オーエー・システム・プラザ(OAシステムプラザ)は、地域密着のネットワークづくりに力を入れる。今年中に主要な郊外店約30店舗に出張営業およびサポート用のサービスカーを配備し、店員の機動力を高める。同時に、資本提携先の豊栄家電のFVCノウハウを応用し、地域密着型の営業・サポートサービスを担う加盟店を増やす。
店舗を飛び出し顧客のもとへ、サービスカーによる出張サポートも
──減収傾向に歯止めをかけるために、地域密着型ネットワークの構築を進めています。
大喜 パソコンなどIT製品やデジタル家電の販売は、大きく3つに分類できます。1つ目は、ヤマダ電機やヨドバシカメラに代表されるように、品揃えの豊富さやポイント還元を訴求していく方法。2つ目が、デルなどインターネットを活用したメーカー直販です。そして、3つ目が地域密着型のネットワークを活用した営業スタイルです。当社は、この3つ目のスタイルを確立することを目指しています。このスタイルを、当社では“顧客の畳の上にあがる営業スタイル”と呼んでいます。これまでは店舗で顧客を待っている営業であり、パソコンを持参してくれたら修理や使い方などのサポートサービスを提供していました。この考え方を転換し、顧客の家の中にあがり込んで、IT製品やデジタル家電の営業・サポートサービスを展開します。
──サービスカーの活用など、新しい営業スタイルはエリアの広い郊外店が中心になる。
大喜 まずは足掛かりとして昨年2月、愛媛県の宇和島店に営業やサポートサービス用のサービスカーを導入しました。これは、顧客先まで出向くためのインフラとなり、店員がサービスカーに乗って営業します。宇和島店のある地域は、住民のうち60歳以上の高齢者が半分を超えると言われており、この方たちにIT製品やデジタル家電を不自由なく使っていただくために、自宅までお伺いできるサービスカーを導入しました。続いて、昨年6月には同じく愛媛県の松山店と愛知県の半田店にサービスカーを導入し、事例を積み上げました。サービスカーを導入した営業やサポートサービスに必要なノウハウをまずはこの3店舗で蓄え、全国の店舗へと展開する準備を進めています。
ただし、サービスカーを導入する店舗は、宇和島店の事例のように地域密着型の営業をしやすい環境が必要で、自ずと都心部にある店舗はなじみにくい傾向があります。このため、全国36店舗のうち郊外店を中心に約30店舗を選び、今年末までをめどにサービスカーの導入を完了する計画です。
──サポートサービスの収益比率を拡大できる期待がある。
大喜 店舗内での有料サポートサービスは、これまでも実施していましたが、当社の店員がサービスカーで出張して有料サポートサービスを提供するのは、今回が初めてです。 まだ始めたばかりで、今年度(2004年9月期)の出張有料サービスの売上比率はまだ微々たるものにしかならないでしょう。しかし将来、この部分が大きく伸びると見込んでおり、高い期待を寄せています。
──家電量販店の豊栄家電との資本提携の狙いは販売チェーン構築のノウハウ吸収ですね。
大喜 豊栄家電は地域密着型の家電量販店で、中部地区を中心に約60店舗を展開しています。昨年1月に当社から豊栄家電にパソコン関連商品と関連サービスを提供する業務提携を結んだのに続き、昨年12月には豊栄家電の発行済み株式の38.3%を2億円弱で取得しました。豊栄家電は、独立した複数のオーナー店が仕入れ、広告、配送などを共同化するボランタリーチェーン(VC)方式を採用しています。ただし、店舗は「ベリーズホーエー」というブランドで統一しており、この点はコンビニエンスストアなどのフランチャイズチェーン(FC)方式のやり方を一部取り込んでいます。このことから、豊栄家電ではボランタリーチェーンとフランチャイズチェーンの両頭文字をとって“FVC方式”と呼称しています。当社は、豊栄家電が持つFVC方式のノウハウを全面的に取り入れることで、全国津々浦々、地域密着型のネットワークを構築していきます。
──OAシステムプラザとの提携で豊栄家電のパソコン販売も伸びた。
大喜 昨年1月の提携以来、豊栄家電のパソコン本体の販売台数は、着実に伸びています。提携時の月間販売台数は前年同月の約55%にとどまっていたのに対し、提携後1か月経った2月は84%まで回復。そして、昨年6月には100%を超え、現在は120%前後で推移しています。豊栄家電は、もともと家電中心であったため、パソコン販売台数の母数が小さかった。パソコンを月に5─6台売っている店もあればゼロの店もありました。ただ、地域に根差した販売ネットワークがあるため、当社のパソコン販売のノウハウが入ったことで販売台数が一気に伸びたと考えています。
地域の家電店をFVC方式でネットワーク化、3年以内には数字で実績を出す
──FVC方式を全国のOAシステムプラザを拠点に展開する計画ですか。
大喜 豊栄家電は中部地区のみでの店舗展開ですが、当社は北海道から沖縄まで全国に展開しています。今後は当社の店舗を拠点として、その地域の家電店をFVC方式でネットワーク化していきます。この全国規模の地域密着型ネットワークを構築してこそ、本当の意味で“顧客の畳の上にあがる営業スタイル”を確立することができると考えています。現在、オーナー経営による地域の家電店は、全国に3─4万店あると言われています。たとえば、全国3万店のうち1%の家電店がOAシステムプラザと豊栄家電が推進するFVCに加盟したとすれば、それだけで300店舗のネットワークができあがります。加盟店の店舗名は「OAシステムプラザ」ではなく、おそらく「ベリーズホーエー」となると思いますが、パソコン関連のIT商品やサポートサービスは当社が提供するため、当社の事業は拡大します。一方、豊栄家電が持つデジタル家電の販売ノウハウは、逆にOAシステムプラザの店舗へと反映させていきたいと考えています。
──FVC方式での本格展開はいつからになりますか。また、その成果が表れてくるのはいつ頃になるのでしょうか。
大喜 今月中は準備期間として、来月から本格的に始めます。ポイントは、やる気のあるオーナーさんにたくさん参加していただき、オーナーさんが商売しやすい環境をいかに整備していくかにかかっています。FVCは、これまでのフランチャイズチェーンのような親子関係ではなく、あくまでもオーナー店と対等にビジネスを進めていく仕組みです。オーナーさん1人ひとりと話し合いを進め、意欲あるオーナーさんに参加していただける体制の拡充を急ぎます。FVCに参加していただけるオーナーさんの数は、まだ見えていませんが、できるだけ多くの方々に参加していただけるよう努力します。半年、1年の間にすぐ実績を出せるかどうかは不透明ですが、少なくとも3年以内には、売上高や利益などの数字で実績を出していく方針です。
眼光紙背 ~取材を終えて~
昨年12月、父親との共同経営という形で代表取締役社長に就いた。業績が厳しい時期の社長就任ついて尋ねると、「いつだって商売は厳しい。就任の時期はあまり気にしていない」とあっさりしている。 「父がこの会社を創業して以来21年で、事業そのものが大きな転換点に来た。右から左へパソコンを売る時代が終わり、地域に根差した営業スタイルへと変わる。東京・秋葉原の店は、この方向性から外れるので2月で閉める」「16歳の高校生の頃からアルバイトで会社の手伝いをした経験などから、古参メンバーのことはよく知っている。私と同じような若いメンバーも、経営方針に理解を示してくれている」方針は定まった。あとは行動して実績をつくるのみだ。(寶)
プロフィール
大喜 章徳
(だいき あきのり)1968年、愛知県生まれ。91年、南山大学経営学部卒業。同年、松下電器産業入社。99年、オーエー・システム・プラザ(OAシステムプラザ)入社。01年4月、経営戦略室課長。同年7月、執行役員経営戦略室室長兼電算室室長。同年12月、取締役副社長経営戦略室室長兼電算室室長。02年7月、取締役副社長経営戦略室室長。03年12月、代表取締役社長に就任。
会社紹介
昨年度(2003年9月期)の売上高(非連結)は前年度比19.7%減の216億8500万円、経常損益は7700万円の赤字だった。今年度(04年9月期)の売上高は同5.5%減の205億円、経常損益は1億5400万円の黒字を見込む。減収傾向に歯止めをかける切り札として用意しているのが、地域密着型のネットワークづくりである。同社では、これを“顧客の畳の上にあがる営業スタイル”と呼ぶ。主要な郊外店にサービスカーを配備したり、昨年12月に38.3%の株式を取得した豊栄家電のFVCノウハウを取り入れた地域密着型の新店舗を増やすことで収益拡大に力を入れる。直営のOAシステムプラザの店舗と、FVC店舗の両方をフルに活用し、販売力やサポート力の拡充を急ぐ。