RDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)で知られるサイベースが“ビジネスソリューション”を提供する企業に変貌を遂げようとしている。開発パートナーと協業し、同社が得意とするプラットフォーム製品を拡販。競合他社が踏み込んでいない新しいビジネス領域を開拓していく。今年1月にトップに就いた早川典之社長(アイエニウェア・ソリューションズ社長を兼任)は、「データベース製品に特化した企業というイメージを払拭させる」と意欲を燃やしている。
ソフトメーカーとパートナー関係構築
「デベロッパーズプログラム」を策定
──社長に就任し、2か月が過ぎようとしています。新体制の方向性は固まりましたか。
早川 具体的なプランを固めたわけではありませんが、「データベースのサイベース」というイメージを払拭し、トータルなビジネスソリューションを提供していきたいと考えています。当社の製品だけを販売するビジネスモデルではなく、国内向けソフトを開発するメーカーとパートナー関係を深めていき、パートナーの製品と当社のプラットフォーム製品を組み合わせ、日本にフォーカスした提案を行っていきます。
当社では、「ダイナミック・オペレーショナル・データ・ストアズ(DODS)」という、DB2などメインフレームのデータをレプリケーション技術でレポーティング環境へ自動的に反映するツールをこのほど発売しました。この製品により、メインフレームとデータベースをつなぎたいという顧客企業からの要望に応えることが可能となります。
競合他社の場合、こうした依頼が顧客企業からあると、顧客が導入しているシステム自体を入れ替え、自社製品を採用してもらうことに力を入れます。しかし、このやり方は顧客にとってマイナスになる可能性もある。すでに構築しているシステムで課題が解決できれば、システムを入れ替える必要もなく、コストもかからずに済みますし、1社だけの製品でニーズに合ったシステムを構築できるとは限りません。顧客ニーズに対応していくためには、当社の製品とパートナーが提供するシステムでソリューションを提案することが重要だと判断しました。
──サイベースが提案するビジネスソリューションにニーズが高まっているということですか。
早川 その通りです。というのも、国内では企業のIT投資が回復し、その傾向が2005年も続くという気運があります。しかし、企業が導入したシステムはCRM(顧客情報管理)やSFA(営業支援システム)など特定分野に過ぎません。今後は、バックオフィスからフロントエンドまで一貫したシステムを求めるニーズが必ず出てきます。
一方、データベースなどのソフト市場は、パッケージ製品の提供などにより、価格をはじめとする競争が激しくなっていくのは明らかです。こうしたなか、DODSはニッチなビジネスに入り込むようなツールと見られがちですが、確実に需要があると自負しています。この製品に、パートナー各社がもつソフトを組み合わせることで最適なソリューションを提供できると確信しています。
──総合的な“ビジネスソリューション”を提供するという新しいビジネスを展開するうえでは、新規パートナーも必要になりますね。
早川 確かに、これまではデータベース製品を売ることだけに特化したパートナーが多かったといえます。こうしたパートナーの方に対しては、当社のビジネスモデルを理解してもらうよう話を進めています。また、パートナー企業との連携をより緊密にする必要があるため、ソリューションの提供ノウハウを持った新しいパートナーを開拓している段階でもあります。
開発パートナーに関しては「デベロッパーズプログラム」を策定します。この3月7日にはパートナーの方に集まってもらい、「アライアンスミーティング」を開催する予定です。具体的なプログラムの内容については申し上げられませんが、パートナーが適応しやすいプログラムに仕上げています。また、コンサルティングを絡めたアライアンスを組んでいくことも必要だと考えています。
アイエニウェアとの連携を強化
RFIDなど新規ビジネスへの参入も
──サイベースの事業部から独立したアイエニウェア・ソリューションズとの連携については。
早川 シナジーを発揮することに力を入れていきます。私は、アイエニウェア・ソリューションズの日本法人の設立にともない社長に就任し、モバイルおよびワイヤレス事業、組込型データベース事業に携わってきました。アイエニウェアは、サイベースと対象顧客が違いますので、別法人であることは大きな成果になっています。しかし、一方でビジネスモデルが異なるという点から、サイベースとアイエニウェアに乖離が生じたという課題も出てきています。サイベースでビジネスソリューションを提供していくという点でも、テクノロジーの連携でビジネス領域を広げ、両社の相乗効果を高めていくことが新規顧客の開拓につながります。
ワールドワイドでは、「Liquidity(流動性)」と「Mobility(移動性)」という2つの分野にフォーカスし、変化の激しい予測不能なビジネス環境に柔軟に対応する「アンワイヤード・エンタープライズ」を掲げています。これは、情報管理、開発、統合におけるサイベースの企業インフラストラクチャーとアイエニウェアが持つモバイル・ソフトウェア・ソリューションを連携させることで、「いつでも、どこでも」利用できるITシステムを提供するというものです。
サイベースの社長に就任し、なおかつアイエニウェアの社長も兼務していることは、「アンワイヤード・エンタープライズ」というビジョンを、日本市場で早期に実現するための使命だと考えています。実際、サイベースとアイエニウェアのシナジーを発揮したプロジェクトが提案ベースですが動いているのは事実です。
──具体的には。
早川 新しいビジネス分野への参入という点ではRFIDへの提案です。RFIDは今後、日本で注目を集めることになります。組込では、アイエニウェアの「RFIDエニウェア」を活用し、これにサイベースのプロフェッショナルサービスを加えてRFIDのミドルウェアを提供します。(総務省の周波数割り当てにより)今年4月以降、UHF帯が使えるようになると、RFIDは一気に広がることになります。この分野では、サイベースとアイエニウェアの双方が培ってきた強みを発揮し、ケーススタディを多く取り揃えていけます。
──他の製品戦略については。
早川 主力製品であるRDBMSの「サイベース・アダブティブ・エンタープライズ(ASE)」では、セキュリティを強化した新バージョンやLinux版などを国内市場に投入していきます。また、RFIDの分野についてはデータウェアハウス専用のRDBMSサーバーソフト「サイベースIQ」と、RFIDシステムとの組み合わせによる提案も行っていきます。
──今年度(05年12月期)の売上見通しは。
早川 具体的な数字は明かせませんが、新しいビジネス領域に踏み出したため、売上規模は確実に拡大します。現在、アイエニウェアの売上高は年率20%程度の成長ですが、サイベースは微増にとどまっています。これを今年度にはサイベース、アイエニウェアともに、前年度比20│ 30%増を目指します。
眼光紙背 ~取材を終えて~
早川社長がサイベースに入社したのは1998年5月。当時は、パートナー営業統括部長として、パートナー開拓に力を注いだ。03年2月には、アイエニウェア・ソリューションズの設立にともない、同社の社長に就任。モバイルおよびワイヤレス事業、組込型データベース事業でパートナーを開拓してきた。
サイベースの社長に就任したのは、米サイベースがワールドワイドで掲げている「アンワイヤード・エンタープライズ」を、日本で早川社長が最も理解しているからだ。
このビジョンを早期に実現するため、パートナーとの協業が最適と判断。これまで培ってきたパートナー開拓のノウハウを生かし、サイベースとアイエニウェア両社の社長という立場から指揮を執ることになった。“ビジネスソリューション”の提供という新領域で手腕を発揮することに期待がかかる。(郁)
プロフィール
早川 典之
(はやかわ のりゆき)1962年2月2日生まれ、大阪府出身。85年3月、慶應義塾大学理工学部(制御工学専攻)卒業。同年4月、松下電器貿易入社。90年、松下電器貿易と松下電器産業の合併に伴い、松下電器産業に転籍。98年5月、サイベースに入社し、パートナー営業統括部長に就任。01年3月、取締役兼アイエニウェア・ソリューション事業部長。同年10月、副社長。03年2月、アイエニウェア・ソリューションズの設立にともない社長に就任。04年3月、米アイエニウェア・ソリューションズ北アジア地域担当副社長などを経て、05年1月、サイベース社長に就任。アイエニウェア・ソリューションズ社長も兼任する。
会社紹介
サイベースは、米サイベースの日本法人として1991年4月に設立。国内市場でRDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)の販売を中心に売上拡大に力を注いできた。03年には組込型データベースの開発部門を独立させ、アイエニウェア・ソリューションズを設立した。 ワールドワイドの戦略では、「アンワイヤード・エンタープライズ」を掲げる。これは多様化する顧客ニーズに柔軟に対応し、“いつでも、どこでも”利用できるITシステムを提供するという考え方だ。日本市場では、データ分析分野に対応した製品への注目度が高いため、メインフレームのデータをレポーティング環境に自動的に反映するツール「ダイナミック・オペレーショナル・データ・ストアズ(DODS)」やデータウェアハウス専用のRDBMS「サイベースIQ」の拡販に努めている。 また、RDBMS製品の主力に位置付ける「アダプティブ・サーバー・エンタープライズ(ASE)」のLinux版や、クラスタ分野、セキュリティ分野などについても強化していく計画でいる。