富士ゼロックスは、“箱売り脱却”に向けて大改革を断行している。売上高に占める「ソリューション・サービス事業」の割合を3割に高めるという目標を掲げ、すでに2割にまで到達した。残る課題は、グループ販売会社の改革と人材育成だ。山本忠人社長が掲げる、全国のグループ会社でのチームワークを実現するために、さらにこの展開速度を早めていく。
「改革のスピードを上げろ」と鼓舞
──社長に就任(2007年6月)されて3年が過ぎました。就任当初から「箱売りからの脱却」を掲げ、「ソリューション・サービス販売」にシフトしてきましたが、進捗状況はいかがでしょうか。
山本 全体の売上高に占める「ソリューション・サービス事業」の割合を、2013年度(2014年3月期)までに約3割にすることを目標にしていました。現時点で、すでに2割近くまで到達しています。ただ、社内向けには、「ボックス偏重型」から「サービス型」へ移行するスピードを「もっと上げろ」とハッパをかけています。
──その「サービス」ですが、具体的にどんなことに力を入れておられますか。
山本 現在、「グローバル・サービス」「プロダクション・サービス」「ソリューション・サービス」「SMB(中堅・中小企業)のワンストップサービス」の4点に力を入れています。なかでも、「グローバル・サービス」(統合的なドキュメント・アウトソーシング・サービス)が堅調に推移している。プロダクションプリンタの製品も、ラインアップが一通り揃い、優れた事案がいろいろ出てきている状況です。
──「ソリューション販売」を現行の2割から、目標である3割に引き上げるにあたって、現状のままでは不満足と感じておられるような点はありますか。
山本 今までは、専門部隊がソリューション・サービスを担っていました。しかし、これからは全国のグループ販売会社(34社)も、「ソリューション・サービス販売」が展開できるようにしないといけないと考えています。販売会社は従来、コピーやプリンタなどを売ればそれでよかった。このスタイルを2年前に切り替え、現在は販売会社もプロダクションプリンタを売り始めています。
──「箱売り脱却」を実現するには、相当の馬力が必要だと思います。克服すべき課題は何ですか。
山本 やっぱり「人」でしょうね。サービス型に移行するうえで、コピーやプリンタなどの製品や、そこに搭載するソフトウェアなどプロダクト面を変えてきた。だけど、いま一番の課題と感じているのは人材なんです。
──御社には、販売、サポートなど役割ごとに人材が配置されているとみていますが…。
山本 「営業パーソン」は物販型からソリューション型、コンサルティーション型に変えたり、当社製の機械の保守、故障修理などをしていた「カスタムエンジニア」も、ネットワークの敷設からIT全体の構築能力をもつ「マルチベンダー・サービス」ができる人材に転換していく必要があります。SE(システム・エンジニア)も、ドキュメントに偏った業務が中心でした。これをドキュメントとITを組み合わせて、顧客に対してソリューションの提案・提供ができる人材に育てなければならない。もう一つ、IT業界のプレーヤー各社との連携が重要です。これもいい事案が出始めていますよ。
──課題は多々あるようですが、「ソリューション・サービス事業」が2割近くに達しているのは驚きです。
山本 今年度(2011年3月期)の当社の目標は「変革の完遂」です。つまり、今年度で完全に「変わる」ことを掲げ、「成果を出す」ということです。このために、かなりの勢いでやってきました。
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