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アクロニス新CEOにインタビュー MSPとともに法人組織の事業をあらゆる脅威から守り抜く

2024/04/30 09:00

 アクロニクスは、データのバックアップやシステムの災害時復旧(ディザスタリカバリ:DR)、セキュリティといった「サイバープロテクション」のソリューションを提供している多国籍企業だ。2023年10月、同社の新たなCEOとして、元ビジネスプレジデント兼チーフコーポレートデベロップメントオフィサーのエゼキエル・シュタイナー氏が就任した。先ごろ来日した同氏にアクロニクスの事業戦略について伺った。

最大の強みはソリューションの統合性 少ない労力とコストで脅威からの保護を実現

──まずはアクロニクスの基本戦略について確認させてください。貴社では、個人や法人組織のIT部門、さらにはマネージドサービスプロバイダー(MSP)に向けてサイバープロテクションのソリューションを提供しています。貴社にとってのメイン市場は、個人でしょうか、それとも企業、あるいはMSPなのでしょうか。

シュタイナー 事業規模でいえばMSP向けのビジネス、つまりMSPを通じてサイバープロテクションのソリューションを法人組織に提供するビジネスが最も大きく、当社の売上の65%を占めています。また、「Acronis Cyber Protect」をはじめとしたエンドユーザー向け製品のビジネスが30%を占め、残る5%が個人用のPCに向けたビジネスです。

──サイバープロテクション、ないしはサイバーセキュリティの領域は、ベンダー間の競合が激しい市場です。貴社のソリューションの優位性はどの辺りにあるのでしょうか。

シュタイナー セキュリティのフレームワークにおいて、まず求められるのはEDR(Endpoint Detection and Response)のように脅威を実際に検知して防ぎ、調査や対応を実施することです。しかし、それら機能がいかなるときでも効果を発揮するとは言い切れません。そのため当社のソリューションではEPPやEDRだけでなく、攻撃から復元するためのバックアップ機能を統合しており、それこそが優位性につながっています。

──そうした統合性は、具体的にどのようなメリットを法人組織やMSPにもたらすのですか。

シュタイナー 防御から検知そして復元まで整った仕組みを、異なるベンダーのデータ保護製品やサイバーセキュリティ製品を使って構築しようとすると、システムが複雑化してしまい、運用管理の業務負荷が増大します。一方で当社ソリューションならデータ保護とサイバーセキュリティの機能が統合化されており、運用管理の一元化や効率化、自動化を実現しています。つまり当社ソリューションを使えば、より少ない労力とコストで、自社や顧客のデータやアプリケーション、さらにはシステムを脅威から保護することが可能になるのです。
 
エゼキエル・シュタイナー
CEO

日本組織にはより高度なサイバープロテクションが求められる

──セキュリティ対策を強化することの重要性は、日本でもかねてより唱えられてきました。それでも、日本の法人組織におけるセキュリティ対策にはまだ“甘さ”が残っているという指摘もあります。日本の法人組織におけるサイバープロテクションについて、どのように見ていますか。

シュタイナー すべての法人組織が不十分なセキュリティ対策のままとは思いません。セキュリティ対策の強弱は法人組織ごとに異なり、十分に実施できている法人組織も存在します。ただ、覚えておいていただきたいのは、経済大国である日本に対してのサイバー攻撃は非常に活発であり、攻撃への備えには万全を期す必要があるという点です。要するに、日本のセキュリティリスクは高く、それに見合ったサイバープロテクションを実現しなければならないということです。

──日本企業のセキュリティ対策に関して、特に強化が必要と感じている部分はどの辺りでしょうか。

シュタイナー EDRの普及はまだ完全と言えない中、サイバー攻撃は高度化・多様化しており、いかなる防御の施策を講じようとも、エンドポイントへの脅威の侵入を100%防ぐのは難しいです。ゆえに、脅威の侵入を即座に検知して、侵入経路や影響範囲を特定し、適切に対処・対応するためのEDRの導入は必須の対策といえます。その意味でも、EDRをより普及させていかなければと強く感じています。

──EDRの普及率を高めるためには何が必要でしょうか。

シュタイナー EDRの普及が進展しない大きな理由は、まず製品の価格が総じて高価なことが挙げられます。それに加え、運用には多くの手間と、セキュリティに関する専門的な知識が必要なことも原因の1つです。当社の場合は当初からSMBをターゲットにしてきたため、EDRも従来のマルウェア対策ソリューションと同額に設定しており、EDRの導入や運用を巡る問題をMSPとの協業などによってすべて解決することができます。

──最後にアクロニクスの今後のビジョンについて教えてください。

シュタイナー 今後に向けて私たちが最も重視しているのは、MSP向けのソリューションを充実させることです。リモートからのデータバックアップや復元、脅威の検知、分析、インシデントへのプロアクティブな対応、運用の自動化といったテクノロジーに一層の磨きをかけ、MSP向けのクラウドプラットフォーム「Acronis Cyber Protect Cloud」を通じてワンストップで提供していきます。これにより、MSPは自社の顧客のデータ、多様なアプリケーション、システムをより確実に、かつ容易に、そして低コストで保護することが可能となり、自社のサービスの価値を高めていけます。ソリューションを通して法人組織の事業をあらゆる脅威から守り抜いていくことが、アクロニクスの目標であり、目指す姿です。
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外部リンク

アクロニス・ジャパン=https://www.acronis.com/ja-jp/