「A－a－S」でSMBを開拓

　──SMB（中堅・中小企業）については新規開拓しないのですか。

　マッコーニー　もちろん、ユーザー企業として確保したい。しかし、これまでのアプローチのやり方では少し難しいのではないかと考えています。

　──なぜでしょうか。

　マッコーニー　これは、SMBのIT投資に対する現状と、IT業界の流れで説明できます。昨年からの不況で、多くの企業がIT投資額を極端に抑えている。なかでも、SMBは投資したくても資金がないというケースが多いのです。一方、時代はSaaSやPaaSなどに代表される「A－a－S（アズ・ア・サービス）」を提供する流れになっている。実は日本も、こうした流れが近く訪れるといっても過言ではありません。実は、先ほど申し上げたDCへの提案というのは、「A－a－S」を提供するために当社が協力できることを訴えているのです。

　先日、通信事業者の方と話したんですが、「SMBを掘り起こすには回線を含めたアプリケーションサービスを提供するのが望ましい」と話していました。通信事業者が回線サービスの付加価値を模索しているからなのですが、こうした動きを当社もビジネスチャンスとして捉えなければならないと考えています。データ管理のサービス型モデルの「STaaS（ストレージ・アズ・ア・サービス）」で、当社の製品を提供してもらう。そういった意味では、DC所有の顧客企業が新しい販売パートナーになる可能性が大きいということです。もちろん、DCのインフラ構築に長けている販売パートナー経由です。SMBにストレージのリソースを提供し、顧客として囲い込むことが当社のSMB開拓です。

　──ただ、SaaSがそうなのですが、課題として「A－a－S」は日本で普及するのが遅いといわれています。これは、システム構築と同様にサービス型モデルも“売る”というアプローチを行わなければならないとの見方が強いからです。つまり、“売り手”がいないということではないでしょうか。

　マッコーニー　確かに、日本では思ったより進んでいないかもしれません。しかし、「プライベートクラウド」など大企業ではサービス型モデルを導入するケースが出始めている。コンシューマ市場では、ヤフーやグーグルなどがサービスを提供している。このような状況のなかで、SMBが「A－a－S」を導入しない理由がない。必ず、その流れに向かうと確信しています。

　──ということは、SMB向けストレージ機器の販売に関しては力を入れないというわけですか。

　マッコーニー　ITへの投資意欲が高いSMBに対してはシステムを提供していくべきだと考えています。そのためにも、当社はSMB向け製品をラインアップとして揃えています。こうした機器を拡販するため、ディストリビューションモデルを固めていくことは行います。2次店への支援強化も模索していきます。

　ただ、もう随分と前から楽天のショッピングモールに個人事業主が出店しているように、すでに流れは「A－a－S」です。とくに、今回の不況を教訓として今後はITに関して莫大な額を投資することはできない。また見方を変えれば、グローバル化が進んでいるなか、IT化を進めなければSMBは生き残れない可能性がある。中国や韓国など、ほかのアジア国は積極的にグローバル化を図っています。こうしたことを鑑みても、企業がITインフラを所有しない「A－a－S」は近い将来に訪れる。では、誰もが「その時代になった」と意識できるのはいつなのか。1～2年で答えが出るとみています。

眼光紙背 ～取材を終えて～