4月20日、ソフトクリエイトが大阪証券取引所ヘラクレスに上場した。パソコンショップに始まり、IT商社、ソフトウェアハウス、システムインテグレータへと、IT産業の成長とともに業容を進化。そして今、林勝社長は「ソフトプロダクトメーカー」を標榜する。好調が続く自社開発パッケージソフト事業を軸に、ソフトクリエイトを新たなステージへと導く。
株式公開は成長へのステップアップ、多様なビジネス経験が大きな強み
──4月20日、大阪証券取引所ヘラクレスに上場しました。ソフトクリエイトにとって、株式公開はどのような位置付けになりますか。
林 あくまで通過点に過ぎません。これからも当然ソフトクリエイトを成長させていきますから、新たな成長路線を築くためのステップアップと位置付けています。ただ、ソフトクリエイトの社長に就任してから約23年、株式公開は1つの目標でしたから、目標を果たすことができてホッとしています。
──ソフトクリエイトのビジネスモデルは、IT産業の移り変わりとともに変化してきました。
林 確かに、さまざまなビジネスをソフトクリエイトは経験してきました。私が社長に就任した頃は、コンシューマ向けパソコンショップの運営会社でした。ビックカメラなどのカメラ量販店が本格的にパソコン販売を開始したことで事業撤退を余儀なくされ、法人向けのパソコンおよびIT機器商社へと姿を変えました。その後には、受託ソフト開発ビジネスをメインに事業展開してきた過去もあります。今はネットワーク構築や情報システムの構築・運用、保守サービス、そして自社開発のパッケージソフトも揃えるシステムインテグレータに変貌を遂げました。
私は、この多様なビジネスを経験してきたことこそが、ソフトクリエイトの大きな強みだと認識しています。現在の事業は、大きく分けて「システムインテグレーション(SI)」、IT機器販売の「ITインフラ提供」、そしてIT機器などのインターネット通販サイト「特価COM」の運営の3つですが、いずれも過去のビジネスのノウハウが生きているのです。
──具体的には。
林 たとえば、自社開発パッケージソフトの中核商品で、EC(電子商取引)サイト構築ソフトの「ecbeing(イーシービーイング)」が生まれた背景は、「特価COM」を運営しているノウハウがあるからです。ITベンダーの下請けではなく、エンドユーザーからの受託ソフト開発を手がけていることで、「顧客の要望が強いソフトは何か」が探れ、新たなパッケージプロダクト創出のヒントを得ることもできています。パソコンショップの運営や、IT商社を経験したことで身に付いた営業力も武器になっています。さまざまなビジネスで得たノウハウは、すべて今のソフトクリエイトのビジネスに結び付いているのです。
パッケージソフト販売を中核事業に 4年以内に経常利益率10%へ
──3つの事業領域のなかでも、自社開発のパッケージソフトを軸にしたSIビジネスを強化しています。今後のソフトクリエイトは、自社開発のパッケージソフトにリソースを絞っていくのですか。
林 その通りです。パッケージソフト販売事業は、ソフトクリエイトの中核ビジネスへと成長させます。ソフトクリエイトを「ソフトプロダクトメーカー」と位置付け、開発・販売の両面で強化していきます。
中期的な計画として、4年以内に「売上高100億円の突破、経常利益率10%の確保」を掲げています。自社開発プロダクトは、利益率が他のビジネスに比べ圧倒的に高いですから、計画を達成するうえで重要な事業となります。
2001年に初の自社開発パッケージソフト「ecbeing」を発売して以来、パッケージソフト事業は順調に伸びています。「ecbeing」では、150サイト以上を手がけた実績があり、「ecbeing」のほか自社開発パッケージソフトを2製品ラインアップに加えることもできました。パッケージソフト関連ビジネスが全売上高に占める割合は、01年度(02年3月期)が4.7%だったのに対し、昨年度(05年3月期)中間期の時点では20.4%まで上昇しています。このことで、01年度は0.8%だった経常利益率は、昨年度中間期には6.5%まで上がっています。今後はより一層力を入れていきますよ。
──伸ばすための強化施策は。
林 まず、「ecbeing」を中堅・中小企業に拡販するため、現行製品の廉価版のリリースを検討しています。「ecbeing」のユーザーは、これまで大企業が中心で、中堅・中小企業へのアプローチは手薄でした。しかし、ブロードバンドが普及しネットワーク環境が整備されたことで、中小企業からもECサイトの構築ニーズは増えてくる。本格的なEC時代の到来を迎えるでしょう。ソフトクリエイトは、中小企業ユーザーを多く勝ち取っているオービックビジネスコンサルタント(OBC)と資本・業務提携していますから、この廉価版を商材に、OBCの販売チャネルを活用することなどで、中小企業のユーザーにも積極的にアプローチできると考えています。
また、新商品2モデルの開発も進めています。実際にビジネスにつながるパッケージかどうかなど、今は調査している段階ですが、ラインアップを増やすことは事業拡大に必須だと認識しています。
組織面でも強化を図っています。5月2日に行った組織再編では、プロダクト営業部門を新たに設置しました。パッケージソフト関連ビジネスの営業人員を増やし、パッケージソフトを専門に販売する体制を整えました。開発部門も見直しています。これまで受託ソフトとパッケージソフトの開発人員が混在していましたが、新体制ではパッケージソフトと受託ソフト開発の組織を明確に分け、よりいっそう、機能の拡張や品質の向上に専念できるようにしました。
──パッケージソフトの販売は、パートナーを経由した間接販売が約80%を占めていますね。パートナーに対する支援も強化する必要があります。
林 もちろん強化しますよ。名古屋、大阪、福岡の3地域に販売パートナーの営業支援拠点を設置し、同行営業などでパートナーのビジネスを支援します。
また、パッケージソフトを導入する際に、必要なカスタマイズソフトの開発を手がける開発パートナーも増やします。現在は10社程度ですが、新たに6─8社増やすつもりです。
──他の事業に関しては、どのように進めていく方針ですか。
林 パッケージソフトに力を入れますが、他の事業から撤退するわけではありません。受託ソフト開発は、エンドユーザーからの元請け案件がすべてですから、新たなパッケージを開発するヒントを得ることにつながります。「特価COM」の運営は、「ecbeing」の今後追加しなければならない機能は何かを教えてくれます。
また、ITインフラ提供は、新規顧客を開拓することに役立ちます。飛び込み営業で、いきなり受託ソフト開発やSIの案件を勝ち取ることは難しいですが、パソコン1台、プリンタ1台を販売することは比較的容易です。受託ソフト開発やSIビジネスにつなげるための足がかりになります。これまで培ったソフトクリエイトの多様なビジネスの歴史は大きな強みです。継続して事業展開し、相乗効果を発揮していきます。
眼光紙背 ~取材を終えて~
ソフトクリエイトという社名の名付け親は、林社長自身。命名した当時はパソコンショップの運営を中心に事業展開していた。それにもかかわらず、社名に「ソフト」を加えたのは、ソフトに対する熱意がこもっていたから。
学生時代にソフト開発に触れ、今後のIT産業にはハードよりも「ソフトが重要になるという確信を持っていた」。ソフト開発ビジネスは、社長に就任した頃からやりたかった事業。
さまざまなビジネスを経験し、今は「ソフトプロダクトメーカー」を標榜。「過去2度上場しようと思ったタイミングがあったが、市場環境が悪化したことから踏みとどまった」苦い経験がある。だが、今のビジネスモデルでの上場が「結果的に一番良かった」と振り返る。
高収益体質を作り、念願のソフト開発事業を軸にしたさらなる成長に自信を示している。(鈎)
プロフィール
林 勝
(はやし まさる)1945年5月生まれ、新潟県出身。68年3月、慶応義塾大学工学部電気工学科卒業。同年4月、三井造船入社。71年3月、白坂産業(現ソフトクリエイト)入社。同年4月、取締役に就任。82年4月、代表取締役社長に就任。
会社紹介
ソフトクリエイトは、EC(電子商取引)サイト構築ソフト「ecbeing(イーシービーイング)」などの自社開発パッケージソフトに強みを持つシステムインテグレータ。コンシューマ向けパソコンショップの運営や、法人向け受託ソフト開発事業などを経て、現在は、(1)ネットワークおよび情報システム構築、システム運用保守サービスなどの「システムインテグレーション(SI)」、(2)IT機器販売の「ITインフラ提供」、(3)インターネット通販サイト「特価COM」運営──の3事業を展開する。
システムインテグレーション事業の売り上げが圧倒的に高く、全売上高の約80%を占めている(2005年3月期)。01年には同社にとって初めてとなる自社開発パッケージソフト「ecbeing」を発売。その後、2つのパッケージ製品を投入するなど、パッケージソフト事業を強化している。
昨年度(05年3月期)の業績は、パッケージソフト販売事業などが順調に推移し、売上高が前年度比38.3%増の69億9500万円、営業利益が同86.2%増の4億500万円、経常利益が同62.9%増の4億1000万円、当期純利益が同77.9%増の2億2400万円と、大幅な増収増益となった。
社員数は約200人。今年4月20日、大阪証券取引所ヘラクレスに上場した。