公立のeスポーツ施設「コクゲキ」を中心とするICTパークを昨年3月に開いた旭川市。同年9月に就任した今津寛介市長も所信表明で「旭川モデル」の推進を掲げるなど、ICT人材の育成に積極的に取り組んでいる。「旭川モデル」とは若年層を対象とするICT教育の循環を指す。高校生や高専生が小中学生にプログラミングを伝授して「U-16プログラミングコンテスト」を開催。参加した選手が16歳を超えたら今度は教える側に回るという仕組みだ。仕掛け人は旭川龍谷高校 ICT担当講師で、eスポーツ部顧問の下村幸広先生。ITジュニア育成交流協会が全国展開を推進する「U-16プロコン」の父、下村先生にコロナ禍を経て新たに動き出した「ICT人材育成のこれから」についてうかがった。


 OECD(経済協力開発機構)の中でも日本はICT教育に関してはかなり遅れている。しかし「コロナ禍の影響でGIGAスクール構想が一気に早まった。世の中も、オンラインでもいろんなことができるんだ、ということに気が付いた」。下村先生はこの2年で日本人のITに対する意識が大きく変わったと話す。とはいえ「教育プランをじっくり練る暇もないまま、端末が一気に配布された。教育内容についてはまだ不十分な部分が多い」とも指摘する。
 
旭川龍谷高校 ICT担当講師でeスポーツ部
顧問の下村幸広先生

 一方、課外活動でプログラミングを学んだり楽しんだりする機運も高まっている。下村先生は、3月31日に発表された「Society5.0を見据えた中高生等のデジタル関連活動支援の在り方提言」(以下提言)に注目しているという。経済産業省が設置した「デジタル関連部活支援の在り方に関する検討会」が行ったものだ。日本では「デジタル人材育成」が急務で中学生や高校生の段階から育成していくことが重要として、産官学を挙げての協力を呼び掛けている。特に、学校の授業の枠を超えた、デジタル関連の部活動を企業や大学・高専、学会などが支援する仕組みが必要、としている。
 
経済産業省が設置した「デジタル関連部活支援の在り方に関する検討会」による
「Society5.0を見据えた中高生等のデジタル関連活動支援の在り方提言」

 「提言では、活動のモチベーションとして大会やコンテストなども重要だとしている。また教え導く役割を担うメンターの重要性についても言及している。地域予選と全国大会で構成するピラミッド構造なら全国に活動の母体を増やす原動力になるとも。まさに私たちがやっているU-16プロコンが目指しているものだ」

 特に重要なのは周囲の理解と支援だという。「パソコン部などの部活動は、これまでなかなか日の当たらないものだった。周囲の理解が足らなかったからだ。先生や親、企業や地域が積極的に支援して、どんどんやれという機運を醸成していかなければならない。例えば、プログラミングをやってみようと思ったときに、身近に体験できる場所が地元にある、ということも大事だ。U-16プロコンを10年以上やっているが、こんなに参加しやすいコンテストはないと思う。子どもたちの一番最初の発表の場としてしっかり機能させ、地域に根付いた活動を続けていきたい」。下村先生はこう結んだ。

 今年、U-16プログラミングコンテストの旭川大会は、11月3日にイオンモール旭川駅前店4階のイオンホールでリアル開催する。またこれまで同時開催していた北海道大会は、12月18日に改めて開催の予定。その際、道外からのオンライン参加も検討中だ。