2019年の国内プリンタ市場は、改元、消費税増税、Windows 7のEOSなど、多くのイベントが絡んだ年となった。そうした中で好調な製品、分野はあったのか。また、最近の大きなテーマである環境、働き方改革に関連して、各社はどのように取り組み、ソリューションを提供しようとしているのか。座談会では19年の市場の振り返りと、東京五輪・パラリンピック後を見据えて、20年に注力する分野・業界、製品・販売戦略について、エプソン販売、富士ゼロックス、ブラザー販売の担当者に聞いた。(司会・進行:週刊BCN記者 日高 彰)

2019年の市場は横ばいだが
働き方改革関連の新規需要も

――まずは、19年の市場を振り返り、ビジネスの状況を教えてください。

豊田(エプソン販売) 全体では、市場トレンドに対して若干のプラスで推移しました。落ち込みもありますが、大容量インクモデルを中心に挽回しています。今期は、ビジネス向けエコタンク搭載のA4モノクロモデルをリリースし、これまで当社がリーチできていなかった層のお客様にも浸透できたという手応えを感じています。また、18年にリリースしたA4カラーの大容量モデルが19年に入ってかなり伸びました。
 
EPSON
豊田 誠
スマートチャージ販売推進部 部長

 トピックとしては、消費税増税やWindows 7のEOS以上に、働き方改革やエコに向けた提案が好評でした。例えば、100枚/分機は生産性向上をシンプルにアピールできます。また、SDGs(持続可能な開発目標)についても、インクジェットの省電力をプロモーションを含めてアピールしたことで、思った以上の実績につながりました。
 
LX-10050MFシリーズ

 業種別では、サブスクリプション的モデルのアカデミックプランが伸びました。また、紙を再生する「PaperLab」も自治体やエコに敏感な企業への導入が進んでいます。

古賀(富士ゼロックス) ビジネスはほぼ計画通りに推移しました。トピックとして、Windows 7のEOSに絡み、当社のお客様の中で、PCの買い替えに合わせてプリンタを入れ替えたお客様が多かったと感じます。改元絡みでも、販社が販売パッケージなどを組み込んで提案しているお客様から検証に絡んだ引き合いがありました。
 
FUJI XEROX
古賀 優
エンタープライズドキュメントソリューション 事業本部
事業企画管理部 統合プロダクトマーケティンググループ グループ長

 製品別では、小売りや店頭での導入が多いA3機は、消耗品が伸びました。A4レーザーでは、昨年にゴールド、シルバー、ホワイトの特殊トナーを搭載した業界初の小型LEDプリンタ「DocuPrint CP310 st」をリリースし、デザイナーの需要を喚起すべく、特殊色の使いこなし方を促す取り組みを進めています。
 
DocuPrint CP310 st
 
 当社の強みである公共分野では、EOS絡みで多くの予算がPCに振り向けられたこともあり、プリンタは来年度に需要が本格化すると見ています。

 中小企業の方々に向けては、働き方改革などで手間を削減したいというニーズに対応し、IT環境の運用を代行する「ITあんしんサービスパックIII」が好評でした。

伊藤(ブラザー販売) 製品カテゴリーによるばらつきはありますが、会社全体の販売実績は堅調に推移した1年でした。製品別では、レーザーはほぼ計画通りで推移しました。インクジェットは注力している大容量タンクモデル「ファーストタンク」シリーズが好調で、A3、A4がともに堅調に伸びたことで、家庭向け製品の落ち込みをカバーしました。
 
BROTHER
伊藤英雄
マーケティング推進部長 兼ビジネスソリューション事業部長
兼ソリューション推進部長

 消耗品の需要も好調で、全体としてのビジネスの成長に貢献してくれました。また、以前からターゲットとして取り組んでいる業種に特化した活動をさらに進めています。インクジェット、レーザー、モバイル、ラベルプリンタを切り口に横展開を図り、クロスセルにつなげていく取り組みを強化しています。
 
ファーストタンク MFC-J6997CDDW

 増税の影響はないと当初は考えていましたが、消耗品を中心に前倒し需要がそれなりにあった分の反動が10月以降にありました。

――働き方改革では、どのような提案をされているのですか。

豊田 出力機の集約を提案しています。プリンタ、コピーをまとめることでコスト削減になりますし、出力機が集約されると移動も少なくて済むようになるという提案を推進しています。

古賀 働き方改革では、三つの変化があると捉えています。一つはロケーション(働く場)の変化、二つ目はコミュニケーション手段の多様化。三つ目はセキュリティ対応です。近年、中小企業の方々も情報漏洩に対する取り組みを強化されています。例えば、「DocuPrint C5150 d 」では、ICカードリーダーと連動した認証プリントも簡単に行うことができるため(オプション)、必要なものだけをセキュアに出力できる環境を提供しています。
 
DocuPrint C5150 d

――ブラザー販売の伊藤さんにお聞きしますが、大容量モデルのニーズが増えている背景を、どう捉えていますか。

伊藤 大容量モデルの引き合いが多くなっている理由は、ユーザーのコスト意識の高まりだと考えています。特に、流通・小売分野では、大容量モデルへのシフトが進んでいると感じます。一定以上の枚数を出力される場合、本体と消耗品を合わせた経年でのトータルコストの削減を考えて採用されている。私どももトータルコストの比較や交換の手間を省くことができるという運用面のメリットも合わせてアピールしています。

課題解決に向けた各社の取り組み
業種攻略はチャネル販売がカギ

――19年を通じて感じたビジネスの課題を教えてください。

豊田 一口で言えないほど多くあります(笑)。その一つとして、ビジネス分野でのインクジェットへの置き換えをテーマに、この数年間注力してきました。対前年比で大きく伸びていますが、目標値からすればまだまだです。

 学校、医療分野へはかなり浸透していますが、主要市場のオフィスでの浸透には、これまでの文化的背景があり、画質にも違いもあります。もし、消費電力を徹底して削減するような動きが起こり、他社も注力するようになれば一気に変わるとも思います。そこで目先の利益にこだわらず、仲間を増やして取り組みたいと思います。

古賀 コストを考慮した社内外での出力機の使い分けが進んでいると感じています。社内向け枚数を少なくして、できるだけコストを削る動きが自治体や大手企業でも進んでいます。そこで先般発表した接着機能を持つトナーで活用用途を拡大したり、ドキュメント自体に付加価値をつける取り組みを進めていきたいと考えています。

伊藤 当社は、コンシューマ領域の製品群からスタートし、ビジネス領域に製品群を拡大してきました。また、4年前からは業種向けソリューションを強化しており、医療、小売り、製造・物流、金融を、業態としては多店舗、他拠点を主なターゲットに据えたビジネスに注力しています。ただ、製造・物流については、SIerとの連携手法も複雑で参入が難しく、ハードルの高さを感じています。

総ボリュームよりも
中身に大きな変化

――18年と比較して、実感した市場の変化はありましたか。

豊田 この数年、総論での大きな変化はありませんが、個別の変化はあります。例えば、文教ではギガスクール構想によるタブレット化で、出力自体の予算は大きく削られます。金融もデジタル化が進んでいますし、業種、業態、規模でかなり変化があります。一方で、コストを盾に我慢を強いられている人も多いため、買い方を変える、つまり、サブスクリプションなどでそのニーズに対応できれば、全体のボリュームは変わらないと考えています。

古賀 お客様の購買が変化しています。当社のお客様でも購入者の5割はHPで仕様を確認されていますし、あらかじめ仕様を決めて、営業を介さずにECサイトで購入するケースも増えています。その受け皿となる仕組みも必要なため、eコマースサイト「イー・クイックス」を通じて消耗品販売を行っていますが、そのお客様が当社から本体を購入したいという声もいただいています。

伊藤 ペーパーレス化の流れは確かに進んでいると思いますが、一概にプリントの機会が減っている訳ではないと考えています。例えば、銀行や生保などの渉外担当社員が、お客様との商談後、会社に戻って見積もりなどを出力するといった用途は少なくなっていると思いますが、モバイルプリンタを使って現場で出力するといった機会は増えています。出力する方法を変えることによって、働き方改革の推進にもつながる事例がまだまだ出てくると考えています。

――働き方改革はプリンタ業界にとってプラス、それともマイナスですか。

古賀 長期的にプリントは減少しますが、必要なものは出さなければならないため、どこでもセキュアなプリントがしたいというニーズは増えるでしょう。

豊田 全てがタブレット端末で済めばプリントは確実に減少しますが、紙の良さは一覧性で、この点はタブレット端末でもカバーできません。利便性やコストの点でプリンタメーカーが活躍できる部分は、まだまだあると考えています。

 
プリンタメーカー座談会2020に関するアンケート
https://www.seminar-reg.jp/bcn/survey_printer_rt2020

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