レノボ・ジャパンのトップ就任から約半年、ロードリック・ラピン社長は厳しい経済環境下でも「アグレッシブに攻める」と強気。前年度を超える成長戦略を描く。サーバー市場への参入に、ネットブック投入によるコンシューマ市場進出。活発な動きを見せるなか、今年度(2010年3月期)に照準を合わせるマーケットはSMB(中堅・中小企業)だ。ライバルメーカーもシェア獲りに力を入れる激戦区で、真っ向勝負する。
木村剛士●取材/文 大星直輝●写真
グローバルパワーを生かす
──社長に就任された2008年10月は、国内の経済環境がちょうど悪化し始めた頃。世界のPCマーケットは前年割れが続き、レノボ本社はリストラプログラムを発動しました。国内も厳しい事情は同じで、レノボ・ジャパンの舵取りも一筋縄ではいかないのでは?
ラピン このような景況ですと、あらゆる企業が共通して大きな課題を抱えているのではないでしょうか。しかし、それを言い訳にしてもダメです。大切なことは、ユーザーの要望をしっかりと分析し、それにどうやって柔軟かつダイナミックに応えることができるかです。自分たちが変わり、競合メーカーよりも高い付加価値を提供できるかどうか。当たり前のことかもしれませんが、こうした時代だからこそ、これまで以上に徹底しなければなりません。
それに私はもともとポジティブな性格ですからね。景気は後退していますが、アグレッシブに攻めますよ。前年に比べてさらに成長する戦略を描いています。レノボ・ジャパンからは成功への道筋を学べる、そう言ってもらえるような存在になりたいと思っています。
──この半年間を振り返り、ご自身の成果として何を挙げますか。
ラピン 半ば実験的に参入したコンシューマ市場では、予想以上の成果が出たと手応えを感じています。昨年12月に発売したネットブック「Idea Pad」は、BCNランキングのネットブック販売台数データでは、9週連続でトップシェアを獲得できました。これは大きな実績だと感じています。
──4月から始まった今年度(2010年3月期)は、ラピン社長が通年で経営手腕を発揮できる年ですね。昨年度後半から準備を進めてきたと聞いています。
ラピン 確かにそう、準備してきました。新年度はレノボ・ジャパンを再定義・再生させる年です。そのために推進する強化施策は四つで、プロダクトの拡充とブランド力強化、CS(顧客満足度)向上、そして人材の最適配置です。
──レノボ・ジャパンが設立されてから約4年が経ちましたが、中国は除くとしても、他国に比べて日本の成長はどうもテンポが遅い印象を受けます。この四つの施策を進めれば、変革できますか。
ラピン 日本には“ローカルジャイアント”というか、国内市場だけに強いコンピュータメーカーが存在する独特の市場です。だから、他国マーケットよりも競争が激しい事情があります。
ただ、この1年ほどで国内のPCマーケットは確実に変わりました。とくにコンシューマ市場をみれば明らかです。3~4年前、国内のPCマーケットでシェアが高かったのは、日本のメーカーと一部の米国メーカーでしたよね。しかし、今はどうでしょう。コンシューマ、とくにネットブックのカテゴリでは、むしろアジアを中心としたそれ以外の国のメーカーがシェアをぐんぐん伸ばしています。 競争レベルは高い水準で、相変わらず厳しい環境ではあるのですが、さまざまなプレイヤーで争う状況に変化した。レノボが受け入れられる可能性も大きくなったということです。
それに加えて、今後はレノボのグローバルパワーをもっと生かせるはずです。ローカルジャイアントメーカーは、日本市場には強いものの、成長が鈍化しています。一方で、レノボは中国やブラジル、インド、ロシアなどの新興成長市場でシェアを伸ばしています。中国市場だけでみれば、レノボが持つPCのシェアは32%にも達しています。実に3台に1台はレノボ製という圧倒的な強さです。そうなると、それら成長市場で稼いだ利益を日本でも有効活用できますし、規模の論理で価格などでは競争力ある施策を打ち出せるようになります。短期的にみれば厳しい環境にありますが、長期的にみれば規模の論理と新興市場での成功で、優位に立てるはずです。
四つの柱は、今レノボ・ジャパンが強化しなければならない重要なポイント。プロダクト、ヒトとブランド、そしてCSは、今後レノボ・ジャパンが飛躍するうえで欠かせない事業基盤なんです。
国内PC市場は変化した。国産と米国メーカーだけが伸びる時代は終わった。グローバルパワーを持つレノボが、力を発揮する時機がきた。
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