中国ではいち早く「直販」を確立
──先ほどお話しいただきましたが、組織面では、とくに地域のグループ販売会社のあり方が重要ですね。
山本 昨年春に「全社教育部」を新設しました。どちらかというと、ここでは「地域販売型」から「業種・業務型」の販売部隊にする教育をしてきた。グループ販売会社は「地域販売型」ですが、中央(本社)と連携できるようにしてきました。これまでは、販売会社が独自に何を何台売るという形で完結していた。今は、大手企業の多くは、事業会社(拠点)が地方にあるため、ソリューションとなると全国を股にかける必要がある。逆に、当社では「主管属地」と呼んでいますが、地域の販売会社が主管になることもあります。
──地域主管の例では、どんな事案がありますか。
山本 例えば、当社のユーザーである横浜銀行。この銀行は神奈川県に本社がありますので、「富士ゼロックス神奈川」が主管となります。横浜銀行の支店は全国にあって、当社の顧客もいます。これを、どう統合的にフォーメーションを組んで支援するか、という仕組みづくりが求められているのです。
──競合他社は、同じような理由で地域の販売会社を再編・統合しています。
山本 当社も、2005年にはサービス事業の加速に向けて“第一次工事”を実施しました。それまで販売会社は、地場にあるパートナーとの「ジョイント・ベンチャー(合弁会社)」でした。富士ゼロックス東京は、40%の資本をもつ講談社との合弁でした。これらの一部について、100%当社の資本に変え、当社主導で組織を運営できるようにしました。現在は、全販売会社を100%子会社化するために再編を行っています。グループが「チームワーク」で、どう連携できるかが重要になっていますので。
──強いていえば、販売会社での課題は何ですか。
山本 マインドはかなり切り替わってきている。あとは成功事例を積み上げることでしょう。いま、温度差はありますが、販売会社では「ソリューション・サービス販売」をしなければならないという機運が生まれています。これからは、クラウドの時代。これまではオフィス内のソリューションが多かった。サプライチェーン全体を含め、どのようにサーバーを整理統合すべきかといったことを、ドキュメントの側面で提案する癖をつけます。今後、当社のサービスのなかに、大手SIerなどのパートナーとも連携しながら、クラウドを組み入れていくことを想定しています。
──国内需要が縮小するなかで、海外展開も重要になっています。
山本 中国を含めたアジア・オセアニアは、ものすごい勢いで伸びています。「ソリューション・サービス」の推進では、日本より早いんです。現地企業がかなり欧米的なんです。当社のアウトソーシングは、昨年度までだと日本が一番遅れていたほどです。SMB向けのマネージド・プリント・サービス(MPS)の取り組みも早い。中国に関しては、2001年に競合他社に先んじて、直販をいち早く始めています。中国全土に28拠点の営業所を設置し、中国人を採用して教育しました。そんなことから、直販ビジネスはかなり順調に育っています。
・お気に入りのビジネスツール “FUJI XEROX”のロゴ入り手帳。社内用として能率協会に大量発注したものである。業務のスケジュール管理は、すべて秘書に任せているので手帳は不要と思えるが、「メモ書き用に携行している」そうだ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
インタビューするのは、これが5度目になる。初めて取材した時に比べて、技術者特有の気難しいムードは影をひそめ、会うたびに発言も洗練されてきている。
以前は、具体的な話を聞きにくい雰囲気が漂っていた。本社の組織体制に関する内容の質問ならまだしも、販売会社再編や、ましてM&Aなどということは、なかなか聞きにくかったのだ。というのも、最初にインタビューした際、こうした内容を聞いても曖昧な回答に終始していた経験があったからだ。
ところが今回は、M&Aについてもズバリ聞くことができた。山本社長は「絶対にやらない」のひと言。続けて「得意分野をもつパートナーと組むほうが最善の選択だから」という。
リコーやキヤノンといった競合がM&Aに積極的ななか、富士ゼロックスはあくまで独自路線を貫く考えのようだ。今回のインタビューでは、笑顔をたくさん見た。とても懐の深い人だ。(吾)
プロフィール
山本 忠人
(やまもと ただひと)1945年10月、神奈川県生まれ、65歳。68年3月、山梨大学工学部卒業。同年4月、富士ゼロックスに入社。94年1月、取締役VIP事業部長。2002年6月に代表取締役専務執行役員に着任してからは、現在まで代表取締役職を歴任。主にドキュメントとサプライのプロダクト技術開発の責任者を務めてきた。07年6月に、有馬利男社長の後任として代表取締役社長に就任。
会社紹介
1962年、富士写真フイルム(現・富士フイルム)と英国ランク・ゼロックス社との合弁で複写機メーカーとして発足。79年、富士ゼロックスオフィスサプライと各地の現地資本と合弁で販売会社を設立し、全国展開を開始。90年、ランク・ゼロックス社からアジア太平洋地域4か国の経営権と所有権を取得。2005年、サービス事業の加速に向け国内営業体制を一新。07年、富士ゼロックスプリンティングシステムズを統合した。09年度の売上高は9354億円。