今年1月15日付でトップの座に有薗憲一社長が就任し、ベスト電器は第2創業期に入った。就任早々、これまで社長に集中していた権限を細分化するなど、抜本的な経営改革を実施。店舗展開では、不採算店舗の閉鎖を急ぐ一方、九州・沖縄地区では逆に積極的な新規出店を行い、経営の基盤固めに注力する。有薗社長は、「経営判断のスピード化を図っていく」姿勢を崩さない。
短期間で改革を成し遂げ、経営判断のスピード化図る
──社長就任直後から、抜本的な経営改革を矢継ぎ早に実施してこられました。
有薗 これまで当社は、正直言って社長の一存で物事が決まる風潮がありました。そのため、何を行うにしても社長の許可がなくては動けないケースも多々あったのが事実です。こうした状況を打破するため、それぞれの責任者に権限を委譲することで、経営判断のスピード化を図っていくことが私の使命です。日本の社長の平均年齢は57歳といわれています。それにもかかわらず、私は63歳で社長に就任しました。10年先のことを、社長職の立場から考えることはできません。10年で行うことを1年で行わなければならない。そのため、抜本的な改革を早急に進めました。
社内組織では、経営企画本部と関連事業本部を新設し、営業本部と管理本部の4本部制にしました。各本部の責任者による合議制で、それぞれの事業の方向性を定めていきます。また、全国を7地区に分けて社内カンパニー制にしたり、連結子会社の社長を本体の役員が兼務するのではなく、専任社長を設置することも計画しています。これらは、今年度(2005年2月期)中に実施します。
──スクラップ&ビルド戦略については、九州・沖縄地区の基盤固めが最大のテーマになりますね。
有薗 この戦略は、地元である福岡を中心とした地域の基盤固めが狙いです。これまでは「全国ネットワーク」をコンセプトに、さまざまな地域に店舗を増やすことに力を注いできました。しかし、今後は不採算店舗の閉鎖に重点を置き、基盤を固めるべき地域での出店を進めていきます。地元の基盤を固める背景には、九州地区の競争が年々激しくなっていることが理由に挙げられます。天神にある福岡本店では、昨年度の売上高が前年並みと厳しい状況でした。もっとも本店のすぐ側にはビックカメラさんが「天神」と「パソコン館」、「天神新館」を出店し、激しい競争を繰り広げるなかにあって、よく頑張った方だといえます。
その他の地区でも、競合他社が次々と出店してきました。競合店舗が多く出店することは、お客さんが自分に合った店舗を決められるということでもあり、市場活性化のためには良いことだといえますが、そうした激しい競争のなかで、いかにベスト電器を選択してもらえるかが重要になってきます。当社の売上高のうち、九州地区は全体の54%、利益で84%を占めています。知名度の点でも、九州を中心に山口県や沖縄県などが高いといえます。ですので、九州地区の基盤を固めることが最適だと判断しました。
──山口県周南市以東の地域では不採算店舗を閉鎖するそうですね。
有薗 広島県や岡山県などは、九州と同様に新店舗を出店したとしても、この地区にはデオデオさんという強力な企業が基盤を固めています。他の地域でも、地元に根を張る有力な企業が沢山います。当社にしてみれば、山口県周南市より東の地域では弱者の立場です。そういった地域では、店舗数を増やすのではなく、不採算店を閉鎖し、代わりに競合他社の店舗よりも大規模な店舗を出店することで、対抗していく考えです。今年度中には、32店舗を閉鎖することを決定しました。これはレギュラー店(直営店)の1割以上に相当する店舗数です。閉鎖を決めたのは、業績が悪いというのが最大の理由です。決定にあたっては実際にその店舗を見に行き、そのショップの店長とも話をし、立地条件の問題など業績が悪い要因を聞きました。
店舗を縮小することは、売り上げを下げることにもつながります。しかし、利益を確保していくには、競合に耐えられる店舗だけを残していくことが必要になるわけです。サポート面では全国を網羅する子会社の「ベストサービス」がありますので、自前で独自のサポートサービスを提供できることも強みになるといえます。顧客データをもとに最適なサポートを行えることは、重要なアイテムです。
積極的な業務提携、競合店舗に対抗
──他の地域で競合他社に対抗する策はあるのですか。
有薗 高島屋さんや東急百貨店さん、ロフトさん、そごうさんなどと業務提携しており、今後も共同出店を進めていきます。3月には、広島市の中心部にある「そごう広島店」の中に「ベスト電器そごう広島店」を新規出店しました。この店舗は、デオデオ本店の向かい側に店を構えています。こうしたテナント出店は、競合他社との差別化にもつながりますし、従来とまったく異なる顧客層を獲得するという意味でも重要な戦略と考えています。ダイエーさんに関しては、これまで積極的な出店を続けてきました。今後も新規出店を増やす予定でしたが、不採算店であれば撤退、出店すべき地域は出店していこうと考えています。
──海外でも店舗を出店していますが、店舗数は縮小傾向にあります。今後の海外展開については。
有薗 確かに、全盛期には10か国に30店舗程度あったのですが、現在はシンガポール、マレーシア、香港の3か国・18店舗に減っています。しかし、海外は十分に視野に入れている市場です。増加策の一例ですが、高島屋さんがシンガポールに出されている店舗内に出店しているケースがあります。国内では、さまざまな百貨店さんと提携しましたので、その百貨店さんが海外に店舗を出店される際、「テナント出店で当社を使うのはどうか」と話を持ちかけています。
──積極的なアライアンス戦略が目立ちますね。
有薗 他業種では、大京さんが建設するマンションに当社が扱っている家電を提供するという業務提携を行いました。消費者は、新築マンションに引っ越す際、家電を買い替えるケースが多々あります。ですので、分譲マンションに家電機器を備え付けて販売することを計画しています。
パーツ専門店のアプライドさんと、お互いが扱っている機器を販売し合うという業務提携も行いました。当社がAV(音響・映像)機器をアプライドさんの店舗に提供し、アプライドさんが当社のパソコン専門店「コンピュータウン」にオリジナルパソコンを提供するという内容です。第1号店としては、アプライドさんが北九州市にある既存店舗「チャチャタウン店」を2月にリニューアルオープンしたのにともない、薄型テレビやDVDレコーダーなどのデジタル家電を提供しました。当社としては、高性能であるにもかかわらず、低価格で顧客ニーズに合ったアプライドさんのオリジナルパソコンで競合店舗との差別化が図れます。提携効果を出すための新規出店およびリニューアルについては、採算がとれる店舗に仕上げられるよう、アプライドさんとの綿密な話し合いで戦略的な店舗作りを早急に詰めていく予定です。
眼光紙背 ~取材を終えて~
有薗社長は63歳。前社長だった北田葆光氏の逝去に伴い、社長に就任することとなったが、「本来ならば、社長に就くような年齢ではない」と打ち明ける。しかし、専務の立場から故・北田氏を17年間支えてきた人物として、「今後のベスト電器を飛躍させる適任者」と誰もが認める人物だ。こうした期待に、「10年後に自分が社長であるかどうかも分からない。改善すべきこと、やるべきことなど、10年間で行うことを1年間で」と自らに言い聞かせる。その第1弾が社長就任と同時に実施した経営改革である。「日々の売上実績を見て、各店舗の状態を把握し、競合他社の動きを分析する」。しかも、日本経済全体を視野に入れながら、家電量販店のあるべき姿をも見出そうとしている。(郁)
プロフィール
有薗 憲一
有薗憲一(ありぞの けんいち)1940年10月3日生まれ、鹿児島県出身。63年3月、学習院大学政経学部政治学科卒業。同年4月、南日本銀行入行。70年2月に退行し、九州機材倉庫(現ベスト電器)に入社。76年5月、取締役。77年5月、常務取締役。85年5月、専務取締役管理本部長。89年3月、専務取締役管理・人事統括本部長兼管理本部長。02年9月、代表取締役専務取締役店舗開発監査・海外事業・情報システム担当などを経て、04年1月に代表取締役社長に就任。
会社紹介
ベスト電器の設立は1953年9月3日。03年で創業50周年を迎えた。店舗数はフランチャイズを含め全国に600か所以上を構え、有力家電量販店の1つに数えられる。これまでは「全国ネットワーク」をコンセプトに、店舗を増やし続ける戦略をとってきた。しかし、前社長の北田葆光氏の突然の死去により、トップに就任した有薗憲一社長は、不採算店舗の閉鎖が利益確保のカギになると判断。04年度(05年2月期)中に32店舗の閉鎖を決定した。一方で、知名度が高い九州・沖縄地区では、経営基盤を一層固めるための新規出店を積極的に行っていく。大手百貨店との提携なども進めており、家電量販店がこれまで獲得しきれていなかった女性層の取り込みにも力を注ぐ。03年度(04年2月期)の連結実績見通しは、売上高3600億円、経常利益53億円、当期純利益25億円。