日立ソリューションズは、ユーザー企業との「協創」によって新しいデジタルサービスを次々と立ち上げている。日立ソリューションズとユーザー企業の双方の知見やノウハウを持ち寄り、新しい価値をつくり出すことを「協創」と位置付け、その価値創出のサービス協創基盤として「デジタルソリューション創出プラットフォーム」を構築。サービス協創基盤のPaaS部分には、ヴイエムウェアグループであるPivotalジャパンの「Pivotal Platform(ピボタルプラットフォーム)」を採用している。日立ソリューションズが重視する「協創」とはどのようなもので、「サービス協創基盤」の役割は何なのか――。協創ビジネスを推進する日立ソリューションズの柚山知之・デジタルソリューション推進センタ部長と、国内外のデジタルビジネスに詳しいPivotalジャパン渡辺隆・マーケティングマネージャーに語ってもらった。

サービス協創基盤「デジタルソリューション
創出プラットフォーム」でスピードアップ

実行環境を即日構築することも

渡辺 PaaS部分として「Pivotal Platform」を組み込んだ日立ソリューションズのサービス協創基盤が正式に立ち上がって、およそ1年。いろいろと実績が出始めているとうかがっており、OSS(オープンソースソフト)の「Cloud Foundry(クラウドファウンドリー)」の商用ディストリビューション版の提供社として、とても興味深いです。
 
Pivotalジャパン
渡辺 隆
マーケティングマネージャー

柚山 PivotalジャパンのPaaSと、日本マイクロソフトのパブリッククラウド「Azure」を基盤部分に活用したサービス協創基盤「デジタルソリューション創出プラットフォーム」の立ち上げに際しては、渡辺さんにも多くの協力をいただきましたね。その甲斐もあって、今や多数のサービス協創案件を獲得することができ、とても感謝しています。
 
日立ソリューションズ
柚山知之
デジタルソリューション 推進センタ 部長

 直近では、電子部品メーカーの村田製作所の「作業者安全モニタリングシステム」の基盤に採用していただきました。これは、建設現場やプラントなどの現場作業で、作業者のヘルメットにセンサーを取り付け、温度や湿度、作業者の脈拍、活動量などのデータを無線でセンターに送ることで、夏場の体温上昇による昏倒、冬場ならば凍結で転倒したりしていないかを監視。遠隔で作業者の安全を監視できる仕組みです。

 折からの人手不足の影響もあり、広い現場を少人数で作業するケースが増えています。本来ならば2人、3人でチームを組んで作業するようなケースでも、場合によっては1人で作業しなければならない状況が出てきたとき、この「作業者安全モニタリングシステム」は安全を確保する上でとても重要なサービスと聞いています。

渡辺 なるほど。IoT関連のプロジェクトに協創プラットフォームのデジタルソリューション創出プラットフォームを応用した事例ですね。サービスの構築基盤にデジタルソリューション創出プラットフォームを使うことになった経緯みたいなものはありますか。

柚山 村田製作所のプロジェクトでは、お客様の得意とするセンサーの領域と当社が得意とするIoTやクラウドサービスの領域を組み合わせて、とにかく早くサービスを立ち上げたいという要望がありました。そこで、IoTやクラウドについての当社の知見を生かした共同開発と、デジタルソリューション創出プラットフォームを使った迅速な開発を提案したわけです。例えば、サービスを実行する環境構築に、従来は1カ月ほどかかっていたのを、デジタルソリューション創出プラットフォームならば数時間から数日でできてしまう。

「ともにつくる未来は、つよい」

渡辺 確かに、オンプレミス方式だったらサーバーやネットワークから構築しなければならないし、IaaSを使うとしてもその上のOSやデータベース、アプリケーションサーバーなどのミドルウェアを組まなければなりません。その点、当社の「Pivotal Platform」や日本マイクロソフトの「Microsoft Azure」を組み合わせて使えば、ITインフラからミドルウェアまで動作検証や品質検査を済ませた実行環境として一括提供できる。

柚山 SIerの従来型ビジネスとして見れば、実際にそれだけの工数が減るわけですので、売り上げ的には大きなマイナスです。とはいえ、最先端のデジタル技術を使って新しいサービスを始めるケースでは、試行錯誤の連続。やってみてうまくいかないようだったら、ダメだった部分を見直して、すぐに新しいサービスを始めることが成功へのカギとなります。このような状況で、実行環境一つをつくるのに「1カ月かかります」では話になりませんよね。このため、デジタルソリューション創出プラットフォームを活用したビジネスでは、ユーザー企業との「協創」を重視することにしました。

渡辺 アジャイル開発や、デザイン思考的なアプローチが、新しいデジタルビジネスの立ち上げには強く求められるわけですね。日立ソリューションズは早くからアジャイル開発に取り組んでいるとうかがっており、これまでのノウハウもデジタルソリューション創出プラットフォームやユーザー企業との「協創」に生かされていると。

柚山 いま、ユーザー企業に向けてのキャッチコピーに「ともにつくる未来は、つよい」を掲げています。サービス協創基盤を使うことで、ユーザー企業が「やりたいこと」をすぐに始められる。また、開発したサービスの月額料金から協創基盤の使用料をいただくなど、ある意味、ユーザー企業との間で売り上げや利益をシェアすることになる。当社としても、「つくって終わり」ではなく、つくったサービスがより多くのエンドユーザーに使われることで売り上げや利益が増える。ユーザー企業とともに、より良い、より儲かるサービスをつくるモチベーションの方向性が一段と強まる。そうした意味で、ユーザー企業と「ともにつくる未来は、つよい」と謳っているわけです。
 

「デジタルソリューション
創出プラットフォーム」活用進む


渡辺 ユーザー企業と「新しいサービス」をつくるわけですね。これまでのSIerのビジネスが「システム構築」であったとしたら、大きな変化です。

 国内のSI業界を見渡すと、既存のシステムを刷新して、新しいサービスを構築しやすいようにする案件が増えている印象です。いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)の文脈でレガシー化、老朽化したシステムを新しくつくり替える機運が高まっています。コンテナ化やマイクロサービスといったクラウドネイティブ技術への関心が高まっており、こうした技術をサポートする当社の「Pivotal Platform」へ先進的な企業からの引き合いも増えています。

 これはとてもありがたいことなのですが、大規模なプロジェクトになりがちなレガシー刷新に注目が集まりすぎて、新しいサービスによる「新しい価値創出」が先送りになる事例も散見され、個人的には少し気掛かりです。北米をはじめとする海外のPivotal Platformの活用事例をみると、まずは新しいサービスを立ち上げ、その後、既存システムの手直しが必要だったら、その都度、コンテナ化、マイクロサービス化して切り出すケースが多い。そうしないと、スピードの面でライバル会社に負けてしまいますからね。

柚山 デジタルビジネスでは、本当にスピードが重要になってくると肌で感じています。当社は長年にわたって基幹業務システムを構築してきた実績があり、ユーザー企業からも評価していただいているのですが、例えば、即日、実行環境を立ち上げて、3日後に試作サービスをつくるといったスピード開発ができるSIerというイメージを、あまり持たれていない点を非常に危惧しています。サービスを前面に打ち出した理由がここにあります。

 デジタルソリューション創出プラットフォームの中には、課金やモバイル対応モジュール、翻訳エンジンといった機能をマイクロサービス群として順次装備してきています。その上にユーザー企業のサービスをのせることで、必要な課金やモバイル対応といった機能をすぐに実装できる。

 課金計算やカード決済の請求業務は、日本の商習慣で、多くの導入実績がある当社の「BSSsymphony(ビーエスエスシンフォニー)」のノウハウを活用、モバイルアプリ開発は当社グループの日立ソリューションズ・クリエイトの「快作モバイル+」、翻訳は日立ソリューションズ・テクノロジーの「Ruby Concierge(ルビーコンシェルジュ)」を使うこともできます。当社の主力商材で、就業管理/人事給与の「リシテア」は、もともとパッケージソフトとして提供していましたが、今はサービスの一つとして協創基盤にのせられるようにしました。

渡辺 日立グループのサービスも続々と協創基盤の上で稼働していますね。

柚山 ご指摘の通りです。日立建機でも施工現場の盛り土をスマートフォンの動画機能で撮影し、衛星測位と組み合わせて盛り土の体積を計測するサービス「Solution Linkage Survey(ソリューションリンケージサーベイ)」を協創基盤上でスタートしています。先の村田製作所、日立建機ともにメーカーで、プロダクト販売で成長してきた会社ですが、今は自分たちが持っているノウハウと、当社をはじめとする外部のノウハウや知見をうまく組み合わせて、新しいデジタルサービスを積極的に立ち上げています。これからもグループ内外のさまざまな業種・業態の企業と協創して、エンドユーザーに価値を届ける進化し続けるサービスを増やしていきたいですね。