フューチャーシステムコンサルティング(金丸恭文会長)は中堅中小企業に強いSIerのウッドランド(安延申社長)と来年1月1日付で経営統合する。これまで得意としてきた大企業のみならず中小企業に至るまでトータルなサービスを提供することで企業価値を高めるのが狙いだ。だがウッドランドは特別損失を計上するなど赤字が続き、企業カルチャーの違いもある。両者のいいところをどう伸ばすのか--金丸会長に聞いた。
統合の相乗効果は大きい 会計とプロセッサがカギ
──なぜウッドランドと経営統合するのですか。
金丸 ウッドランドは会計が強い。当社は次世代ITのグランドデザインに強い。両者が組めば新しい時代にふさわしいカンパニーになれると考えたからです。
企業経営において会計は中核に位置づけられます。しかし、内部統制の強化など、近年では会計単体で完結しなくなっています。会計に落ちてきた数字をさかのぼって調べられるようなトレーサビリティ機能や複数同時に発生する大量のプロセスをリアルタイム処理できるインフラなど、より高度なITが求められています。ウッドランドの会計と当社の基盤構築力との相乗効果は大きい。
──ウッドランドは中堅中小に強く、フューチャーは大企業に強い。この2つが合わさってビジネスをどう拡大していくのですか。
金丸 キーワードは“会計とマイクロプロセッサ”です。ウッドランドも当社も会計は大切だと思っている。これをベースに世界の先進IT技術を駆使して誰も提供したことのないような付加価値の高いサービスを提供します。ここが狙いです。
わたしは新卒でTKCに入社しました。TKCといえば会計システムを全国の税理士や会計士、中小企業に提供していることで有名です。当社のDNA、わたしのルーツは中小企業向けの会計システムにあります。起業したときは人手がなかったこともあって大企業にターゲットを絞りましたが、中小企業向けのサービスの形態や値頃感がどこにあるかなどをよく理解しているつもりです。
今後、当社が大企業から中堅・中小企業に進出していくうえでウッドランドとの経営統合は大いにプラスに働きます。社員数も当社がおよそ550人、ウッドランドが400人余りで来年の新卒採用の見込み数を加えれば1000人を超える規模になります。
──今回の合併で規模も大きくなり大企業から中小までカバーするとなると、競合SIerとの差別化が難しくなりませんか。
金丸 1989年に起業したとき“ITコンサルティング”を旗印に掲げました。当時はITコンサルティングに対する認識が低いこともあり、多くの人は急成長するとは思っていなかったでしょう。ところが今では大手ITベンダーがITコンサルティング会社を買収するなどIT戦略の立案・コンサルティングから保守・運用までトータルなサービスを提供できるようになっています。
競争優位を保つためにはトータルサービスの提供能力をより高めなければなりません。強みとしてきたITコンサルティングも、より発展させることが求められています。
ウッドランドとの合併によってトータルサービスの実行力が高まり、ITコンサルティングという従来の業態から範囲を広げて企業再生や地域再生、都市づくりなどさらに大きいグランドデザインに取り組んでいきます。社名も来年1月1日付でフューチャーアーキテクトに変えます。フューチャー(未来)のアーキテクト(設計者)という意味を込めました。
不採算案件をどう防ぐか 起業家と発明家の集団に
──ウッドランドの業績は決してよくありません。特別損失などで昨年度(2006年3月期)連結で約10億円の最終赤字ですし、今年度中間期における特別損失も発表しています。
金丸 確かにここ数年の業績はよくありません。問題プロジェクトも発生したようです。当社が実質無借金経営なのに対してウッドランドは借入金がやや多くあります。基本的にはウッドランドの中間期までにマイナス部分を特別損失などで計上してもらい、来年1月1日付の合併以降は両者の利益が足し合わさって大幅にプラスになるイメージを想定しています。借入金は一時的に増えますが利益を出すことで改善できる見通しです。
──不採算案件などプロジェクト管理能力の不足は深刻な問題です。
金丸 当社でも不採算案件はあります。ただ納期や品質、コスト管理に対するこだわりはウッドランドにはないカルチャーだと自負しています。過去におけるウッドランドは不採算案件を防げなかった点がまずかった。
当社は創業以来、納期が1日たりとも遅れないよう努めてきました。会社が小さかった時はそうでないと資金繰りに窮するという事情もありました。初めて納期が遅れたのは創業9年目ですが、品質と納期にこだわり続けることに、今も変わりはありません。ソフトウェアにバグは許されず、納期通りに完璧に仕上げなければならないというカルチャーは創業時から今まで受け継がれています。
合併して大きくなるにつれてこうしたカルチャーが失われていかないよう、しっかりマネジメントしていかなければなりません。
──ウッドランドはグループ・関連会社が昨年度末時点で20社もあります。御社も数社のグループ会社がありますので合併でグループ会社の数が増えすぎることはありませんか。
金丸 ウッドランドの分社経営はそれぞれの専門領域を明確化して相乗効果を生み出していくものです。それ自体は何の問題もありません。ただ合併後は20社を超えるグループ・関連会社の機能や役割を整理し、顧客から見て最適な配置に並べ替える必要があると考えています。安延さん(安延申ウッドランド社長)とも相談しながら決めていきます。
見方を変えれば20社余りの経営者が集まることでマネジメント層が厚くなります。起業家と発明家の集団として、今後ニュービジネスを起こす人が増えることも期待できます。
──新体制では金丸会長がCEO、安延社長がCOOに就く予定です。業界内には早くも「個性の強い2人が組んでうまくいくのか」という声が出ているようですが。
金丸 ははは(笑)。安延さんが通産省(現経済産業省)に勤めていた時は、個性の強い大臣に仕えていたわけで、ぼくなんかはむしろ簡単なのでは?
当社はいい意味でも悪い意味でも金丸のトップセールスに依存してきた面があります。これからは安延さんとツートップの体制になり、経営的にはプラスになります。固定的な役割分担を決めるのではなくて顧客の視点で最適な役割をそのつど決めていけばいいと思っています。あるときはわたしがサブ、アシストになることもあるでしょう。
──経営統合により中期経営目標で掲げた08年度に売上高200億円、経常利益30億円は見直す必要がありそうですね。
金丸 具体的な数字は統合後の早い段階で明らかにする予定です。今は言えません。
当社は03─04年度と2期連続で減収減益になるなど踊り場にさしかかっていました。この時期に会社を去った人もいて残念ですが、会社全体の芯は強くなりました。昨年度から再び成長フェーズに入っており、来年度の経営統合でさらに飛躍できると手応えを感じています。
My favorite 米ウエストコースト発祥の音楽をこよなく愛する。オープン系のITが勃興した地でもあり、「西海岸でITの可能性を知った」という。ギターは学生時代に現地で買ってきたものだ。色を塗り替えるなど大切に保管している。ただ、今は手軽なカラオケに通うことが多いとか
眼光紙背 ~取材を終えて~
フューチャーの若い世代は中小企業向けのビジネス経験に乏しい。ウッドランドの財務的な問題もある。だが、「より差し迫った課題は、タイムリーな決断」だと金丸会長は言う。
金丸氏と安延氏は、10年ほど前に元マイクロソフト社長の成毛眞さんを通じて知り合った。以来親交を重ね、金丸氏、成毛氏はウッドランドの社外取締役を務めるなど近しい関係にある。「取締役会を通じて安延さんとの意思疎通を図り、価値観を共有してきた」というが、統合後20余りに増えるグループ会社全体の意思疎通は容易ではない。
「“1年たっても知り合わないまま”という状態は避けなければならない。来年の今頃はスピード感と一体感をもって経営できるようにする」。ある課題について3年でやればいいのか、3日でやらなければならないのかを峻別し、タイムリーな決断と行動が新生フューチャーに求められている。(寶)
プロフィール
金丸 恭文
(かねまる やすふみ)1954年、大阪生まれ、鹿児島育ち。78年、神戸大学卒業。79年、TKC入社。82年、ロジック・システムズ・インターナショナル(現ロジック)入社。85年、NTTPCコミュニケーションズ取締役。89年、フューチャーシステムコンサルティング設立。社長に就任。05年、会長兼社長に就任。07年1月、フューチャーアーキテクト代表取締役会長CEOに就く。
会社紹介
2007年1月1日付でフューチャーシステムコンサルティングはウッドランドと経営統合する。フューチャーが他社と経営統合するのは今回が初めて。手続き上はフューチャーを存続会社とする吸収合併方式だが、対等の精神で合併する。フューチャーの今年度(06年12月期)連結売上高見通し149億円とウッドランドの今年度(07年3月期)の同55億円を単純合算すると204億円規模になる。合併後の社員数は両者の来年度新卒採用予定数も含めて1000人を超える見通し。統合後の社名はフューチャーアーキテクトに変える。フューチャーの金丸恭文会長が代表取締役会長CEO、ウッドランドの安延申社長が代表取締役社長COOに就く。