IBMのクラウド「SoftLayer」が順調にビジネスを拡大している。正確にパフォーマンスを予測でき、サービス品質にも貢献するベアメタルクラウドを評価するユーザーは多かったが、これに加えて、昨年12月22日には待望の「SoftLayer 東京データセンター」が稼働を開始。国内にデータを置きたいというユーザーの要望にも対応できるようになった。IBMでは、SoftLayer事業をどのように位置づけているのか。そして、SoftLayer上で開発環境を提供するPaaSの「IBM Bluemix(Bluemix)」の魅力とは。国内でビジネスパートナー施策を含めて、日本IBMでクラウド事業を統括する小池裕幸執行役員に話を聞いた。


東京DC開設が追い風 ベアメタルの価値を評価

 「12月の東京データセンター(DC)稼働開始から5か月が経過しようとしている。昨年立ち上げた他のDCと比べても、順調にユーザーを増やしており、かなり成功しているサイトであると自負している。パートナーも200社を突破した」と小池執行役員は胸を張る。

 SoftLayerの好調の要因としてあげるのが、ベアメタル(物理サーバー)の価値だ。クラウドをコストだけでなく質に目を向けるユーザーが増えるなかで、ベアメタルを特徴とするSoftLayerが高く評価されているというのだ。

 従来の仮想サーバーベースのパブリッククラウドでは、複数ユーザーがハードウェアを共有する、オーバーヘッドロスが大きいなどから、1サーバーあたりのパフォーマンスを予測しにくい。これに対して、SoftLayerのベアメタルクラウドは、極めて正確にパフォーマンスを予測できるし、セキュリティ面でも安心だ。このことがHPC用途など「品質」を重視するユーザーを中心として多くの支持を集めている。

 「世界的にSoftLayer関連ビジネスの6割はベアメタルが占めており、日本はもう少し多い。とくに他社のサービスで、パフォーマンスに物足りなさを感じているユーザーにSoftLayerは選ばれている」と語る。

 パートナーについては、SoftLayerおよびBluemixの上で何らかのサービスを提供する事業者を増やしていくという方針のもと、CSP(クラウドサービスプロバイダ)や、マネージドサービスを手がけている事業者が増えている。パートナーのうちリセラーについて小池執行役員は、「物販を中心に行ってきた従来タイプの方々と、クラウドに特化した方々と半々程度の割合」と語る。

ユーザーがクラウドを求める パートナーは発想の転換が必要

 また、クラウドに特化したリセラーにとっては、他社を含め扱うパブリッククラウドのサービスメニューが一つ増えるだけであるため、参入障壁はほとんどない。だが、従来からIBM製品を扱ってきたリセラーの方々には、今後、SoftLayerのビジネスを進めていくうえでは、発想を転換してもらう必要があるという。

 「今では、ユーザー自体がクラウドによるソリューションを強く求めている。そうした求めに、うちはまだ経験がありませんとは言えなくなっている。とくに、ユーザーの投資が盛んなフロント系ソリューション、例えば、モバイル系、ソーシャル系などの新しいアプリケーションは、クラウド上で開発される。そのため選択肢として、SIerはクラウドのソリューションを必ず提案しなければならない状況だ」と小池執行役員は説明する。

 以前は、PCで開発するのがあたりまえであったアプリケーションが、iPadのようなスマートデバイスで開発される時代となってきた。こうした開発では、バックオフィス向けのようにプログラムを書く能力だけが求められるのではなく、アイデアを出すことも求められる。しかも今では、事前に要件定義をして、システムの処理能力を決めて、ウォーターフォール型で開発していては、ビジネスのスピードについていけない。必要なときに、必要なだけITリソースを用意して、開発スタイルもアジャイルやウェブ系の開発こそ主流となっている。「それができなければ仕事がこない時代になっているだけに、パートナーの方々にとっては、新しい開発スタイルに対応できる人材の育成が急務」という。

 パートナーを支援するため、ビジネスパートナー事業部では、パートナー向け研修を頻繁に開催している。また、新たなパートナーのリクルーティングとコミュニティの活性化の一環で、2月12日にはIBM SoftLayerコミュニティ主催の技術カンファレンス「Japan SoftLayer Summit 2015」も開催した。

バックオフィス連携が重要「Bluemix」にビジネスチャンス

 一方、基幹系システムに関わるクラウドの需要では、Windows Server 2003サポート終了への対応を挙げる。サーバーのリプレースを検討するのを機に、基幹システムのクラウドへの乗せ替えを検討するニーズが増えている。

 小池執行役員によると、現在、フロントアプリケーションの91%がメインフレームとデータ連携している。それだけに、クラウドとバックオフィスの連携がより重要になってくる。そのため、「従来からのIBM販社は、こうした連携には豊富なノウハウをもっており、強みが発揮できるはずだ。ただし、フロントアプリケーションをつくる技術ももっていることが前提になる」と指摘する。

 パートナーのフロントアプリケーション開発を強くサポートしてくれるのが、IaaSのSoftLayer上で開発環境を提供するPaaSのBluemixだ。多くのSaaSがコンポーネントとして含まれており、クラウドでの開発が初めてでもすぐに実用的なアプリケーションを開発できることが売りだ。Bluemixでは、オープン戦略を掲げている。実行環境としてはJava、Node.js、Ruby on Railsなど最新の開発プラットフォームをサポートしている。また、Bluemixのボイラープレート(テンプレート)を使うことで、素早くプロトタイプの開発ができる。

 今後は、例えば郵便番号やJANコードなど日本の標準に対応した、業務・業界に特化したものが必要だと考えている。それが揃ってくれば、かなり早くアプリケーションの開発ができるようになる。さらに、開発者はマーケットプレイスを通じてアプリケーションが提供できるため、ビジネスにすることができる。

 「SoftLayerは飛行場のようなフィールドにすぎない。それに対して、Bluemixは飛行機だ。パートナーの方々には、とくにBluemixにフォーカスしてお金を稼いでほしい」と小池執行役員は力を込める。

 加えて、「今後のアプリ開発においては、部品化して、それを状況に応じて自由に組み替えていくような、コンポーザブルの実現が重要になる。そのためにも、できるだけ多くのテンプレートやアプリケーション、サービスを充実させて、日本におけるコンポーザブル・ビジネスを定着させていきたい」との考えを示す。


既存のハードウェアとつなげる コンサルできる人材が不可欠

 クラウドファーストとはいえ、オンプレミスも依然として残るため、多くの企業ではハイブリッド環境となる。そうした環境でのニーズに向けては、昨年12月にSoftLayerでのシングルテナントサービス「Bluemix Dedicated」の提供を開始した。そして今夏にはBluemixのオンプレミス版もリリースする。

 また、IBM i(旧AS/400)やUNIX系のAIXなどのIBM独自OSを搭載する「IBM Power Systems」といった既存の基幹システムとBluemixの間でセキュアなデータ連携を可能にする「Secure Passport Gateway」を発表している。また、今夏には「Data Gateway」というツールもリリースする予定だ。

 現場でいくらいい発想が出ても、そのベースとなるさまざまなデータのありかを把握しているのは、情報システム部門に限られる。だが、情シスの立場からすると、すべての情報をオープンにはできない。そこで、セキュリティのランクづけをして管理するなど、通常のバックオフィスアプリと同様のつくり方を考える必要がある。小池執行役員は、「そのようなニーズに対応して、より使いやすいシステム環境の実現に貢献する」としている。

 また、新しいシステム環境において求められるのが、クラウドのコンサルタントであり、「ビジネス側の人と話ができる技術的なコンサルタントと、IT部門の変革をリードできるコンサルタントの2タイプが求められる」と語る。

 とくに後者については、本当に変革を実現するにあたって、第三者的な視点が必要になる。企業のIT部門の担当者は日頃、社内をみているので、どうしても発想が限られてしまいがちだ。実際、自社のIT部門の変革を日本IBMに依頼してくるケースが増えているという。

 「いずれにしても、Bluemixでの開発は新しいビジネスモデルになるので、パートナーの方々も人材を育てていかないと、これからのビジネスに参入することができない。しかも、クラウドビジネスが本格化した今こそが、パートナーの方々にとって儲けるための最大のチャンス。ぜひ、その機会に乗り遅れることなく、ビジネスを成功させてほしい」と、小池執行役員はエールを送る。


IBMのハイブリッドクラウド戦略やSoftLayer、Bluemixの情報はこちらから
http://www.ibm.com/cloud-computing/jp/ja/