日本ヒューレット・パッカード(日本HP、小出伸一社長)は、デスクトップ型インクジェット複合機/プリンタの新製品「HP Officejet Pro X シリーズ」で、オフィス向けプリンタ市場への本格的な参入に踏み出した。グローバルではプリンタ市場で大きなシェアをもつが、日本HPのプリンタビジネスはこれまでコンシューマ中心だったこともあって、オフィス向けプリンタ市場での存在感はそれほど大きくなかったのが事実。「HP Officejet Pro X シリーズ」は、日本国内でのプリンタ事業を大きく伸長させるポテンシャルをもつ旗頭の役割を果たす戦略製品だ。日本HPでは、パソコンを売る代理店網を使って拡販を図っていく。

日本HPでは「HP Officejet Pro X シリーズ」の発売を機に記者発表会を開催した

まずはシェア15%、最終的に40%を狙う

プリンタ事業を統括する
岡隆史
日本HP取締役副社長
執行役員
 2013年11月に開いた記者発表会では、日本HPでプリンタ事業を統括する岡隆史取締役副社長執行役員が登壇して、「やっとこの市場で戦える製品を販売することができた。『HP Officejet Pro X シリーズ』は、オフィスプリンタの常識を変える」とアピールし、これまでパソコンを売ってきた約4000社に上る販売代理店網を使って本格的な拡販に乗り出す方針を明らかにした。

 この販売代理店の売る意識を高めるために設けたのが、プリンタ関連の販売支援制度「BIJ(ビジネスインクジェット)パートナープログラム」だ。販売支援制度の設置は、これまでコンシューマを中心にプリンタの拡販を図ってきた日本HPが販売代理店とのパートナーシップを深めて、「日本市場でも、オフィス向けのプリンタビジネスを本気でやる」(岡取締役副社長執行役員)ということを表していることが分かる。オフィスにHPブランドのパソコンを広めたときと同じようにインクジェットプリンタを普及させていく考えだ。

 シェアについては、「具体的な数字はいえない。しかし、ビジネス向けパソコンは15%程度のシェアであり、同じ販売チャネルで売るからには、まずは同じくらいのシェアを狙いたい」という。加えて、「グローバルでのインクジェットプリンタのシェアは約40%。そのため、米HPからは最終的に同水準のシェアを獲得するよう期待されている」と説明している。


最速印刷70枚/分など多彩な機能を搭載

米HPのブラッド・フリーマン氏
 また、記者発表会では、米HPでインクジェットプリンタのハードウェアプラットフォーム開発の責任者を務めるブラッド・フリーマン氏が来日して、「HP Officejet Pro X シリーズ」のデモを交えながら、製品のメリットをアピールした。フリーマン氏は、「HPのインクジェットプリントモジュールは18か月ごとに2倍のパフォーマンスになっている」と、優れた開発力を訴えていた。

 米国本社の幹部が強調するように、今回の「HP Officejet Pro X シリーズ」では、HPの次世代インクジェットプラットフォームをデスクトップ型プリンタとして初めて搭載して、ビジネス用途に適した機能を多彩に盛り込んでいる。高速のプリント機構と速乾性を飛躍的に向上させた新開発の顔料インクを採用。カラー、モノクロともフラッグシップ機で最速70枚/分という高速印刷を実現している。この価格帯でのオフィス用デスクトップ複合機/プリンタで、レーザー、インクジェットを問わずギネスの世界最速印刷記録として認定されているのだ。

 ランニングコストも訴求ポイントで、同じ価格帯のレーザープリンタと比べて最大で50%の削減を実現している。さらに、実質インク使い放題の定額サービス「インク定額パック」を新たに追加。インクカートリッジと本体保守サービスを単品購入する場合と比べ、印刷コストを約30%削減可能で、レーザープリンタ比では最大63%のコスト削減効果が期待できる。

 加えて、定額パックユーザーは、プリンタ本体に実装されたEWS(プリンタに組み込まれたウェブサーバー。ネットワーク越しにプリンタのさまざまな管理が可能)に備わるEメールアラート機能を使ってHPのEメールアドレスを登録しておき、インクカートリッジ交換の目安となるインク残量を設定しておくと、HP側に自動でEメールのアラートが送信され、インクカートリッジが自動で配送される「インクサプライ自動補充」サービスも利用できる。管理工数の削減にも大きく寄与するわけだ。



3~15人で共用する用途をイメージ

松本達彦
日本HPプリンティング・パーソナルシステムズ
事業統括プリンティングシステムズ事業本部長
 「HP Officejet Pro X シリーズ」の対象となる具体的なユーザー企業について、日本HPの松本達彦プリンティング・パーソナルシステムズ事業統括プリンティングシステムズ事業本部長は、「社員数1000人程度までの中堅企業をメインターゲットに、支店やローカルオフィス、部署単位など3~15人で共用するケースを想定している。とくに、IT管理者がいない拠点には非常に有効」としている。早くて、カラーが安い少量印刷のニーズは高まっている。3~15人の少人数で1台を共用するという用途を実現する「HP Officejet Pro X シリーズ」のコンセプトと合致しており、「ターゲット層に十分訴求できる」と自信をみせる。

 業種については、一般オフィスをはじめとして幅広く想定しているが、ワールドワイドでは不動産や旅行、教育、金融・保険、ハイテク産業、病院など小ロットのカラー印刷を素早くローコストで実現したいという業種で導入が進んでいるようだ。

 日本HPがインクジェットプリンタでビジネス向けプリンタ市場に本格的に参入したことによって、プリンタ市場の勢力図が変わる可能性が出てきた。今後の動きに注目が集まる。