来年4月1日の消費税率引き上げを前に、企業のシステム対応はいよいよ待ったなしになっている。とくに会計・財務を中心とする基幹業務系のシステムは、消費税率を単純に8%に設定し直せば済むというわけではなく、4月以降の実際の業務フローを踏まえたさまざまな準備が必要だ。業務ソフトウェアの販社が、ユーザー企業にシステムの消費税改正対応を提案する際に、気をつけるべきポイントを、業務ソフトベンダー各社への取材をもとに整理した。

<販社が押さえておくべき 7つのポイント>

【point 1】経過措置への対応を万全に――「便利機能」搭載ソフトを視野に入れる

 多くのベンダーが、来年4月の消費税改正で最重要ポイントに挙げるのが、経過措置への対応だ。日常の買い物では4月1日から消費税が8%になるだけだが、ビジネス上の取引では、契約、支払い、受け渡しにタイムラグが発生することはよくあることで、これが4月1日をまたぐケースも多数発生するだろう。

 こうした取引で、一定の要件を満たす案件は、4月1日以降も旧税率が適用される場合がある。例えば、請負工事などは、契約から資産の譲渡までの期間が長いことから、新税率適用の半年前までに契約した案件には、旧税率が適用される。リース契約や割賦購入、資産の貸付け、旅客運賃の前受けなども注意が必要だ。

 経過措置への対応で、業務システムの機能でカバーできる部分はそれほど多くない。仕訳を完全に自動化することはできないので、人間が判断して適宜税率の設定・修正を行う作業が必要になり、ユーザー側が運用で対応するのが基本だ。ただし、パッケージソフトによっては、アラートを出したり、経過措置の適用を受ける取引パターンを登録できるなど、経過措置対応の「便利機能」を備えているものもある。業種ごとに経過措置の対象となる取引の多寡は異なるので、販社にはユーザーの業務内容を理解したうえでの提案が求められる。

【point 2】ITインフラにも更新需要――「Windows Server 2003」もサポート終了

 来年4月9日には、「Windows XP」のサポートが終了する。消費税改正のタイミングとほぼ同時であり、相乗効果で企業のIT投資が大幅に増加している。

 意外に見落とされがちなのが、「Office 2003」も同時にサポート終了となることだ。さらに、「Windows Server 2003」も2015年7月にはサポートが終了する。

 業務システムの消費税改正対応だけでなく、PC、サーバーの入れ替えなど、ユーザーのITインフラにもしっかり目を配り、将来にわたるシステム運用の柔軟性や効率性を妨げない提案をする必要がある。タイミングを逃すと、二重三重に駆け込み対応をしなければならなくなり、ユーザー、販社ともに不必要な消耗を強いられる恐れがある。

【point 3】会計システム周辺の影響もあらためて整理――特定業種向けソリューションなどの活用を

 会計システムだけでなく、販売管理や生産管理、給与計算、固定資産の管理システムなどにも、当然、消費税改正の影響は出てくる。既存システムにおける影響範囲を「棚卸」して、正確に把握したうえで対応を考える必要がある。

 業務ソフトは、特定業種向けのソリューションや業種別のテンプレートが用意されていることも多く、消費税改正のタイミングに合わせて、ベンダー各社はさまざまな機能モジュールを一体的にアップデートしている。

 また、周辺のシステムとして、申告書や見積書、請求書などの帳票類やPOSレジシステムなども何らかの対応が必要になる。業務ソフトベンダー各社は、これらの周辺システムのベンダーを協力パートナーと位置づけて、連携しながら製品の消費税改正対応を進めている。

 社内システムの消費税改正対応を、単なるコストではなく、経営改善に役立つ基幹業務システムを確立するチャンスと捉えれば、業種別パッケージや、連携ソリューションに目を向けることも有効だ。

【point 4】データ移行は販社の大きな商機――ユーザーの独自対応は困難

 消費税改正を機に業務システムをリプレースするユーザー企業は、新システムへのデータ移行が必要になる。業務ソフトベンダーは、データ移行の支援ツールなどを提供する施策を打ち出しているが、とくに中小企業では、ユーザー企業それぞれが単独でデータ移行に対応するのは困難だ。販社にとっては、データ移行サービスを核にして、ユースウェアビジネスを伸ばす大きなチャンスといえる。

 また、ベンダーによっては、これをサービスメニュー化して、販売パートナーがサービスを提供するかたちにしているところもある。

 ポイント2で述べた「Windows XP」のマイグレーション問題などにより、PCやOSの買い替えが同時に多数発生しているので、データ移行が必要なユーザーは非常に多く、こうしたサービスのニーズは大きい。

【point 5】2015年10月時の消費税改正が「本番」――業務ソフトの機能が大きく変わる

 今回、消費税は2段階で引き上げられる。来年4月1日の8%への引き上げは1段階目で、その1年半後、2015年10月には10%となる予定だ。ただし、10%への引き上げ時は、今回のように単純に税率が変更されるだけでなく、生活必需品などの税率を軽減する「複数税率」が導入される可能性が高い。

 仮に複数税率が導入されれば、業務システムへの影響は今回の比ではない。経過措置への対応と合わせて、品目の区分け設定やシステム運用は非常に複雑になる。

 また、企業は販売、仕入れを含むすべての取引で、商品ごとに異なる税率を正確に把握しなければならなくなる。これを担保するための制度として、商品の納入者が商品ごとの税率・税額を記載したインボイス(請求書か納品書)を仕入れ側に提供する「インボイス方式」が導入される可能性も取り沙汰されている。これが現実になれば、帳票類のあり方はドラスティックに変わることになる。

 各業務ソフトベンダーも、2段階目の消費税改正対応時は、「機能を大きく変えることになるだろう」と口を揃える。改正の詳細が決まっていないので、対応製品の開発はこれからだが、このタイミングで大規模かつ細かいカスタマイズを施した業務システムのリプレースを行うのは、あまり賢い選択とはいえないだろう。

【point 6】 手組み、大規模なカスタマイズの限界も――税制改正はこれで終わりではない

 手組みで構築した業務システムを使っている企業などは、今から消費税改正対応に乗り出すのでは間に合わないという段階に来ている。こうしたユーザー企業のパッケージソフトへの乗り換え需要は、非常に大きい。また、パッケージソフトのユーザーであっても、カスタマイズユーザーは、カスタマイズ部分を手直しする必要があるので、ベンダー側もきめ細かく案件管理をしながら、早めの対応を促してきたという。

 消費税の改正は、10%への引き上げが最終段階とは限らない。日本の財政赤字の状況や、少子高齢化により生産年齢人口がどんどん減少していくことを考えれば、所得課税に過度に依存していては国の財政は成り立たない。そのため、さらに段階的な消費税引き上げがなされる可能性もある。

 こんな状況を考慮すると、とくに中堅・中小企業では、手組みでの業務システム構築やパッケージソフトに大規模なカスタマイズを施すといった選択はしづらくなるのは間違いない。将来のさらなる税制改正にも柔軟に対応できる業務システムを意識した提案が不可欠だ。

【point 7】95%ルール厳格化で控除方法の選択が重要に――税率が上がるほど納税額に大きな差

 2011年6月の税制改正により、昨年4月から、95%ルールが厳格化された。95%ルールとは、売上全体に占める課税売上の割合が95%以上の企業は、仕入税額を全額控除できるという制度だ。しかし、昨年4月以降、課税売上高が5億円以上の企業は、95%ルールの適用対象ではなくなり、仕入税額を全額控除できなくなった。当然、控除できない仕入消費税は企業が納付するわけで、消費税率が上がれば企業が納付する額も増える。

 全額控除できない企業は、「個別対応方式」か「一括比例配分方式」かのいずれかを選択して、仕入税額控除額を計算することになる。しかし、どちらを採用するかによって、納税額には差が出る。つまり、企業ごとにどちらを選ぶかで有利不利が発生するということだ。また、単純に納税額の差だけでなく、業態によっては、事務処理の負荷を考慮して決定する必要も出てくる。

 パッケージソフトのなかには、どちらの控除方法が有利かという判定や、選択した控除方法に従ったシステム運用をサポートする機能をもつものもあり、提案のフックになりそうだ。

epilogue

 財政構造の転換点にある日本では、税制も流動的だ。企業の基幹業務システムも、拡張性や柔軟性に乏しい硬直化したものでは、対応できなくなりつつある。一方で、基幹業務システムには、業務の効率化にとどまらず、企業の業績向上により直接的に貢献するという役割が求められるようになってきている。販社は、ITインフラの構築から業務ソフトウェアの選択まで、ユーザーのニーズに寄り添った提案をする必要がある。場合によっては、それを先取りする先導者としての役割も求められているのだ。