2025年10月に創業60年を経過した昭電。黒電話の時代から今日のデジタル社会まで、社会インフラを陰で支えてきた同社は、災害対策やネットワーク、セキュリティー、電源・通信といった幅広い領域を横断し、総合安全企業として「安全と信頼」を提供し続けてきた。人手不足や災害の激甚化、インフラの複雑化が進む中、どのような未来を描いているのか、太田光昭社長に話を聞いた。
創業の原点にある「安全と信頼」「人を大切にする」理念
──まずは創業60年を経た御社の概要を改めて教えてください。
昭電は1965年に父・太田昭吾と川崎章2人で創業し、電気に関わる仕事をしていたこと、そして2人が昭和生まれだったことから「昭電」と名付けたと聞いています。
太田光昭 社長
創業以来掲げているスローガンは「情報化社会に安全と信頼を提供する」ことです。黒電話の時代から今日のインターネット、モバイルの時代まで、社会インフラを陰で支え、利用者が安心して当たり前に使える環境をつくることを使命としてきました。初期はデータセンター(DC)設備構築のパイオニアとしてコンピューター用電源装置の販売、通信用保安器や耐震設計のSD式ダクトフロアを開発するなど、技術と実績を積み重ねてきました。
胸につけている社章は「人」という字を三つ組み合わせたものです。人と人の連携を大切にするという創業以来の精神を象徴しており、お客様から「昭電に任せれば大丈夫!」との信頼を積み重ねてきたことが事業の広がりにつながってきました。
人手不足と災害時代に挑む、昭電の総合安全ソリューション
──太田社長は現在の市場環境の変化をどう捉えていますか。
ここ数年、特に強く感じているのは人手不足の深刻化です。どの業界でも「やるべきことはあるのに人が足りない」という課題は共通しています。そのため当社への要望も、安全対策だけでなく「省人化・省力化」に寄与する仕組みづくりへと広がっています。
設備の監視にしても、現場に人を常時配置するのではなく、ネットワークやセンサー、カメラを活用して遠隔で状況を把握し、必要なときだけ現場に向かう。限られた人員でも効率的に安全を確保できるソリューションを提供しています。
──近年では自然災害も深刻ですね。
自然災害には地震、雷、水害、風害などさまざまなリスクがあります。当社はそれらによる社会インフラのダメージを最小限に抑えるため、総合的な対策を提供してきました。本社から近い東京スカイツリーにも、昭電の雷害対策や地震対策の技術が使われています。
特に近年は水害が増えており、電源や通信設備が浸水すると機能が停止してしまいます。そこで、浸水対策を施した設備や、水害時でも通信・電源を維持できるレジリエンス強化の技術を開発し、重要な社会インフラ施設へ導入しています。吸水素材で軽量な「アクアブロック」は、少人数でも迅速に設置できることから、豪雨時の止水対策として好評です。
災害が起きても利用者が「いつでも安心して当たり前に使える」環境を守ることが、私たちの使命です。
──昭電ならではの代表的な製品を挙げるとしたら何ですか。
監視カメラ統合管理システムです。最近は複数メーカーの監視カメラや入退室システムが導入されるケースが多く、「システムがバラバラで運用が煩雑だ」というお悩みをよく聞きます。そこで当社は、海外で安定性と拡張性に実績のある「
Genetec Security Center 」を中心に、メーカーの異なるカメラだけではなく、入退室、生体認証、各種センサーまでを一つのプラットフォームで統合管理できる環境を提供しています。
海外では空港や店舗で数万台規模の映像を統合管理するのに使われており、国内ではそこまで大規模ではないものの、数千台規模のカメラを扱う商業施設やインフラ事業者からの相談が増えています。統合管理することで、現場の負荷を減らしながら、より確実に安全を守る仕組みである点が評価されています。
ほかにも、DCの信頼性を支える地震対策や光配線盤、オフィス機能の維持に欠かせない電源・通信関連のソリューションなど、ITインフラを支える幅広い製品を提供しています。ソフトウェアやプラットフォームだけでなく、機器や装置といったハードウェア、その筐体までも自社開発しており、工事までをエンド to エンドでソリューションとして提供可能です。
──DXやIoTの進展は、昭電のビジネスにどのような変化をもたらしていますか。
DXやIoTの進展により、お客様が求める価値は「製品そのもの」から「運用全体の最適化」へと大きく変わってきました。監視カメラでも、単に映像を撮るだけでなく、複数拠点の状況を統合して把握し、必要な情報を素早く取り出せる仕組みが求められています。
こうした変化に対応するため、当社では製品単体ではなく、複数の技術を組み合わせて価値として提供することを重視しています。災害対策、ネットワーク、セキュリティー、電源・通信といったインフラ技術を横断的に融合し、お客様の現場に合わせた最適なソリューションを設計できるのが当社の強みです。
監視カメラの統合管理でも、映像だけでなく入退室、生体認証、センサー情報、電源や通信の冗長化までを含めて「全体としてどう安全を確保するか」というケースが増えています。こうした複合的な課題に対し、技術や製品を積極的に組み合わせています。
──ソリューションラボやテストラボなど、実証環境を相次いでオープンされていますね。
ソリューションラボ では、実際にお客様にシステムを見ていただくことで、どのようなことが実現できるのかを具体的にイメージしていただくことができます。監視カメラの統合管理では、国内外のさまざまなメーカーのカメラや入退室、生体認証、センサーを接続し、本番さながらの環境で動作検証が可能です。導入前に複数メーカーの組み合わせやネットワーク構成を確認できるため、導入後のトラブルを大幅に減らすことができます。また、千葉市稲毛区のテクノセンタ内に、各種製品の性能の評価・検証実験を手がける
テストラボ 環境を2025年8月にリニューアルオープンしました。
パートナー戦略の観点でも、この実証環境は非常に重要です。海外メーカーの先進技術を日本の現場に合わせて最適化したり、国内メーカーと共同で新しいソリューションを開発したりと、昭電をハブにした共創が進んでいます。単に製品を仕入れて販売するのではなく、パートナーと一緒に価値を創出し、お客様に最適なかたちで届けることを重視しています。
ソリューションラボ と
テストラボ という実証施設を開設することで、全てのステークスホルダーとの共創を加速させて、これからも「安全」の価値を未来へ繋げていきたいと考えています。
今後も災害対策、ネットワーク、セキュリティー、電源・通信といった当社の強みを掛け合わせながら、これからの社会インフラに必要とされる総合安全を実証し、かたちにしていく場になってほしいですね。
共創と人材で描く、昭電が目指す次世代インフラ像
──人材戦略や内部体制については、どのような取り組みを進めていますか。
技術の高度化やお客様のニーズの多様化が進む中で、若手の育成と技術継承は非常に重要なテーマだと考えています。当社は幅広い領域を扱っているため、若手が早い段階から複数の現場を経験し、技術の横のつながりを理解できるような育成体制を整えています。
新卒の採用面接では「なぜ昭電か」の前に、「なぜ働くのか」を聞くようにしています。働く以外にも選択肢はありますし、働く理由も人それぞれです。その価値観を理解したうえで、一人一人が長く安心して力を発揮できる環境をつくりたいと考えています。
本人が覚悟して「やりたい」と思うことがあれば、「やってみたら」と信頼して任せます。親バカみたいですが、本当にいい社員が多いんですよ。そういう仲間に恵まれているのは、ありがたいことです。
働き方の面では、遠隔監視や統合管理といった仕組みを自社の業務にも取り入れ、現場の負担を減らす取り組みを進めています。夜間や休日の対応を最小限にしつつ、必要なときには迅速に動ける体制をつくることで、技術者が安心して働ける環境づくりを目指しています。
──中長期的には、どのようなビジョンを描いていますか。
社会インフラを取り巻く環境は、今後さらに複雑になっていくと考えています。こうした課題に対して、単一の技術だけで解決できることはほとんどありません。だからこそ当社は、災害対策、ネットワーク、セキュリティー、電源・通信といった複数の領域を横断し、総合的な安全を設計できる企業であり続けることを中長期ビジョンとして掲げています。
技術だけでなく「人」の力は非常に重要です。若手が幅広い領域を経験し、ベテランの知見を受け継ぎながら成長できる環境を整えることで、次の時代に必要とされる技術者を育てていきます。技術と人の力を掛け合わせながら、次の時代の安全・安心をかたちにしていく企業でありたいと考えています。
──最後に、読者へのメッセージをお願いします。
昭電は、災害対策、ネットワーク、セキュリティー、電源・通信といった幅広い領域を扱っていますが、それらは全て「情報化社会に安全と信頼を」の理念につながっています。これからも、パートナー企業の皆様と協力しながら、現場の課題に寄り添い、確かな技術で支えていく存在でありたいと思っています。