライアンス市場が421億円に、セキュリティサービス市場が9745億円に拡大する見通しを示している。ベンダー各社の期待が、統計の数字に裏づけられている。

 この特集では、代表的なセキュリティベンダーの最新の取り組みを紹介する。

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