ユーザー企業は、仮想化技術が登場したことで、既存のサーバーを有効活用することができるようになり、コスト削減に成果を上げるようになった。しかし、デメリットも顕在化した。それが情報システムの運用管理業務の複雑化だ。情報システム管理者は、物理システムと仮想化したサーバーの両方の運用業務もこなさなければならないだけでなく、習得すべきテクノロジーが多くなって、管理作業も増大することになった。そんな悩みを解決するのが、統合運用管理ツールだ。システムが複雑化した状況にあって、統合運用管理ツールの存在が注目されている。
仮想化で管理業務の負担が増大
統合運用管理ツールとは、情報システムの安定稼働をサポートするもので、情報システム管理者の業務を軽減するのに効果を発揮する。サーバーの稼働状況やネットワークのトラフィックを常時監視し、トラブルが発生しそうな場合は、それをシステム管理者に伝えたり、アクセスが集中して動作が不安定なサーバーやネットワークを見つけ出して、他のサーバー・ネットワークに処理を自動分散させたりする機能をもつ。
大半の大手コンピュータメーカーは、この統合運用管理ツールを商品化しており、機能で分けて複数のソフト・サービスを用意している。主に大規模なシステムを運用するユーザー企業や団体が利用するケースが多く、地味な分野だが、底堅い需要が期待できる。
この統合運用管理ツールが今、注目を集めている。その理由は、ユーザーのシステム環境が変化していることにある。仮想化技術の登場で、ユーザーは物理と仮想の二つのシステムを運用するようになり、一部ではクラウドも活用している。以前のシステム管理者は、物理システムを管理・運用していればよかったが、今は違う。物理、仮想、プライベートクラウド、パブリッククラウドという多様なシステムをすべて運用管理しなければならず、求められるテクノロジースキルは増大し、業務の幅も広くなった。にもかかわらず、システム管理の人員は増えていないのが現実。システム管理者はツールに頼らなければ、仕事をこなせない状況で、統合運用管理ツールを求める声が増えてきたのだ。
安定して成長する有望市場
IT調査会社のIDC Japanが2012年9月に発表したレポートでは、2011年の国内システム/ネットワーク管理ソフトウェアの市場規模は、前年比1.6%増の2789億8900万円。11~16年の年平均成長率(CAGR)は2.5%で、16年には3155億円に到達するという予測を示している。IDC Japanは、「(管理ソフトは)今後欠かせないツールだ。複雑化していくシステムを可視化して全体を把握するというニーズが高まっていく」と予想。今後も中期的に安定した需要が見込めると分析している。
仮想化とクラウドの登場によって、コストの削減につながり、端末ユーザーの利便性が向上した一方で、システム管理者は以前よりも苦労している。仮想化やクラウドが生んだ運用管理の負担増大という問題を解決するツールとして、統合運用管理ツールは効果的であることは間違いない。SIerにとっては、ユーザーに提案する商材として魅力的で、データセンターを運営するITベンダーにとっては、自社の運用管理業務を減らすために有効だ。ITベンダーにとって、統合運用管理ツールをユーザー企業に改めて提案する絶好の機会が訪れている。