GPGPUでAIビジネスの開拓も

 GPUはその進化とともに、単なる画像処理用チップの域を脱し、用途が大きく広がった。デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するための主要テクノロジーの一つと位置づけられるAIのインフラへの活用もその一つ。一方で、ハードウェアとしての軸だけでなく、GPUテクノロジーのメリットを仮想環境でも享受しようというソフトウェア領域での技術開発も進み、VDIソリューションなどのポテンシャルを拡張している。ソフトバンク コマース&サービス(ソフトバンクC&S)は、GPU市場で圧倒的なシェアを誇るトップメーカーであるNVIDIA(エヌビディア)とパートナーシップを結び、DX時代のニーズを捉えた新たなGPU関連製品を市場に提供する。

GPU仮想化で
“CAD on VDI”がスムーズに

 ソフトバンクC&Sは、今年1月に米NVIDIAと販売代理店契約を結び、正規一次代理店のディストリビュータとして同社製品の取り扱いを始めた。HPCやデータセンター向けのGPU「Tesla」、ワークステーションなどに使われるグラフィックスボード「QUADRO」、AI/ディープラーニング向けのアプライアンス製品「DGX」、GPU仮想化ソフトウェア「GRID」と、4種類の商材を扱う。
 
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NVIDIA DGX Station
 
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ICT事業本部MD本部
ハードウェア統括部
統括部長
菅野信義氏

 なかでも、ソフトバンクC&Sがとくに拡販に注力するのが、GRIDだ。ICT事業本部MD本部ハードウェア統括部統括部長の菅野信義氏は、「HCIをインフラとして活用したVDIソリューションなど、仮想化のビジネスは数年前に立ち上がり、順調に実績を積み重ねるとともにノウハウも蓄積してきた。まずはそれを生かすかたちでGRIDのソフトウェア・ライセンスを市場に広げていく。NVIDIAからも当社に対してはそこを強く期待されている」と説明する。

 現状、GRIDの用途としては、仮想デスクトップ上でCADを操作するような使い方が強い支持を受けているという。ICT事業本部MD本部MD戦略室の今野一平氏は、次のように説明する。「例えば、メーカーの設計者やエンジニアの方がモバイルワークステーションでCADデータを持ち歩くと、紛失した場合、機密性の高いデータが流出してしまう危険がある。こうしたユーザーでは、エッジ側にデータを残さないCAD on VDIが数年前から検討されていたが、データが重く、通常のVDI環境ではストレスなく動かすことはできなかった。しかし、GRIDを使えば、エッジ側でデータをもたなくても快適にCADを動かすことができる。3DCADやBIM(Building Information Modeling)のような3Dモデルを使う製品が日本でもようやく一般的になってきたこともあり、より重いデータをCAD on VDIでセキュアかつスムーズに動かしたいというニーズは大きくなっている」。

 さらに、「Windows 10」をゲストOSとしてVDIで動かす場合も、GRIDは有効だという。Windows 10は「Windows 7」などに比べてグラフィックスリソースを大量に消費するため、通常のVDI環境ではCPUへの負荷が過大になってしまう。菅野氏は、「GRIDが威力を発揮するシーンは非常に幅広く、VDIをストレスなく使いたいというお客様なら使って損はない。市場のオポチュニティも大きいとみている」と話す。

 なお、GRIDを動かすためのインフラはTesla GPU搭載の汎用IAサーバー、エンドユーザー側のデバイスはGPUを搭載していないPCやスマートデバイス、シンクライアントなどで問題ない。ソフトバンクC&Sは、VADとしてのノウハウを生かし、GRID向けのハードウェア推奨構成なども検討し、リセラーがGRIDを売りやすくなる環境を整備していく。

ビッグデータ活用のトレンドが
DGXの追い風

 一方、同社が新たなチャレンジとして手がけるのが、DGXだ。まずは、大学や研究機関、製造業大手などのユーザーを対象に市場開拓を進めていく。菅野氏は、「GPGPU(General-purpose computing on GPU、GPUによる汎用計算)をAI/ディープラーニングや各種分析に活用していくというノウハウは、これから蓄積していく部分が大きい。ただ、ソフトバンクグループとしての取り組みでは、ヤフーがディープラーニング活用に特化した省エネ性能の高いスーパーコンピュータ『kukai』を開発し、NVIDIAのGPUボードを大量に使っている実績もあり、グループ内の知見をうまく活用できれば」と話す。
 
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ICT事業本部
MD本部MD戦略室
今野一平氏

 NVIDIAは、AI/ディープラーニング向けのGPUコンピューティングの市場が大きく成長すると予測しており、DGXの出荷台数についても、昨年度以上に大きく伸びると見込んでいるという。ソフトバンクC&Sとしても、「引き合いの状況をみると予想以上に市場は成長していると推測できる」(今野氏)と期待感は大きい。

 ソフトバンクC&Sは、まず既存のリセラー網などとの連携により、NVIDIAのGPUテクノロジーの拡販を目指すが、「新しい挑戦でもあるので、想定していなかった新しいパートナーとのお付き合いも出てくるかもしれない」(菅野氏)とも考えており、NVIDIA製品が新たなパートナーエコシステムの呼び水になる可能性もある。また、ソフトバンクは、5GやIoTを活用したサービスを共創する「5G×IoT Studio」のお台場ラボを5月に開設する計画。ここでも、NVIDIAのGPUテクノロジーを活用したAIプラットフォームと5Gのネットワークを組み合わせ、モバイル端末でデータ容量の大きい画像や動画をストレスなく扱えるようなサービスを体験できる環境の整備を進める。ソフトバンク C&Sもこれに参画し、「5G×GPUテクノロジー」ソリューションの水平展開を検討していく。