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エンタープライズAIの取り組みを加速するリアルタイムAIデータ分析基盤「VAST InsightEngine with NVIDIA」の実力は?

2025/06/30 09:00

 ネットワールドは5月30日、VAST Dataの協賛でセミナー「これがAI市場の最前線! エンタープライズAIをはじめるために今すべきこととは?」を開催。企業のAI活用におけるさまざまな課題を解決する画期的なリアルタイムAIデータ分析基盤「VAST InsightEngine with NVIDIA」について、日本初となる最新デモや具体的な事例を交え解説した。多くの参加者が集まり、非常に盛況だった本セミナーの模様をダイジェストする。

あらゆるデータを一元管理する「VAST InsightEngine powered by NVIDIA」

 最初に登壇したVAST Data Japanの南里修一・パートナー営業部マネージャーは「進撃を続けるVAST Dataの製品概要と最新ユースケース」と題して講演した。
 
南里修一
パートナー営業部 マネージャー

 米VAST Data(バストデータ)は、米EMC(イーエムシー)出身の創設者Renen Hallak氏を中心に、米DDN(ディーディーエヌ)や米Pure Storage(ピュア・ストレージ)などの出身者が集まって設立されたソフトウェア企業である。生成AIやデータ分析分野で急成長を遂げているほか、累計で20エクサバイトのデータ利用実績を持ち、米Gartner(ガートナー)の「Magic Quadrant」でもリーダーポジションに選出されている。

 同社の「VAST Data Platform」は、構造化・非構造化データを問わず、あらゆるデータタイプとワークロードを単一のインフラ上で扱えることが特徴だ。「データの種類によってストレージを分ける必要がなくなり、分断の解消と統合管理が同時に実現できる」と南里マネージャーは説明する。

 具体的なユースケースとして、GPUクラウドサービスで急成長を遂げる米CoreWeave(コアウィーブ)の導入事例を紹介。全米に35カ所のデータセンターを展開する同社では、大規模なLLM(大規模言語モデル)の訓練データをVASTのシステムで一元管理し、学習時間の短縮とともに80%のコスト削減を実現した。

 また、NASAではHPC環境の簡素化と拡張のためにVASTが採用されており、ボルボの子会社で自動運転ソフトウェアを開発しているZenseact(ゼンセアクト)では、ペタバイト級のセンサーデータを統合し、AI処理パイプラインの自動化を図っている。

 VAST Data Platformでは、「DataEngine」という仕組みが処理基盤とオーケストレーションを担い、データが保存されると同時に分析処理が可能となる。その中核に位置付けられるのが「InsightEngine」だ。これは、米NVIDIA(エヌビディア)との連携によって保存されたメタデータやコンテンツを即時に検索・可視化できる仕組みで、画像・動画といった非構造化データにも対応する。APIを通じて業務アプリケーションとの統合も可能になるという。

 「製造業、金融、医療、エンターテインメントなど、あらゆる業種に眠っている非構造化データにこそ、大きなビジネスチャンスがあることをぜひ知っていただきたい」と南里マネージャーは強調する。
 
企業に眠る非構造データから新たな価値を見出せる構造になっている

エージェント型AIを活用しアーカイブからインサイトを獲得

 後半のパートでは、アジア太平洋地域シニアAI/HPCスペシャリストエンジニアのジェームズ・チェン博士が登壇し、「非構造化データから知見を引き出す!検索&要約AIのご紹介」と題して講演を行った。
 
ジェームズ・チェン博士
アジア太平洋地域シニアAI/HPC スペシャリストエンジニア

 冒頭でチェン博士は、NVIDIAが提供する推論マイクロサービス「NIM(NVIDIA Inference Microservices)」について解説。NIMは、生成AIアプリケーションを開発・展開する際にAIモデルの推論を迅速かつ効率的に行うための基盤であり、NVIDIA AI Enterpriseに含まれている。

 次にVAST Data Platformの内部構造についても紹介した。まず、AIを活用するにはストレージに保存されたデータが必要であり、そこからデータはインデックス化されてベクターデータベースに格納される。そして、DataEngineによってAIワークフロー全体のオーケストレーションが行われ、オンプレミス、クラウド、エッジのいずれの環境でも対応できるという。

 続いて、メディア・エンターテインメント業界におけるユースケースも紹介。従来のメディアアセット管理では、ビデオファイル内から特定のオブジェクトやリアクションを検索するのに多大な人手と時間を要していた。これに対し、InsightEngineとエージェント型AIを活用することで、非構造化データから意味のある情報を即時に抽出し、的確な検索が可能になるという。

 「VAST導入後の最新アーカイブ検出作業では、高速・自動化・的確な環境を実現できる。例えば、オブジェクトやスピーチ、イベントなどを定義すれば、複数のエージェントが同時に処理を実行し、瞬時に必要な情報へアクセス可能だ」(チェン博士)。

 ライブデモでは、複雑な質問に対し動画コンテンツをもとに答えを返す事例が紹介された。例えば「車両火災の瞬間とその原因を知りたい」といった質問に対しては、動画内容を理解し、意味づけを行うAIモデルを使って映像から該当シーンを特定し、回答と該当する動画を提示するプロセスが披露された。

 さらに、エージェントの定義を変えればアウトプットも変化するなど、VASTの柔軟性にも言及。「VASTでは、保存された場所にあるデータをそのままAI処理できる“インプレースAI”を志向し、統一されたAIパイプライン環境を提供できる」とチェン博士は強調し、講演を締めくくった。
 
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外部リンク

ネットワールド=https://www.networld.co.jp/product/vastdata/pro_info/vastdata-platform/