日系企業が中国でクラウドサービスを利活用するには、南北問題やICP登録といった日本にはない独特の事情を把握し、適切な措置をとることが不可欠だ。しかし実際には、専門のIT担当者を社内に確保できている日系企業は多くなく、本格的なクラウド利活用を実現することは容易ではない。ニフティとクララオンラインが提供するパブリッククラウド「鴻図雲(ホンツーユン)」は、まさにこうした課題を抱える日系企業にとって最適なサービスだ。日本国内でニフティが培ってきたパブリッククラウドの技術力と、中国国内で豊富なコンサルティング実績をもつクララオンラインのビジネスノウハウを組み合わせ、日系企業が抱える業務課題の解決を一括して支援する。

ニフティ 渡邊太郎 課長(左)
客乐来技术咨询(北京)有限公司 中戸川浩
副総経理

 大手インターネットサービスプロバイダのニフティは、2010年から「ニフティクラウド」のブランドで、パブリッククラウドを日本市場で提供している。VMware仮想化基盤を採用した高信頼性・高品質なIaaS(Infrastructure as a Service)として、この6年間で4500社を超えるユーザーを獲得してきた。ニフティの渡邊太郎・クラウド事業部クラウドインテグレーション部課長は、「Amazon Web ServicesやMicrosoft Azureなどの大手外資ITベンダーが提供するクラウドにも引けを取らない、有数の日本産クラウドに成長してきた」と自信をみせる。大規模なコンテンツ配信を行うゲーム企業を皮切りに、最近では業種・業態を問わず幅広い企業にまでユーザー層が拡大している。

 一方のクララオンラインは、約8年前に中国市場に進出。物理サーバーホスティングなどのITインフラに加え、中国の法制度への適切な対処など、日系企業が抱えがちな中国独特の課題克服に向けたきめ細やかなコンサルティングサービスを提供し、ビジネスノウハウを蓄積してきた。

 こうした両社のもつ優位性をかけ合わせて、中国で最新鋭のパブリッククラウドを提供することを目的に誕生したのが「鴻図雲」だ。もともとは、「ニフティクラウド」の技術OEMの供給を受けたクララオンラインが、自社のインフラ基盤上で試験サービスとして12年から提供してきたものだが、よりユーザーの要望に応じやすい枠組みを目指して、昨年4月からは両社の共同展開の形に発展し、現在は共同で運営・販売を行っている。クララオンライン中国法人の中戸川浩・副総経理兼技術運用部経理は、「本田技研工業(中国)投資様などの大手企業にも採用いただいており、最近では、広告代理店のキャンペーン活動や、企業ウェブサイト、ゲーム配信のプラットフォームなど、多岐にわたる用途で導入事例が増えている」と話す。日本で提供しているアプリケーションを中国市場でSaaS(Software as a Service)提供したいというITベンダーからの案件も増加中だ。

 「鴻図雲」は、クララオンラインのインフラ環境上に、ニフティのクラウド技術を構築してあるため、日本の「ニフティクラウド」と同等のVMware仮想化基盤による高信頼・高品質なサービスを中国国内でも利用できることが特徴だ。コントロールパネルも「ニフティクラウド」のデザインを踏襲しており、日本語・中国語・英語のマルチ言語に対応している。

 また、中国のパブリッククラウド事業者は、中国電信や中国聯通といった特定の通信キャリアのデータセンター(DC)を採用しているケースが多く、その結果として、ユーザーのインターネット接続性が悪くなってしまう「南北問題」が顕在化しているが、「鴻図雲」は中国の民間ISP企業が提供しているIDCを採用し、中国の5つの通信キャリア(中国電信・中国聯通・中国移動・科技網・教育網)とのBGP(Border Gateway Protocol)接続に対応しているので、こうした中国特有の問題を解消している。ユーザーは、南北問題を気にすることなく、あらゆる通信キャリアの配下にある中国全土のネットワーク環境にコンテンツを配信することができるのだ。

 これに加え、クララオンラインの中国ビジネスノウハウを生かしたコンサルティングを提供できることが、「鴻図雲」の最大の強みとなっている。ユーザーは、ITリソースだけでなく、クラウドを利活用するためのビジネス環境の整備までを一括して任せられるのだ。例えば、社内にラックを置いてサーバーを管理している日系企業が、クラウドへの移行を検討しているケースだ。日系企業では、人員が限られていて社内に専門のIT担当者を抱えていないことが多く、適切な方法でシステムを移行することは難しい。日本本社の情報システム部門に相談しようにも、中国のシステム環境が具体的にどんな問題を抱えているのかを、独特の事情を踏まえたうえで説明することは容易でない。中国現地のIT事情に精通しているニフティとクララオンラインが、こうした中国に駐在している日系企業の担当者の悩みを代弁するかたちで、日本本社とのやり取りにも柔軟に対応し、コミュニケーションの壁を取り除くことができる。中戸川副総経理は、「われわれの役割は、ITを販売することではなく、お客様の業務課題を解決すること。クラウドの利用は、その解決策の選択肢のひとつに過ぎない。どんな些細な困りごとでも、ご相談いただければ全力で解決に結びつける」と話す。

 両社は、今後もさらなるサービス強化を予定している。クララオンラインは、今秋にクラウドメールサービスの提供を新たに開始する計画だ。鴻図雲の安定した基盤上で提供し低コストでの利用が可能なSaaSとなる。中国では、メールサービスの利用にあたって必要となるドメイン、メールサーバー、端末をそれぞれ別のIT企業から調達している日系企業が多く、契約管理などに非常に手間がかかる。そこで、これらのメールに関するすべてのリソースをワンストップで提供することで、より手軽に利用できる形を目指している。また、本サービスではセキュリティ対策のオプションとして、添付ファイルの暗号化サービスも提供するなど、中国国内でのニーズに即した仕立てを行っている。

 またニフティは、日本の「ニフティクラウド」を利用する製造業でIoT(Internet of Things)利活用の要望が高まっていることを受けて、IoTデザインセンターを開設している。渡邊課長は、「これは、お客様のIoT活用に向けたアイデアを形にするプロセスを支援するもの。IoTシステムのプロトタイプの制作や実証実験などを、当社の環境でご利用いただける」と話す。こうした日本での事例を横展開し、今後は鴻図雲とともに中国の日系企業のIoT利活用もバックアップしていく考えだ。鴻図雲の展開に加え、両社それぞれの強みを生かしたサービスラインアップを拡充させ、中国における日系企業に対し、今後もより強固な支援を行っていく。両社の動きに注目したい。