日本オフィス・システム(NOS)は、サービス事業を伸ばしていくことで、顧客のニーズに応える。必要なときに、必要なだけのITリソースを提供するオンデマンドやクラウド方式のビジネスを拡大。ビジネスモデルの最適化を急ぐ。今年度(2011年12月期)の業績見通しは、中堅・中小企業のIT投資の回復が遅れる恐れが拭えないとして、堅実な数字を掲げている。2011年1月にトップに就いた尾嶋直哉氏に経営戦略を聞いた。
震災で経済打撃、予断を許さない
──東日本大震災では、地震や大津波、電力不足など大変な事態になってしまいました。
尾嶋 まずは、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。当社は地震による直接の被害は軽微で済みました。したがって、事業活動に対する影響は小さいと考えていますが、中長期的な経済への打撃が危惧されるだけに、予断を許しません。
──金融危機のリーマン・ショックから3年目、ようやくIT投資にも回復がみえてきた矢先のことだけに、今後の影響が懸念されます。御社でもトップ交代をはじめとする体制一新によって、業績の拡大を見込んでおられたのではないでしょうか。
尾嶋 私は今年1月1日付で社長を拝命しました。前会長の尾崎嵩相談役は、1990年代後半、経営危機に直面してきた当社を立て直し、その後、株式上場を果たすなど、業績回復の立役者です。前社長の水谷正裕相談役は、当社プロパーで初の社長としてリーマン・ショック後の厳しい経済情勢の舵取りをしてきました。90年代後半まではハードウェアなどの物販中心のビジネス形態でしたが、直近ではサービス事業が売り上げ全体のおよそ7割を占めるまで拡大しています。ビジネスモデルがここ10年余りで根本から変わりました。
これまで積み重ねてきたノウハウや顧客との信頼関係をさらに深めていくことで、ビジネスを伸ばしていく考えです。
ただ、楽観はしていません。今年度(2011年12月期)の売上高(非連結)は前年度比2.4%減の101億円と若干固めに予想しています。一方、営業利益は73.7%増と大幅に伸びる見通しです。脱リーマン・ショックで経済が盛り上がってくるとはいえ、やはり大手企業が先行し、中堅・中小企業はもう少し時間がかかるだろうという予測に基づくものです。
──過去10年余りで大きく様変わりした情報サービスのビジネスモデルですが、これからもこの変化のスピードは変わりそうにありませんね。
尾嶋 私もそう考えています。私自身、理系出身でSEのキャリアが長いですから、技術革新に伴うビジネスモデルの変化は、ずっと肌で感じてきました。当社も、従来に増してスピード感をもったオペレーションをしていくことで顧客の期待に応えます。
先ほど中堅・中小企業の業績回復が大手に比べて遅れていると申し上げました。全体的にみれば間違いないのですが、個々のユーザー企業をつぶさにみると、ITを駆使して長期的なビジネス戦略を展開しているケースも決して少なくありません。顧客は自らのビジネスプランを実現するために、有用なITシステムを求めています。当社をはじめとするITベンダーは、こうしたニーズにしっかり応える提案をしていく必要があります。
社内に向けては、顧客の要望を十分に満たす提案力や、その裏付けとなる技術動向に敏感になれ、とメッセージを伝えてきました。上司や会社の指示を待つのではなく、社員一人ひとりが自律的に行動し、技術を磨き、提案していく。さらにチームワークによって力を倍増、いや、3倍増にしていきたい。
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